外国人を雇用すると外国人からは「年金を日本でもらう予定はないのに年金を払う必要はあるのか?」や雇用側からは「外国人従業員の社会保険加入はしなくてはいけないのか?」といったように、社会保険などに関する疑問が出てきます。
外国人労働者の社会保険・雇用保険・労働保険はどんな場合に加入が必要なのでしょうか。
外国人の保険関係について説明いたします。
外国人従業員の社会保険の加入
厚生年金・健康保険(社会保険)の加入が義務付けられている雇用主を「強制適用事業所」といいます。
これは従業員の国籍は条件にはありませんので、事業所が雇用した外国人は必ず厚生年金と健康保険の加入をしなくてはいけません。
〈強制適用事業所とは〉
①法人事業所・・法人の形態にかかわらず、また従業員が一人の事業所でも該当します。
②個人事業主で以下の業種に該当し常時5人以上の従業員を使用する事業所
・製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業 ・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保険業・通信報道業 |
③国または地方公共団体の事業所
またパートやアルバイトの外国人が厚生年金と健康保険の加入対象かどうかは、一般社員の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断します。判断基準は、
(a)労働時間:1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上
(b)労働日数:1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上
この2点両方当てはまる外国人労働者は加入対象となります。ただしこれらの条件を満たさない場合でも以下の要件に全て当てはまる場合は加入対象です。
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
・常時101人以上の企業(特定適用事業所)であること
社会保障協定とは
外国人が日本で働き社会保険を払わなくてはいけない場合、母国でも同様の保険料を支払う義務があり、2重に支払うという状況が生まれる場合があります。
そして、日本で年金を受け取るには一定期間の加入が必要となるため、将来受け取ることができず支払うのが無駄になってしまい、支払いをためらうケースが当然あります。
そこで国同士が「社会保障協定」を締結し、保険料の二重負担の防止と日本での年金加入期間を母国の年金加入期間とみなす、ということが可能となりました。
国同士の協定の締結となりますので、締結していない国は対象外ですが、雇用している外国人が該当国であるならばこの協定について説明されるとよいでしょう。
尚、この社会保障協定を締結・発効しているのは20カ国です。(ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国)
※2019年10月1日時点、イギリス・韓国・中国は保険料の二重負担防止のみ外国人が帰国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に払い込んだ保険料に応じて(一定期間の加入が必要)、脱退一時金を請求することが可能です。
この制度についても外国人従業員には説明するとよいでしょう。
外国人従業員の雇用保険の加入
雇用保険が国籍にかかわらず次の条件を満たす場合は加入が必要です。
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれている
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険には適用除外が設けられており、そのうち「全日制の教育機関の学生又は生徒」というのがあります。
これには昼間部の大学に通う留学生(留学生は原則就労禁止ですが「資格外活動」という許可を取れば週28時間まで就労可です)も含まれ、雇用保険の加入対象外です。
しかし、卒業見込証明書があり卒業後も同じ事業所で就労する場合は加入の対象となりますので注意しましょう。
またワーキングホリデーで在留し就労している外国人も雇用保険の対象外です。
外国人従業員の労災保険の加入
従業員を一人でも雇用する事業主は原則として加入が必須です。
従業員の国籍や正社員、パートなどといった労働形態は問いません。
基本的には日本人を雇用する場合と大きく異なる点はありませんが、以上のように注意すべき点がいくつかあります。
特に年金の加入などは外国人が将来受け取ることができないという点からも労使間で問題になりやすいので、社会保障協定や脱退一時金などの制度も含めて日本の社会保障制度を外国人従業員にしっかり説明することが大事です。
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
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