外国人が働く目的で来日するためには、働く先の業界や職務内容に応じた在留資格(ビザ)が必要となります。昨今、インバウンド需要の高まりにより海外からの観光客が多く訪れているホテル業界で、外国人労働者を雇うにはどのような在留資格および手続きが必要でしょうか。また、一言で「ホテルで働く」と言っても、様々な職務内容が考えられます。職務内容に応じた在留資格と、ビザ取得をはじめとした諸手続きについて行政書士が解説します。
目次
考えられる在留資格とその業務範囲
ホテル業界で外国人従業員を雇う際に候補として考えられる在留資格とその業務範囲について、下の表にまとめました。
業務 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能 「宿泊」 |
特定技能 「外食業」 |
特定活動 告示46号 |
技能実習 | インターンシップ |
コンシェルジュ・フロント等
※通訳翻訳を伴うもの |
〇 | 〇 | × | 〇 | 〇
※接客作業補助 |
〇 |
コンシェルジュ・フロント等
※日本人相手のもの |
× | 〇 | × | 〇 | 〇
※接客作業補助 |
〇 |
広報 | 〇
※単純作業でないもの |
〇 | × | 〇 | ― | 〇 |
人事管理 | 〇 | ― | × | 〇 | ― | ― |
営業 | 〇 | ― | × | 〇 | ― | ― |
マーケティング | 〇 | ― | × | 〇 | ― | ― |
マネジメント | 〇 | ― | × | 〇 | ― | ― |
レストラン・ラウンジ
(ホール、キッチン) |
△
付随する業務の範囲で可 |
〇
※レストラン等のみは不可 |
〇 | 〇 | 〇
※レストラン等のみは不可 |
△ |
レストラン・ラウンジでの接客 | △
通訳翻訳を伴うなら付随する業務の範囲で可 |
〇
※レストラン等のみは不可 |
〇 | 〇 | 〇
※レストラン等のみは不可 |
△ |
この表に挙げた在留資格について、どのような業務ができて、どのような業務ができないのか、メリットとデメリットはなにかを、以降で解説していきます。
技術・人文知識・国際業務
できる業務
- 通訳・翻訳、広報、人事管理、営業、マーケティング、マネジメントなど。
- 上記の業務のどれか1つということではなく、複合的に担当可能。
できない業務
- レストランやラウンジに配置する場合は、あくまで先述した業務がメインで、付随する範囲でのみレストラン業務を行う形となる。例えば、単純な接客(通訳のない日本人相手の接客など)は付随する業務とはみなせず、担当できない。
- ホール・キッチン・清掃等の現業的な作業をメインとする業務はできない。
費用等
- 在留資格の取得や変更に係る申請費用
メリット
- かかる費用が少ない。
- 複数の業務を複合的に行うことができる。
デメリット
- 現業的な業務を主として行うことはできない。
特定技能「宿泊」
できる業務
- フロント・接客・ホテルのレストランサービス、広報・PR活動など。
できない業務
- 専ら技人国に属する職務に就けない
- 人事管理
- 営業、マーケティング、マネジメント等
- いわゆるオフィスワーク的な業務
必要な手続き・条件等
- 法令上求められる支援体制を整える必要がある
- 自社支援 ・・・不備があると一定期間特定技能外国人を雇用できなくなる等のペナルティがある
- 登録支援機関に委託・・・支援委託に係る費用が必要
- 外国人も試験への合格等が必要
- 特定技能評価試験および日本語能力試験N4以上の合格
- または、対応する技能実習2号を良好満了
費用等
- 在留資格の取得や変更に係る申請費用
- 法定の支援を登録支援機関に委託する場合はその費用も必要
メリット
- 専ら現業的な業務に就くことができる
- 特定技能「宿泊」に該当する業務内なら兼業も可能
デメリット
- 法定の支援体制の整備が非常に煩雑
- いわゆるオフィスワーク的な業務との兼業ができない
特定技能「外食業」
できる業務
- レストラン等でのホール・キッチン・接客など。
- 専らホテルのレストランやラウンジで就業する場合は、特定技能の「宿泊」ではなく「外食業」となるので注意する。
できない業務
- 専ら技人国に属する職務に就けない
- 人事管理
- 営業、マーケティング、マネジメント等
- いわゆるオフィスワーク的な業務
必要な手続き・条件等
- 法令上求められる支援体制を整える必要がある
- 自社支援・・・不備があると一定期間特定技能外国人を雇用できなくなる等のペナルティがある
- 登録支援機関に委託・・・支援委託に係る費用が必要
- 外国人も試験への合格等が必要
- 特定技能評価試験および日本語能力試験N4以上の合格
- または、対応する技能実習2号を良好満了
費用等
- 在留資格の取得や変更に係る申請費用
- 法定の支援を登録支援機関に委託する場合はその費用も必要
メリット
- 専ら現業的な業務に就くことができる
デメリット
- 法定の支援体制の整備が非常に煩雑
- いわゆるオフィスワーク的な業務との兼業ができない
特定活動(告示46号)
できる業務
- 技人国に属する業務
- ホテル業務
- レストラン等での通訳を兼ねたホール・キッチン・接客など(日本人相手の接客も可)
- 外国人従業員への指導係
できない業務
- 単純労働に属さない限り特になし
※単なる清掃スタッフ、単なる調理スタッフ等は不可
必要な手続き・条件等
- 外国人従業員が以下の要件を満たす必要がある。
- 日本の大学を卒業
- N1またはBJT480点以上(大学で日本語専攻ならそれでも可)
メリット
- 職務配置の希望に最も沿わせやすい。
- 配置換えの度に在留資格を変更する必要がない。
- 技人国と特定技能の中間程度の業務が行える
デメリット
- 外国人に求められる要件が厳しい。
費用等
- 在留資格の取得や変更に係る申請費用
技能実習
技能実習は、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としている制度であり、外国人が最終的に帰国して、本国で働くことを想定しています。そのため、これまで紹介した就労系在留資格と違い、日本に居られる期間が決まっていることに注意が必要です。
できる業務
- フロント等での接客補助
- レストラン等でのホール・キッチン・接客など
- 上記の周辺業務としての客室の清掃・整備作業
できない業務
- いわゆるオフィスワーク的な業務との兼業ができない
- 宿泊施設の清掃やベットメイキングなどの業務をメインに技能実習生を受け入れたい場合は、「ビルクリーニング」での受け入れになる。
必要な手続き・条件等
- 法令上求められる受入れ体制を整える必要がある
- 企業単独型・・・日本の企業が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
- 団体監理型・・・事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
- 現地の送出機関や監理団体を通して受け入れる外国人を決定する
- 外国人が現地での入国前講習、来日後の入国後講習を受ける
- 二号に移行する場合は、技能検定の受験が必要
費用等
- 在留資格の取得や変更に係る申請費用
- 渡航費、入国前後講習費などの初期費用
- 団体監理型の場合は、監理団体への契約費用
メリット
- 一般的には賃金が安くても受入れ可能
- 離職率が低い
デメリット
- 入国前の技能水準を問わないので、勤務内容に関する指導・教育から行う必要がある。
- 日本語能力を問わないので、簡単な受け答えしかできないところからスタート。
- 渡航費、入国前後講習費などの初期費用がかかる。
- 常勤職員の数に応じた人数枠がある。
インターンシップ「特定活動(告示9号)」
インターンシップは、海外の大学に在籍している方が、当該教育課程の一部として、日本の企業において報酬を伴うインターンシップを行う場合に取得する在留資格です。外国の大学において専攻している科目と関連する業務に従事することができます。外国人学生の教育が目的ですので、就労系在留資格と違って働ける期間や労働条件に制約があることに注意が必要です。
業務内容
- 外国の大学において専攻している科目と関連する業務
(例えば日本語専攻の場合は日本語を使った接客・販売等、そしてそれを行うために必要な周辺業務)
必要な条件等
- 1年を超えない期間で、かつ、通算して大学の修業年限の2分の1を超えない期間であること
- インターンシップ生を労働力確保の手段として受け入れるものでないことを十分に認識していること
- インターンシップ責任者および指導員を選任していること
- インターンシップ実施状況や評価結果に関する報告書を作成すること
メリット
- インターンシップ生の言語スキルを活用できる
- 学生の業務評価が現地大学での単位に影響するため、意欲的な人材を採用することができる
- インターンシップ後の本採用において、ミスマッチの防止になり、かつ即戦力となる人材を採用できる。
デメリット
- 在留可能な期間が短い
- 日本語や業務についての教育に時間がかかる
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
国際結婚&配偶者ビザサポートセンター https://touch.or.jp/marriage/
帰化申請サポートセンター https://visa-saitama.net/kika/
就労ビザサポートセンター https://touch.or.jp/work/
永住ビザサポートセンター https://touch.or.jp/eizyu/
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