インターンシップ(特定活動告示第9号)

 インターンシップの在留資格は、近年多くの企業において活用され、本邦においてインターンシップ活動を行う海外の大学生は、コロナ渦を除き年々増加傾向にありました。本来インターンシップは、一般的に学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うものでありますが、本来のインターンシップの目的を外れ、十分な指導体制がないまま多数のインターンシップ生を受け入れる事例、インターンシップを労働力の確保の手段としている事例が、一部の企業において確認されました。このような事例を踏まえ、出入国在留管理庁は、2020年5月にインターンシップに係るガイドラインを策定し、本制度をより厳格な運用としています。

インターンシップ(特定活動告示第9号)の概要

インターンシップ(特定活動告示第9号)の在留資格は、海外の大学に在籍している方が、当該教育課程の一部として、日本の企業において報酬を伴うインターンシップを行う場合に取得する在留資格です。このインターンシップは、1年を超えない期間で、かつ、通算して大学の修業年限の2分の1を超えない期間であること、また、当該大学を卒業又は修了した者に対して学位の授与される教育機関に在籍している必要があります。

 

インターンシップ(特定活動告示第9号)の変遷とガイドライン

インターンシップ(特定活動告示第9号)の審査は、実務上、インターンシップガイドラインの策定(2020年5月)を境に大きく変化しています。端的に言えば、ガイドライン策定後の審査は策定前と比較しより厳格に行われ、策定前では許可であったろう案件も不許可処分がなされています。インターンシップの在留資格は、ガイドラインが策定された2020年、いわばコロナ渦前においては、多くの企業において活用され、本邦においてインターンシップ活動を行う海外の大学生は、年々増加傾向にありました。一方で本来インターンシップが一般的に学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うところ、本来のインターンシップの目的を外れ、十分な指導体制がないまま多数のインターンシップ生を受け入れる事例、インターンシップを労働力の確保の手段としている事例が、一部の企業において確認されました。このような事例を踏まえ、出入国在留管理庁は、2020年5月にインターンシップに係るガイドラインを策定し、本制度をより厳格な運用としています。

当事務所は数多くのインターンシップ案件に携わってきました。多くの企業は、インターンシップの目的を理解し、制度に沿った受入れを実施していますが、一部の企業において、前述の通り不適切なインターンシップを行っていた実情があります。なぜ、インターンシップが本来の目的から外れ労働力の確保として使われるのか。それには、主に以下のような理由が挙げられます。

 

インターンシップが本来の目的から外れる理由
繫忙期のみに人材を確保したい

インターンシップは、1年を超えない期間で、かつ、通算して大学の修業年限の2分の1を超えない期間であることが定められています。つまりこの条件に合致さえすれば、企業にとって人手が欲しい時期のみの就業体験に設定することもできるわけです。

例えば、農業では収穫の繫忙期のみ、旅館やホテルではその地域の繁忙期のみ(スキー場の近くでは冬季のみ、海水浴場の近くでは夏季のみ)といった具合です。技能実習や特定技能などその他の在留資格では、そういうわけにいきませんので、インターンシップを使い勝手がよい制度として捉える企業も中にはあるということです。当然、インターンシップは、単なる労働力の確保の手段ではありませんので、このような活用はインターンシップの制度に沿いません。

 

安価な現業的就業者の確保

就労制限のない「日本人の配偶者等」、「永住者」などの在留資格を除き、現業的作業に従事できるのは、技能実習と特定技能の在留資格です。技能実習では企業単独型を除き、監理団体に支払う毎月の監理費用(約3~7万円/人)が発生します。特定技能でも、登録支援機関に支援を委託する場合は、委託料(約2~5万円/人)が発生します。一方でインターンシップでは、そのような費用がありませんので、企業は同じ業務でも、インターンシップの方がより安価に受入ができると考えるケースが少なからずあります。

本来、インターンシップの活動内容は、大学生に求められる知識や教養の向上に資する活動である必要があり、同一の作業の反復に主として従事するものは認められませんので、そのような労働力として捉えることは大きな誤りです。

 

インターンシップの本来の目的と基本的な考え方

ア 目的

教育課程の一部として、大学において修得する知識や教養に資する知識や技術等を、社会実践を通じて修得させることにより、人材育成に寄与することが目的とされています。

イ 基本的な考え方

繰り返しになりますが、インターンシップとは、一般的に、学生が在学中に企業等において自らの専攻及び将来のキャリアに関連した実習・研修的な就業体験を行うものです。インターンシップ生を受け入れる企業等においては、産学連携による人材育成の観点を見据えた広い見地からの対応が求められるとともに、適正な体制を整備した上で,インターンシップ生が所属する大学とも連携しながら、教育・訓練の目的や方法を明確化するなど、効果的なインターンシップ計画を立案することが必要です。

大学生に求められる知識や教養の向上に資するとは認められないような、同一の作業の反復に主として従事するものについては認められません。

 

インターンシップの実施体制

在留資格「特定活動」によるインターンシップは、長期にわたり報酬を受けながら本邦において活動するものであり、特にそのインターンシップ生の保護のため、受入れ機関は、インターンシップが「教育課程の一部」であることを理解した上でインターンシップ生を受け入れるに足りる十分な実施体制を確保している必要があるところ、原則として、次のいずれにも該当する場合に当該実施体制があるものとして取り扱います。(インターンシップガイドライン)

 

インターンシップ生の受入れ・指導体制等
ア 受入れ機関がインターンシップ生を労働力確保の手段として受け入れるものでないことを十分に認識していること(「大学と本邦の公私の機関との間の契約」の内容により判断されます。)。

 

イ 次に掲げる事項を統括管理するインターンシップ責任者を選任していること。

(ア)外国の大学との間の契約に関すること。

(イ)インターンシップの実施計画の作成及び評価に関すること。

(ウ)インターンシップ生の受入れの準備に関すること。

(エ)インターンシップ生の生活支援及び保護に関すること。

(オ)インターンシップ生の労働条件,安全及び衛生に関すること。

(カ)インターンシップ生からの相談・苦情への対応に関すること。

(キ)地方出入国在留管理官署及びその他関係機関との連絡調整に関すること。

(ク)その他適切な支援に関すること。

 

ウ インターンシップを行う事業所に所属する受入れ機関の常勤の役員又は職員であって,インターンシップ生が従事する業務について1年以上の経験を有するインターンシップ指導員(インターンシップ責任者との兼任可)を選任していること。

 

エ 受入れ機関又はその役員若しくはその職員が,インターンシップ生,技能実習生その他の外国人の受入れに関して,人権を著しく侵害する行為を行っていないこと。

 

オ 受入れ機関並びにその役員,インターンシップ責任者及びインターンシップ指導員が,過去5年以内に出入国又は労働に関する法令の規定に違反していないこと

 

カ 受入れ機関において,インターンシップ生との間で,外国の大学との間の契約に反する内容の取決めをしていないこと

 

キ 国外及び国内における費用(旅費のほか食費,住居費等名目のいかんを問わず,インターンシップの実施に要する費用)について,インターンシップ生に明示し,費用負担者及び負担金額等について合意していること

(注)インターンシップ生が定期に負担する費用がある場合は,インターンシップ生が,当該費用の対価として供与される食事,宿泊施設その他の利益の内容を十分に理解した上で受入れ機関との間で合意しており,かつ,当該費用の額が実費に相当する適正な額であることが必要です。

 

ク インターンシップ生が行おうとする活動に係る諸条件や報酬額等をインターンシップ生に明示し,合意していること(「雇用契約書」等により確認します。)。

 

ケ 過去にインターンシップ生を受け入れた機関においては,過去のインターンシップが適切に実施されたものであること。仮に不適切な対応があった場合には,十分な再発防止策が講じられていること。

 

コ 地方出入国在留管理官署による実地調査等が行われる場合は,これに協力することとしていること。

 

サ インターンシップ実施状況や評価結果に関する報告書を作成し,当該インターンシップの終了後一定期間(最低3年間)保存することとしていること。

 

インターンシップ生の適正な受入れ人数の目安について
受入れ機関の体制・インターンシップで従事する業務内容を踏まえて個別に判断されることになりますが,以下に示す範囲内であれば,原則として適正な受入れ人数として取り扱います。

なお,受入れ機関において「第1号技能実習生」を受け入れている場合(インターンシップ期間中に受け入れる予定がある場合を含む。)で,インターンシップ生の受入れ人数(インターンシップ期間中の受入れ予定数を含む。以下同じ。)と「第1号技能実習生」の合計が「第1号技能実習生」の受入れ人数枠を超えるときは,技能実習制度の適切な実施を阻害することのないよう,また,充実したインターンシップ活動が行われるよう,インターンシップ生についての指導体制やカリキュラムが構築されていることを明らかにしている必要があります。

ア常勤職員数が301人以上の場合…常勤職員数×20分の1

イ常勤職員数が201人以上300人以下の場合…15人

ウ常勤職員数が101人以上200人以下の場合…10人

エ常勤職員数が100人以下の場合…5人(ただし,常勤職員数以下。)

(注)常勤職員数に技能実習生は含みません。

 

インターンシップの実施計画について
インターンシップを行うことによる単位が学位の構成要件とされることなどを含め,教育課程の一部として適切かつ効果的なインターンシップ実施計画を大学及び受入れ機関が連携しながら作成するために,以下の事項に留意してください。また,技能実習生を受け入れている受入れ機関においては,それぞれの項目について,技能実習生との違いを明らかにしてください。

ア目標等

活動の目標,内容,期間並びに大学における履修科目及び単位との関連性等を明確にすること。

イ指導体制

インターンシップ責任者及びインターンシップ指導員を適切に配置すること。

ウ評価

各業務ごとの理解度及び習熟度を確認する時期,評価項目,評価方法及び評価担当者(インターンシップ責任者等との兼任可)を明確にすること。

(注)インターンシップ実施計画の履行状況については,インターンシップ指導員が定期的に確認し評価することはもとより,当該評価を行うに当たっては,インターンシップ責任者を立ち会わせるなど,公正な評価が確保されることが必要です。また,評価結果については,大学と情報共有を図ることにより,インターンシップ生に対するその後の指導にいかすことなどの対応が求められます。

 

 夜勤やシフト制を伴うインターンシップについて
インターンシップ生が夜勤としてインターンシップに従事する場合やシフト制でインターンシップに従事する場合は,その必要性及び指導体制について明確にする必要があります。

 

インターンシップの具体的な活用例

ここまで主にガイドライン等を基にインターンシップを説明してきましたが、なかなか具体的なイメージが湧きにくいかと思います。この項では、インターンシップを適切に実施している企業の例を基に、どのような目的をもって、活動内容や実施体制を確保しているのかを確認していきたいと思います。

【学生】外国の大学で日本語を専攻する学生

【受入企業】全国チェーンの飲食店

【目的】

本インターンシップは、ベトナム大学(仮名)が当該大学の在学生のうち日本語及び日本文化を専攻する者を日本国内に派遣し、当社の指導に従って日本国内において接客業・販売業に従事することによって日本語能力の向上を図り、かつ、当社が用意する各種イベントに参加することによって日本文化への理解を深め、ベトナム国内のサービス業に従事する人材を育成することを目的とします。またインターン生の卒業後のキャリアとして、当社が将来的に計画しているベトナム進出時における幹部候補生としての採用、日本での就労希望者に対する当社採用試験へのエントリーを可能とし、インターン生の将来的なキャリアの選択の一環となる活動とします。 

【活動内容】

    • 接客(接客における正しい日本語を習得)
       お客様へ適した接客を行うためには、正しい日本語を習得する必要があります。そして真に日本語能力の向上を図るためには、単に正しい日本語の言葉遣いを覚えるだけではなく、それを実際の場面で使用し、お客様および店舗スタッフとコミュニケーションをとり、相手に明確に内容を伝える必要があります。また実際に店舗で接客を行うことは、お客様の問題や要望に迅速かつ効果的に対応する能力が求められます。これには、状況を的確に判断し、適切な解決策を提供することが含まれ、ひいては相応の日本語能力が必要となります。適切な日本語の言葉遣いや接客マニュアルをインターン生に学習させ、接客の就業体験を通して日本語能力の更なる向上に資する活動とします。

    • 食材補充/盛り付け
       インターン生は、他の店舗スタッフと同様に食材補充および盛り付けの業務(就業体験)を行います。当該業務には、当社のマニュアルに沿って、詳細な基準が設けられています。当該マニュアルを日本語で理解し、理解した内容を行動・経験することで日本語および業務の理解度が深まります。また当該業務から理解する当社商品の知識がなければ、接客の場面でお客様に適切な対応を行うことは困難であり、実際に日本語で接客する場を設けることができません。
       そして、当社の商品、調理、盛り付け等は、創業から現在まで常に高いレベルを求め進化し続け、品質技術を磨いてきました。インターン生が当該業務に従事し、高いレベルの実務を習得することは、彼らが今後のキャリアとしてサービス業に従事する時、必ず有用となることを確信しています。

 ※実際の申請時には、活動内容である接客や食材補充のフローチャート、業務マニュアル等を添付し、活動内容について個別具体的に説明を行います。 

【指導体制】

インターンシップ責任者:○○株式会社 人事部長 山田太郎

インターンシップ指導員:A店舗 山田一郎、B店舗 山田二郎、C店舗 山田三郎

※インターンシップを行う事業所に所属する受入れ機関の常勤の役員又は職員であって、インターンシップ生が従事する業務について1年以上の経験を有する者である必要があります。 指導員は、毎週指定する日にインターン生と面談の場を設け、苦情や相談その他就業体験に関する内容を確認したり、日々の業務に対する不明点・質問等を担当者等に適宜相談できる体制としたり、インターン生の知識・スキル向上を常に図れる体制を整えることが求められます。

 

湯田 一輝

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数

【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
国際結婚&配偶者ビザサポートセンター https://visa-saitama.net/
帰化申請サポートセンター https://visa-saitama.net/kika/
就労ビザサポートセンター https://touch.or.jp/work/
永住ビザサポートセンター https://touch.or.jp/eizyu/
ビザサポートセンター https://www.yuda-office.jp/