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E-1とE-2はどちらが合う?|条約貿易家ビザと条約投資家ビザの違い・選び方ガイド

はじめに

米国でのビジネス展開にあたってEビザを検討し始めると、最初に突き当たるのが「うちの会社はE-1(条約貿易家)とE-2(条約投資家)のどちらで申請すべきか」という分岐です。E-1とE-2は、手続きの流れや使用するフォーム(DS-160・DS-156E)が共通する一方、審査の中核となる要件はまったく異なります。どちらで組み立てるかを最初に誤ると、集めるべき資料の方向性がずれ、大きな手戻りにつながります。

この記事では、①制度の根本的な違い、②主要項目の比較、③E-1・E-2それぞれの核心要件、④かんたん自己診断、⑤ケース別シナリオ、⑥共通する要件、の順で、E-1とE-2の選び方を整理します。

制度の根本的な違い:「日米間の貿易」と「米国事業への投資」のどちらを基礎にするか

E-1とE-2は、いずれも日米間の条約に基づく非移民ビザで、先に「会社が適格であること」を審査し、次に「申請者本人が適格であること」を審査するという構造は共通です。違いは、会社の適格性を何で示すかにあります。

  • E-1(条約貿易家/Treaty Trader):日米間の継続的な「取引(貿易)」を中核とするビザです。物品の輸出入だけでなく、一定のサービス取引も対象になり得ます。
  • E-2(条約投資家/Treaty Investor):米国事業への「実質的な投資」と、その事業の運営を中核とするビザです。

    イメージとしては、E-1は「日本と米国の間で商品・サービス等の取引が継続的に行われていること」を証明するビザ、E-2は「米国の中で事業が動いていること(そこに資金が投じられていること)」を証明するビザです。

    実務上の初期判断としては、会社の収益や事業活動の中心がどこにあるかを見ると、方向性を整理しやすくなります。ただし、これはあくまで整理のための目安であり、法律上の要件はそれぞれ第4章・第5章で見るとおりです。

    主要項目の比較

    比較項目

    E-1(条約貿易家)

    E-2(条約投資家)

    審査の中核

    日米間の継続的・実質的な取引

    米国事業への実質的な投資と、その運営

    核心となる数字

    主要貿易(principal trade):日米間取引が国際取引全体の一般に50%超

    一律の最低投資額はなく、事業規模に応じた投資の相当性

    揃える証拠の軸

    契約→請求→履行(納品・提供)→決済という「貿易の流れ」

    資金源→送金→使途という「資金の流れ」+事業計画・運営実態

    典型例

    日米間で輸出入・サービス提供を継続する企業の駐在員派遣

    米国での店舗・会社の立ち上げ、事業買収、フランチャイズ出店

    前提となる段階

    日米間の取引がすでに進行していることが前提

    これから開業する場合も、投資・準備が具体的に進んでいれば検討可

    つまずきやすい点

    取引一覧はあるが、数字の根拠(証憑)に遡れない

    資金の説明が弱い/事業がまだ動いていないように見える

    申請者の立場

    経営職・管理職・必須技能職

    投資家本人、または経営職・管理職・必須技能職

    DS-156E

    主申請者は必要

    投資家本人・家族は通常不要。管理職・必須技能職として申請する社員は必要

    なお、ビザの有効期間(日本の互恵表ではE-1・E-2とも60か月・複数回入国)、申請手数料(MRV:1人あたり315米ドル)、企業登録が前提となる点などは共通です。金額・運用は改定され得るため、申請時に最新の公式情報をご確認ください。

    E-1の核心:実質的な貿易と「主要貿易(principal trade)」

    E-1で会社の適格性の中心になるのは、次の2点です。

    • 実質的な貿易(substantial trade):日米間で相当量の取引が継続していること。単発の取引や、これから取引先を探す段階では足りません。取引の量・頻度・継続性が見られます。
    • 主要貿易(principal trade):その日米間取引が、会社の国際取引全体の中で主要であること。一般に、国際取引全体(分母)に対して日米間取引(分子)が50%超であることが目安とされます。

      審査実務では、取引一覧(集計表)の各行が「契約→請求→履行→決済」の証憑に遡れる形になっているか、集計の分母・分子の定義が一貫しているかが重視されます。「請求書はたくさんあるのに集計表がない」「入金まで追えない」といった証拠の連鎖切れが、差し戻しの典型パターンです。

      E-2の核心:「相当な投資」と、限界的(marginal)でない事業

      E-2には、「いくら投資すれば通る」という一律の最低投資額はありません。その代わり、次の3点が審査の核心になります。

      • 投資が実質的(substantial)であること:事業の規模・性質に照らして相当な金額が投じられていること。
      • 資金がリスクに晒されている(at risk)こと:資金が実際に事業へ投入され、取り戻せない形でコミットされていること。契約済みの賃料、購入済みの設備、仕入れた在庫などが典型です。
      • 事業が限界的(marginal)でないこと:投資家本人と家族の生計を立てるだけの事業と見られないこと。雇用の創出、売上・成長の見込みなどで示します。

        さらに、資金の出所(Source of Funds)が合法であることに加え、「どこから来た資金が、いつ米国の口座へ送金され、何に使われたか」を突合できる形で説明することが求められます。「資金の説明が弱い」「事業がまだ実際に動いていないように見える」というのが、E-2でもっとも多いつまずきです。

        かんたん自己診断

        次の順で考えると、方向性を絞りやすくなります。

        • ① 申請予定者は、自ら資金を出して米国事業を経営する立場ですか? →「はい」なら、原則としてE-2を検討します。
        • ② 社員として赴任する場合:会社の主な収益の源泉はどちらですか? 日米間の受発注・輸出入・越境サービス提供(国境をまたぐ取引)が中核ならE-1寄り、米国内での店舗・工場・サービス運営(米国内での営業活動)が中核ならE-2寄りです。

          なお、「オーナーだからE-2」「従業員だからE-1」という分け方は誤解です。社員の申請区分は本人の立場ではなく、会社がE-1企業として登録されるか、E-2企業として登録されるかに沿って決まります。

          ケース別の参考シナリオ

          日本の商社が米国拠点へ営業管理者を派遣する
          日米間の輸出入が収益の中核であれば、E-1が自然です。取引一覧と主要貿易(principal trade)の算定表を軸に、会社資料を組み立てます。
          日本の飲食チェーンがハワイに出店し、店長を派遣する
          収益の中核は米国内の店舗運営なので、E-2が中心になります。賃貸契約・改装・設備・雇用計画など、投資と運営の証拠を軸に組み立てます。
          日本のメーカーが米国に販売子会社を設け、在庫・設備にも投資している
          貿易(親子会社間の輸出入)と投資(子会社への出資・設備投資)の両方の性格を持つケースです。この場合は、どちらの要件をより明確に証明できるか(取引の集計で50%超を示しやすいか、投資と運営実態を示しやすいか)で申請区分を設計します。判断が分かれるケースこそ、資料を集め始める前の方針整理が重要です。
          【補足】E-1・E-2の両方が考えられる会社もあります。 
          同じ企業がE-1とE-2双方の性質を併せ持つことは珍しくなく、申請区分は業種だけで機械的に決まるものではありません。どちらを基礎に組み立てるかは、要件の証明のしやすさと事業の実態に沿って設計します。

          E-1・E-2に共通する要件と手続き

          どちらを選ぶ場合でも、次の点は共通です。

          • 会社の条約国籍:原則として、企業の50%以上が日本国籍者(日本企業)によって所有されていること。株主構成・議決権などの資料で一貫して示します。
          • 申請者本人の国籍:社員として申請する場合も、申請者本人が原則として会社と同じ条約国籍(日本国籍)を有している必要があります。
          • 企業登録:在日米国大使館・総領事館での申請では、会社がS. Mission Japanに登録されていることが前提となり、初回は会社資料(Company Package)と少なくとも1名の申請者をあわせて審査に進みます。
          • 申請者の役割:経営職・管理職または必須技能職であること。肩書ではなく、権限・監督範囲・代替困難性を職務説明書と組織図で具体的に示します。
          • フォーム:DS-160は全申請者が作成します。DS-156Eの要否は第3章の表のとおりです。
          • ビザと滞在期間は別:ビザの有効期間(互恵表では60か月)と、入国ごとの滞在期限(I-94)は別物です。入国後は必ずI-94を確認します。

            よくある誤解

            • 「E-1は取引の件数が多ければ通る」 →件数だけでなく、継続性・相当量・日米比率(一般に50%超)を総合的に見ます。
            • 「E-2は◯◯万ドル投資すれば必ず通る」 →一律の基準額はなく、事業規模との相当性、at risk、限界的でないことが焦点です。
            • 「これから米国の取引先を探す段階なのでE-1で」 →E-1は取引がすでに進行していることが前提です。準備段階であれば、投資を軸にE-2で組み立てられないかを検討します。
            • 「Eビザは就職ビザ」 →Eは条約貿易・投資企業を軸に審査されるビザであり、米国企業に雇用されて働くこと一般はH-1B等の別の枠組みです。

            当事務所でサポートできること

            当事務所では、E-1・E-2の方向性整理(どちらで組み立てるかの初期段階のご相談)から、会社資料(Company Package)の収集・整理・英訳、取引一覧・主要貿易(principal trade)算定表や資金フロー資料の整理、事業計画書のドラフト作成、DS-160・DS-156Eの作成サポート、面接に向けた準備までを一貫してサポートしています。

            申請内容が米国移民法上の要件を満たしているかの法的確認や、E-1・E-2の判断が分かれるケースの法的評価については、米国提携弁護士(Valvo & Associates)と連携し、必要に応じてリーガルレビューや法的意見書(Legal Opinion)の作成を行います。

            まとめ

            E-1とE-2の分岐は、「会社が『日米間の貿易』と『米国事業への投資』のどちらを基礎に要件を満たすか」で考えるのが出発点です(実務上は、収益や事業活動の中心がどこにあるかが整理の目安になります)。E-1なら貿易の流れ(契約→請求→履行→決済)と主要貿易50%超、E-2なら資金の流れ(源泉→送金→使途)と投資の相当性・at risk・非限界性が、それぞれ証明の軸になります。手続きの外形は似ていても、集めるべき証拠の方向はまったく違うため、資料収集を始める前に申請区分の方針を固めることが、遠回りを避ける最大のポイントです。

            参考資料・公式リンク

            U.S. Department of State, Treaty Trader and Investor Visa(E):https://travel.state.gov/content/travel/en/us-visas/employment/treaty-trader-investor-visa-e.html

            USCIS, E-1 Treaty Traders:https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-workers/e-1-treaty-traders

            USCIS, E-2 Treaty Investors:https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-workers/e-2-treaty-investors

            U.S. Department of State, 9 FAM 402.9(E visas:審査基準):https://fam.state.gov/fam/09FAM/09FAM040209.html

            U.S. Embassy & Consulates in Japan, Visas:https://jp.usembassy.gov/visas/

            U.S. Department of State, Japan Reciprocity Schedule(互恵表):https://travel.state.gov/content/travel/en/us-visas/Visa-Reciprocity-and-Civil-Documents-by-Country/Japan.html

            ※本資料は一般情報であり、個別案件の結果を保証するものではありません。要件・手数料・運用は変更されることがあるため、申請前に必ず公式情報および専門家にご確認ください。(2026年8月確認時点)
            この記事の監修者
            行政書士法人タッチ 代表行政書士 湯田 一輝
            2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
            2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
            専門分野 外国人在留資格、帰化申請
            外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
            セミナー実績 国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
            運営サイト 行政書士法人タッチ
            国際結婚&配偶者ビザサポートセンター
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