特定産業分野

在留資格「特定技能」の対象になる産業分野は法令により定められた14の産業分野(特定産業分野)に限られます。

 

そして、この14の産業分野のうち日本標準産業分類該当性(事業所要件)が問題となるのは、①素形材産業、②産業機械製造業、③電気・電子情報関連産業、④飲食料品製造業の4分野です。

日本標準産業分類該当性(事業所要件)

①素形材産業、②産業機械製造業、③電気・電子情報関連産業、④飲食料品製造業については、

・外国人の従事する活動が、省令で定められた特定産業分野に属する業務か(特定産業分野該当性)

・外国人が従事する活動が、特定技能基準省令の定める要件に適合する契約に基づくものか(契約適合性)

の判断要素として、日本標準産業分類該当性(事業所要件)を満たしていることが求められます。

 

ここで、日本標準産業分類該当性(事業所要件)とは、特定技能外国人を雇用する契約に基づいてその外国人が活動する事業所が、日本標準産業分類に掲げる産業のうち、一定のものに該当していることをいいます。

①素形材産業、②産業機械製造業、③電気・電子情報関連産業、④飲食料品製造業それぞれと、日本標準産業分類該当性(事業所要件)の対応関係は以下の通りです。

 

特定産業分野 日本標準産業分類該当性(事業所要件)
素形材産業 鋳型製造業(中子を含む)

鐵素材形材製造業

非鉄金属素形材製造業

作業工具製造業

配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)

金属素形材製品製造業

金属熱処理業

工業窯炉製造業

弁・同附属品製造業

鋳造装置製造業

金属用金型・同部分品・附属品製造業

非金属用金型・同部分品・附属品製造業

その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)

工業用模型製造業

産業機械製造業 機械刃物製造業

ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業

はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業、上記素形材産業分野に掲げられたものを除く)

生産用機械器具製造業(上記素形材産業分野に掲げられたものを除く)

業務用機械器具製造業(上記素形材産業分野に掲げられたものを除く)

業務用機械器具製造の管理、補助的経済活動を行う事業所

事務用機械器具製造業

サービス用・娯楽用機械器具製造業

計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械器具・理化学機械器具製造業

光学機械器具・レンズ製造業

電気・電子情報関連産業 電子部品・デバイス・電子回路製造業

電気機械器具製造業(内燃機関電装部品、上記素形材産業分野に掲げられたものを除く)

情報通信機械器具製造業

飲食料品製造業 食料品製造業

清涼飲料製造業

茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)

製氷業

菓子小売業(製造小売含む)

パン小売(製造小売含む)

豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

日本標準産業分類該当性(事業所要件)の対象

日本標準産業分類該当性(事業所要件)は、事業主にかかる要件ではなく、事業所にかかる要件であり、事業所一つごとに適用されます。

 

ここで、日本標準産業分類における「事業所」とは、経済活動の場所的単位を指します。

すなわち、

①経済活動が単一の経営主体の下において一定の場所(一区画を占めて)行われていること

②財・サービスの生産と供給が、人・設備を有して継続的に行われていること

という要件を満たす場所が「事業所」となると言えます。

具体例としては

・工場、製作所

・事務所、営業所

・商店

・飲食店

・駅、病院、学校

・農家

といったものが挙げられます。

 

同一構内で行われる経済活動であっても、経営主体が異なる場合には、経営主体ごとに別の区画としてそれぞれ別の事業所とします。

また、一区画であるか一見して明らかでない場合は、売上台帳・経営諸帳簿(賃金台帳など)が同一である範囲を一区画とし、そこをひとつの事業所と捉えます。

 

もっとも、経済活動の態様は多種多様のものがあるため、上記の方法では一事業所を画定できないような場合には以下のような扱いを便宜上することがあります。

 

日々従業者が異なり、賃金台帳が備えられていないような派出所や詰所等 場所が離れていても別の事業所とせず、それらを管理する事業所に含めて一つの事業所とする
農地・山林・海面で行われる農業・林業・漁業の経済活動 ・それらの活動を管理している事務所・営業所。事業者の住所を事業所とする

・店舗・工場等を有し、そこで農業・林業・漁業以外の活動が行われている場合、その場所は別の事業所とする

建設工事が行われている現場 ・現場は事業所とせず、現場を管理する事業所に含めて一事業所とする

・事業所を持たない個人事業主の場合は事業主の住居

鉄道業など、一構内に組織内の機関(保線区、機関区など)が複数ある場合 ・それぞれの機関ごとに一事業所とする

・現場責任者が置かれていない場所は現場責任者がいる機関に含めて一事業所とする

一構内に複数の学校が併設されている場合 ・学校の種類ごとに別の事業所

・学校の経営主体が学校内で別の事業を営んでいる場合、その事業と学校はそれぞれ別の事業所として扱う

国・地方公共団体の場合 ・一構内で行われていても、法令で別個の機関として定められている組織体はそれぞれ別の事業所

・国・地方公共団体が行う公営企業・収益事業はそれを行う機関ごとに一事業所として扱う

 事業所の分類に際しての産業の決定方法

日本産業分類により事業所の産業を決定する場合には、事業所で行われている経済活動が何かを検討します。

 

この経済活動とは、①生産・販売される財、②提供されるサービス(消費者・自社内・他事務所)を細分類した項目で捉えたものが対象です。

その事務所の本来の活動以外に行う一時的な要因に基づくものは除きます。

 

産業の決定においては、一事業所で単一の分類項目に該当する経済活動が行われている場合はその経済活動によって決定されるためそれほど問題にはなりません。

複数の分類項目に該当する活動が行われている場合には、主要な経済活動が何かによって決定します。

製造3分野と飲食料品製造業の事業所要件の違い

事業所要件について定めた告示において、製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)には、飲食料品製造業と異なり「主として」日本標準産業分類に定める産業を行っている事業所という限定がありません。

 

つまり、製造3分野では、1つの事業所で複数の日本標準産業分類に該当する活動を行っていると判断されることがあり得ます。

その結果、1つの事業所が複数の特定産業分野に該当すると判断されることがあり得ます。

 

飲食料品製造業は1つの事業所に1つの日本標準産業分類しか判断されないため、特定産業分類も1つだけの該当性が判断されることになります。

まとめ

1 ①素形材産業、②産業機械製造業、③電気・電子情報関連産業、④飲食料品製造業では日本標準産業分類該当性(事業所要件)を満たす必要がある。

 

2 その際は、事業所で行われている活動を細かく検討し、「一事業所」の範囲を具体的に画定する必要がある。

 

湯田 一輝

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数

【運営サイト】
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