永住申請お役立ちコラム

経営・管理ビザでの永住申請も「5年」が原則に|2027年からの注意点
- 2026年08月21日


目次
永住者の在留資格(いわゆる永住権)は、在留期間の更新がなく、就労の制限もない、日本でもっとも安定した在留資格です。これまでは、税金や社会保険料がきちんと支払われているかどうかは、おもに永住を「申請するとき」に審査されるもので、いったん永住を取得してしまえば、その後の納付状況が在留資格に直接影響することは、ほとんどありませんでした。
ところが、2024年(令和6年)の入管法改正により、この前提が大きく変わります。2027年4月1日に施行される新しいルールでは、永住を取得した後であっても、税金・社会保険料・年金を「故意に」支払わない場合には、永住資格そのものが取消しの対象になり得ます(入管法第22条の4第1項第8号)。「税金の未納で永住が取り消される」という報道を目にして、不安に感じている方も多いと思います。
ただ、最初にお伝えしておきたいのは、この制度が狙っているのは、あくまで「故意」かつ「悪質」と判断されるごく一部のケースだということです。入管庁自身も、これは新しい要件を増やすものではなく、これまでガイドラインで求めてきた「公的義務をきちんと果たす」という当たり前のことを、法律にはっきり書いただけだと説明しています。ルールを守って誠実に暮らしている永住者の方が、ささいな払い忘れで突然永住を失うような制度ではありません。
とはいえ、「複雑になった制度を知らなかった」というだけで、思わぬリスクを抱えてしまうのも事実です。この記事では、永住者の方が、施行までの今のうちに自分で確認しておくべきことを、具体的に整理します。やるべきことを一つずつ確認していけば、過度に恐れる必要はありません。
(なお、永住が取り消される事由は、税金・年金の未納だけではありません。再入国許可や住居地の届出など、全部で7つのケースがあります。全体像については別の記事「永住権が取り消される7つのケース」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。)
まず、今回の改正で何が変わるのかを、はっきりさせておきましょう。
これまでも、永住申請の審査では、税金や社会保険料の納付状況はとても厳しく見られてきました。しかし、それは「申請のとき」の話で、永住を取得した後の納付状況が、在留資格の取消しに直結することはありませんでした。未納があっても、日本人と同じように督促や差押えで対応されるだけで、永住という在留資格そのものが問われることはなかったのです。
2024年の改正で加わったのは、まさにこの点です。永住取得後であっても、公的な支払い義務を故意に果たさない場合には、永住資格を取り消すことができるという根拠が、入管法に新しく設けられました(第22条の4第1項第8号)。対象となる「公的義務」には、税金(所得税・住民税など)、公的年金、公的医療保険(健康保険・国民健康保険)の保険料の納付、そして入管法上の各種届出が含まれます。
言いかえれば、「永住を取ったら、もう納付状況はチェックされない」という時代は終わり、「永住者であり続けるかぎり、誠実な納付が求められ続ける」時代に入るということです。これが、今回の改正の本質です。
ここで強調しておきたいのは、繰り返しになりますが、対象はあくまで「故意・悪質」なケースに限られるという点です。次の章で、その線引きを具体的に見ていきます。
「未納が一度でもあれば即取消し」――報道だけを見ると、そう受け取ってしまいがちですが、それは誤解です。
入管庁は2025年9月、この取消規定をどう運用するかについての運用案を公表しました。そこでは、取消しの対象とするのは、単に支払いが遅れた人ではなく、次の二つをともに満たすような「故意」が認められるケースだとされています。
つまり、「払えるのに、あえて払わない」「督促を無視し続ける」といった、支払う意思がないと見られるケースが想定されています。うっかり納付を忘れていた、一時的に滞納してしまった、という程度で、ただちに永住が取り消されるわけではありません。
また、よくある不安として「税金の支払いを役所に相談に行ったら、入管に通報されてしまうのではないか」というものがありますが、入管庁は、単に公租公課の支払いについて相談に行っただけで通報を受けることは想定していないと明言しています。そもそも、役所の職員が入管へ通報するかどうかは任意であって、義務ではありません。支払いに困ったときは、隠さずに相談に行く方が、はるかに安全です。
なお、こうした「故意」の考え方は、入管庁が公表している「永住許可制度の適正化Q&A」や、2025年9月に示された運用案にもとづくものです。取消しの具体的な運用基準を定める正式なガイドラインは、現在さらに検討が進められているところで、最終的に確定する見込みです。最新の情報は、入管庁の発表をご確認ください。
ここからが、この記事の中心です。施行は2027年4月ですが、確認と整理は、早ければ早いほど安心です。次の5つを、一つずつチェックしてみてください。
会社員の方は、住民税が給与から天引き(特別徴収)されているため、ふつうは未納が起きにくいです。注意が必要なのは、会社を辞めた、転職した、独立して自営業になったといったタイミングです。給与天引きから「自分で納める」方式(普通徴収)に切り替わる際、納付書を見落として、知らないうちに滞納になっているケースが少なくありません。市区町村で課税証明書・納税証明書を取れば、未納がないかを確認できます。
会社員で給与だけの方は、源泉徴収と年末調整で完結しているのが通常です。一方、副業の収入がある、フリーランス・個人事業として収入を得ている場合は、自分で確定申告をして納税する必要があります。申告そのものを忘れていたり、納付期限を過ぎたまま放置していたりしないか、確認しておきましょう。
会社の健康保険に入っている方は、保険料も給与天引きなので問題は起きにくいです。気をつけたいのは、退職して国民健康保険(国保)に切り替わった方、自営業の方です。国保の保険料は自分で納める必要があり、滞納が積み重なりやすい項目です。納付書が届いていないか、未納分がないかを確認してください。
厚生年金(会社員)の方は給与天引きですが、国民年金(自営業・無職・学生など)の方は、自分で納める必要があり、未納が生じやすい項目です。「ねんきんネット」や年金事務所で、自分に未納期間がないかを確認しておきましょう。もし収入が少なく支払いが難しい場合は、放置せず、保険料の免除(全額免除・一部免除)や納付猶予の手続きが利用できます。これらの手続きを取っておけば、「払えないなりに、正規の手続きを踏んでいる」状態になります。
意外な落とし穴がこれです。引っ越したのに住民票を移していない、郵便物を受け取れていない、という状態だと、納付書や督促状が届かず、知らないうちに滞納が膨らんでしまいます。さらに、こうした状態は入管から見ると「所在不明」と受け取られかねません。「通知が届いていなかった」という言い分は、原則として通用しにくいとされていますので、引っ越したら必ず住民票を移し、郵便物を確実に受け取れるようにしておきましょう。なお、海外赴任などで長期間日本を離れる場合は、出国前に納税管理人を選任しておくと、納税の手続きを代わりに行ってもらえて安心です。
(補足として、2026年6月からは在留カードとマイナンバーカードの一体化も始まりました。マイナンバー制度の整備により、入管庁が自治体に課税・納付状況を確認しやすい仕組みも整いつつあります。未納や滞納に心当たりのある方は、早めに確認しておくと安心です。)
「過去に滞納してしまった時期がある」「いまも支払いが追いついていない」という方も、いらっしゃると思います。大切なのは、放置しないことです。放置こそが、もっとも「悪質」と評価されやすい状態だからです。ポイントは大きく二つあります。
ひとつは、できれば施行(2027年4月)より前に、未納を解消しておくことです。今回の改正には経過措置が設けられていないため、理論上は施行前の滞納も取消しの対象になり得ます。一方で、運用案では、施行前にきちんと支払った場合や、悪質性が低いと判断される場合には、取消しの対象としないという取扱いが想定されています。つまり、今のうちに支払いを済ませておくことが、もっとも確実なリスク回避になります。
ただし、注意したいのは、「あとから払えば、それだけで必ず安心」とは限らない点です。入管庁は、差押えなどによって結果的に納付された場合でも、それだけで取消しの対象外になるとは限らないとしています。実際に取り消すかどうかは、未納の額や期間、督促にどう対応したかなどを総合して、個別に判断されます。だからこそ、早めに、自発的に動いておくことが大切です。
もうひとつは、一括で払えないときは、必ず窓口に相談することです。税務署・市区町村の納税窓口・年金事務所では、分割納付(分納)や、年金の免除・納付猶予などの相談ができます。「払えないから黙っておく」のではなく、「払えないなりに、正規の手続きを取っている」状態にしておくこと――これが、「故意・悪質ではない」ことの何よりの証明になります。
あわせて、やむを得ない事情があった場合の証拠を残しておくことも有効です。病気なら診断書、失業なら離職票、役所に相談した記録など、「払えなかったのには理由がある」と説明できる材料を手元に残しておくと、いざというときに役立ちます。
不安をやわらげるために、手続きの流れも知っておいてください。
取消事由に当たる疑いがあると判断された場合でも、ある日突然、永住が取り消されるわけではありません。まず入国審査官などが事実関係を調査し、そのうえで、本人に直接事情を説明する機会――意見聴取――が与えられます。入管からは「意見聴取通知書」が届き、その期日に、本人または代理人が意見を述べたり、証拠を提出したりすることができます。これは、いわば取消し前の「最後の説明の機会」です。
通知や役所からの連絡を放置しないことが、何より重要です。「気づいたら永住を失っていた」という事態は、多くの場合、届いた通知をそのままにしてしまったことから起こります。意見聴取の通知が届いたら、必ず期日に対応し、事情を丁寧に説明しましょう。
また、仮に取消事由に該当すると判断された場合でも、ただちに日本を出なければならないわけではありません。多くの場合は、「永住者」から「定住者」など別の在留資格への変更が検討されるとされています。処分に納得できないときは、取消訴訟などで争うこともできます。改正法の附則でも、これまで公的義務をきちんと果たしてきたか、現在の生活状況はどうか、といった個々の事情を十分に考慮して、慎重に運用することが求められています。
最後に、永住者の方がやるべきことを整理しておきます。
これらを守っていれば、ほとんどのケースは避けられます。2027年の法改正は、誠実に暮らす大多数の永住者を脅かすためのものではなく、ごく一部の悪質なケースに対応するためのものです。必要な確認と手続きを済ませている方は、過度に心配する必要はありません。
とはいえ、「過去に滞納した時期がある」「これから長期で海外に行く予定がある」「自分のケースが取消事由に当たらないか不安だ」という方もいらっしゃると思います。当事務所は、永住申請・永住者の方のサポートを専門に取り扱っています。ご自身の状況を確認したい方、今のうちに何を整えておけばよいか知りたい方は、お気軽にご相談ください。
| 2018年8月 | ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立 |
|---|---|
| 2022年4月 | 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」 |
| 専門分野 | 外国人在留資格、帰化申請 外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応 |
| セミナー実績 | 国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数 |
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