単純労働とは

「単純労働」とは、一般的には、専門的な知識や技能を必要とせず短期間の訓練で行うことが可能な作業を言います。

(例)コンビニやレストランのアルバイト

 

上記に加え、外国人のビザとの関係では、一定の専門的な知識や技能を要する業務あっても、現場作業(いわゆるブルーカラー)は「単純労働」に分類されます。

(例)工場作業、建設作業

 

このページでは単純労働の観点からの就労ビザの解説、単純労働が可能なビザについて解説します。

 

就労ビザと単純労働

一般的に「就労ビザ」と呼ばれるような、日本国内で就労することを目的とする在留資格で在留している外国人は単純労働をすることはできません。

 

これは日本の治安の悪化や日本人労働者の就業の機会を奪ってしまうことへの懸念から、日本政府が単純労働の外国人を受け入れることに慎重な姿勢を示しているためです。

 

就労系の在留資格で認められている活動は限定的であり、就労ビザで従事できる仕事は専門的な知識や技術を用いる仕事である必要があります。

 

典型的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」といった在留資格で行う活動は、基本的にビジネスマン、オフィスワーク(いわゆるホワイトカラー)に分類される仕事でなくてはなりません。

 

「技能」「興行」「芸術」といった在留資格も、熟練した技能・技術をもとにした仕事を行う目的の在留資格であり、単純労働を行うことはできません。

※「技能」…外国料理のコック、スポーツトレーナー、パイロットなど

「興行」…スポーツ選手、演劇員、ダンサー、オーケストラなど

「芸術」…作曲家、画家、写真家など

 

以下のような、その他の高度に専門的な知識や技術を要する仕事をする目的の在留資格も同様に単純労働はできません。

※「教授」…大学教授など

「研究」…研究所の研究員など

「教育」…学校の教員など

「宗教」…僧侶、司教など

「報道」…記者、報道カメラマンなど

「法律・会計業務」…弁護士、公認会計士など

「医療」…医師、看護師など

「介護」…介護士など

 

就労ビザの外国人を単純労働に従事させると不法就労となりますので注意が必要です。

 

技能実習と単純労働

技能実習生が従事する作業は工場作業や建設作業といった現場作業であり、単純労働に分類される作業です。

 

しかし、技能実習の制度趣旨は「我が国で培われた技能等の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与する」というものです。

国際協力を目的とした制度であり、単純労働をさせるために外国人労働者を就労させる制度ではありません。

※技能実習生は技能実習が終了した後は帰国し、本国の発展のために日本で得た技術を本国へ持ち帰ることが前提とされています。

 

法律上も技能実習生を労働力として数えてはならないことが明記されています。

※「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法3条2項)

 

特定技能と単純労働

特定技能制度は、日本社会の深刻化する人手不足に対応するため、法律で定められた14の分野について専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れ、その人手不足が深刻化する14分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

 

特定技能外国人労働者が従事する作業はいわゆる現場作業であり、その点では単純労働の要素があるものです。

また、特定技能制度がスタートした当初、マスメディア等を通して「単純労働者の受入れ」「事実上の移民政策」と喧伝された影響もあり、特定技能は単純労働の外国人を就労させる制度と理解される場合もあります。

 

しかし、特定技能外国人が現実に従事する業務は、「特定技能1号」では「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」、「特定技能2号」では「熟練した技能を要する業務」であり、厳密な意味での単純労働とはやや性質が異なります。

※実際に、外国人が特定技能の在留資格を取得するには技能試験に合格し、高い知識・専門性を身につけている必要があります。

 

就労制限がないビザ

 上記のように一般的に就労系のビザで外国人の単純労働を認められていませんが、下記のような身分等に応じて在留資格が付与されている外国人は就労の制限がありませんので、単純労働系を含めどのような職種にも就くことが可能です。

配偶者ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)

一般的に「配偶者ビザ」と呼ばれている在留資格(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)には就労制限がありません。

 

したがって、コンビニのアルバイトや現場作業といった単純労働の仕事もすることができます。

 

永住者

在留資格「永住者」には就労制限がありません。

 

したがって、コンビニのアルバイトや現場作業といった単純労働の仕事もすることができます。

 

定住者

在留資格「定住者」には就労制限がありません。

 

したがって、コンビニのアルバイトや現場作業といった単純労働の仕事もすることができます。

 

留学

在留資格「留学」は日本で学校に通うという活動をするための在留資格であり、原則として就労することはできません。

 

ただし、「資格外活動許可」と受けた場合には、週28時間以内であればコンビニのアルバイトなどに従事することができます。

また、夏休みなどの長期休暇中は18時間・週40時間までアルバイトをすることができます。

上記の所定時間を超えてアルバイトをすると不法就労となるので注意が必要です。

 

なお、資格外活動許可を得ていたとしても、風俗営業(水商売やパチンコ店など)、性風俗関連特殊営業などで働くことはできません。

 

家族滞在

在留資格「家族滞在」は就労ビザなどで在留する外国人の配偶者や子が日本で在留するための在留資格であり、原則として就労することはできません。

 

ただし、「資格外活動許可」を受けた場合には、週28時間以内であればコンビニのアルバイトなどに従事することができます。

28時間を超えてアルバイトをすると不法就労となるので注意が必要です。

 

なお、資格外活動許可を得ていたとしても、風俗営業(水商売やパチンコ店など)、性風俗関連特殊営業などで働くことはできません。

 

特定活動

特定活動ビザは原則として就労することはできません。

 

ただし、一部の特定活動ビザについては「資格外活動許可」を受けることで週28時間以内であればコンビニのアルバイトなどに従事することができます。

28時間を超えてアルバイトをすると不法就労となるので注意が必要です。

 

自分がアルバイトすることができるかどうかわからないという方は一度専門家へ相談することをおすすめします。

 

なお、資格外活動許可を得ていたとしても、風俗営業(水商売やパチンコ店など)、性風俗関連特殊営業などで働くことはできません。

 

おわりに

このページでは単純労働の観点からの就労ビザ、単純労働が可能なビザについて解説しました。

外国人の単純労働については厳格な規制がなされていますので、単純労働をしたいが自分のビザでしてよいのか判断ができないという方は一度専門家へ相談することをおすすめします。

 

湯田 一輝

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数

【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
国際結婚&配偶者ビザサポートセンター https://visa-saitama.net/
帰化申請サポートセンター https://visa-saitama.net/kika/
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