近年の外国人観光客の増加等によりホテル業界では外国人の積極的な採用が行われております。
そしてホテルや旅館業務で外国人を採用する場合、必ず就労可能な在留資格を取得する必要があります。
ホテル業界で就労可能な在留資格は主に「技術人文知識国際業務」と「特定技能」の2つがあります。
目次
技術・人文知識・国際業務と特定技能の違い
ホテル業界で就労するためには「技術人文知識国際業務」または「特定技能」の在留資格を取得する必要があります。
まずこの2つの就労ビザの違いについて説明させていただきます。技術・人文知識・国際業務のビザ(在留資格)は、日本で働く外国人会社員の方々が取得する就労ビザの一つで、最も一般的な在留資格と言えます。
会社側にとっては、他の就労ビザ(技能実習や特定技能など)と違い、外国人との間に第三者機関を挟む必要がないので、監理組合や登録支援機関に支払う手数料は発生せず、自社で採用活動を行い、雇用が可能です。また外国人にとっては、専門学校や大学で学んだ知識を活かすことができ、雇用が継続する限り、日本で在留資格を持ち、就労し続けることが可能です。
またゆくゆくは永住権や日本国籍の取得も可能となります。
特定技能(宿泊)は、深刻な労働力不足に対応するために2019年より設置されたものであり一定の技能及び日本語能力基準を満たした者が特定技能としての在留を許可されます。
1号特定技能外国人として宿泊分野の業務に従事する場合には、技能試験及び日本語試験の合格等が必要です。
※技能実習2号を良好に修了した者については,国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます。
技術・人文知識・国際業務:ホテル業で就労する場合のポイント
ホテル業界での技術・人文知識・国際業務の具体的な職務内容
①外国人観光客が多く利用するホテルで、外国語を用いたフロント業務,外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの
②本国からの観光客が多く利用する旅館で、集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務,従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの
③空港に隣接するホテルとの契約に基づき,集客拡大のためのマーケティングリサーチ,外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの
④本邦の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し,専門士の称号を付与された者が,外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて,フロントでの外国語を用いた案内,外国語版ホームペ-ジの作成,館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの
⑤海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が,国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき,月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン,宣伝・広報に係る業務に従事するもの
ホテル業界での技術・人文知識・国際業務が認められなかった事例
①主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
②本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館において,外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが,当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており,申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの
③従事しようとする業務の内容が,駐車誘導,レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの
④本邦の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し,専門士の称号を付与された者が,本邦の旅館との契約に基づき,フロントでの受付業務を行うとして申請があったが,専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となったもの
特定技能(宿泊):ホテル業で就労する場合のポイント
まず特定技能の在留資格を取得するためには、働く外国人本人が、特定技能宿泊の技能試験及び日本語試験に合格していることが必要です。
※技能実習2号を良好に修了した者については,国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます。
特定技能外国人が従事する業務
宿泊施設におけるフロント,企画・広報,接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務となります。
合わせて、これらの業務に関連する館内清掃や館内点検等に付随的に従事することも可能です。技術・人文知識・国際業務では、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする職務内容である必要がありますが、特定技能では一部単純作業を含めた幅広い職務内容に対応しております。
また技術・人文知識・国際業務でフロント業務に従事する場合、当該ホテルにおける外国人宿泊者の比率(通訳業務が恒常的に発生するか否か等)も重要となりますが、特定技能でフロント業務に従事する場合は、外国人宿泊者の比率などは要件となりません。
最後に
ホテルや旅館で外国人を採用する場合は、どういった職務内容に従事するかによって、取得する就労ビザが異なるケースが出てきます。そのため外国人本人の経歴や特定技能試験の合格の有無、そしてホテルや旅館での外国人利用者数等を踏まえ、慎重に判断していくことが重要です。
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
【運営サイト】
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