外国人が日本にあるIT企業で働くには就労ビザ(在留資格:技術人文知識国際業務)を取得する必要があります。
そして、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得するには①在留資格該当性、②上陸許可基準の要件を満たす必要があります。
このページではIT業界への就職という観点から、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性、上陸許可基準を解説します。
目次
IT業界で就労ビザを取得可能な職種
(1)在留資格該当性
在留資格「技術・人文知き・国際業務」の在留資格該当性は
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」
に認められます。
就職した後に従事する職種が上記の活動に該当しなければなりません。
IT業界の場合には、
・システムエンジニア
・プログラマー
・ソフトウェア開発
・WEBサービス開発
・ネットワーク構築
・情報システム担当
・データベースエンジニア
などの職種が該当します。
基本的には業務を行う上で理系の専門知識を用いるものが該当すると言えます。
かつてはホームページ制作の業務も理系の専門知識が必要であり在留資格該当性が認められる業務でした。
しかし、現在はホームページ制作用のソフトが発達したことで一般人レベルの知識でもホームページ制作が容易になったため、単純にホームページを制作するだけでは在留資格該当性は認められません。
理系の専門知識を用いてホームページを制作するような場合であれば在留資格該当性が認められる可能性はあります。
文系学生の場合
IT業界で就労ビザを取得しようとする場合、多くは理系学生が対象になります。
しかし文系学生であっても全く取得できないというわけではありません。
例えば、
・会社がオフショア開発をしている場合に海外の委託先企業と日本の会社とのブリッジSEとして通訳・翻訳の要素を含む業務を行う場合
・ECサイトの構築・運用の上で経済・経営・会計等の知識が必要な業務を行う場合
・翻訳ソフトの開発などで、言語の専門知識が必要な場合
といったように文系の専門知識が必要な場合が考えられます。
就職する外国人側の要件
(1)上陸許可基準(学歴・職歴・資格)
就職する外国人は上陸許可基準として以下のいずれかを満たしている必要があります。
①従事する業務の技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
②従事する技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
③十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること
④申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していること
(2)各上陸許可基準の具体例
ア 従事する業務の技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと
基本的に大卒以上であればこの要件を満たします。
また、インドのDOEACC制度の資格レベルA・B・Cを有する者は、大卒と同様に扱われます。
イ 従事する技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと
大卒でなかったとしても、専門学校を卒業している場合は要件を満たします。
専門卒(専門士)の場合は、従事する業務と専攻した科目との関連性が大卒に比べて厳格に審査されますので注意が必要です。
詳しくはこちらのページ(リンク:専門士の場合の専攻との間に求められる関連性)をご覧ください。
ウ 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること
大卒・専門卒等の学歴要件を満たさなかったとしても、十年以上の実務経験がある場合には要件を満たします。
エ 申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していること
大卒・専門卒等の学歴要件を満たさず、実務経験もなかったとしても、以下の試験に合格している場合は要件を満たします。
(ア)日本の試験
・ITストラテジスト試験
・システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
・ネットワークスペシャリスト試験
・データベーススペシャリスト試験
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・情報セキュリティスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験
・システム監査技術者試験
・応用情報技術者試験
・基本情報技術者試験
など
(イ)中国の試験
・系統分析師
・信息系統項目管理師
・系統架構設計師
・軟件設計師
・網絡工程師
・数据庫系統工程師
・程序員
など
(ウ)フィリピンの試験
a 平成16年8月30日以前にフィリピン・日本情報技術標準試験財団(JITSE Phil)が実施した基本情報技術者試験
b フィリピン国家情報技術標準財団(PhilNITS)が実施する試験のうち次に掲げるもの
・基本情報技術者試験
・応用情報技術者試験
(エ)ベトナムの試験
a 平成19年3月22日以前にベトナム情報技術試験訓練支援センター(VITEC)が実施した試験のうち次に掲げるもの
・基本情報技術者試験
・ソフトウェア開発技術者試験
b 平成24年3月26日以前にベトナム訓練試験センター(VITEC)が実施したソフトウェア開発技術者試験
c ベトナム訓練試験センター(VITEC)が実施する以下の試験
・基本情報技術者試験
・応用情報技術者試験
(オ)韓国の試験
韓国産業人力公団が認定する以下の資格
・情報処理技師
・情報処理産業技師
(カ)台湾の試験
平成24年12月31日以前に財団法人資訊工業策進会(III)が実施した以下の試験
・軟体設計専業人員試験
・網路通訊専業人員試験
・資訊安全管理専業人員試験
(キ)マレーシアの試験
マルチメディア技術促進本部(METEOR)が実施する基本情報技術者試験
(ク)タイの試験
a 平成22年9月30日以前に国立電子コンピュータ技術センター(NECTEC)が実施した基本情報技術者試験
b 国立科学技術開発庁(NSTDA)が実施する以下の試験
・基本情報技術者試験
・応用情報技術者試験
(ケ)モンゴルの試験
モンゴル国立ITパーク(NITP)が実施する以下の試験
・基本情報技術者試験
・応用情報技術者試験
(コ)バングラデシュの試験
・基本情報技術者
・応用情報技術者
(サ)シンガポールの試験
シンガポール・コンピューター・ソサイエティ(SCS)が認定するサーティファイド・IT・プロジェクト・マネージャ(CITPM)
(シ)ミャンマーの試験
ミャンマーコンピュータ連盟(MCF)が実施する以下の試験
・基本情報技術者試験
・応用情報技術者試験
まとめ(IT業界で就労ビザを取得)
1 IT業界で就労ビザを取得するには理系の専門知識を用いる業務に就くことが必要。
文系学生の場合にはIT系業務を行う中で、語学・経済・会計といった文系の専門知識を用いることが必要。
2 IT業界で就労ビザを取得する外国人は
・大卒 or 専門卒で、就職後の業務に関連する科目を履修していること
・10年以上の実務経験があること
・日本か海外で一定の試験に合格していること
のいずれかを満たしていることが必要。
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
国際結婚&配偶者ビザサポートセンター https://touch.or.jp/marriage/
帰化申請サポートセンター https://visa-saitama.net/kika/
就労ビザサポートセンター https://touch.or.jp/work/
永住ビザサポートセンター https://touch.or.jp/eizyu/
ビザサポートセンター https://www.yuda-office.jp/