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育成就労制度とは?技能実習廃止で何が変わる|転籍・日本語・費用

calendar_month2026年02月06日
cached2026年10月01日

2027年4月1日、技能実習制度が廃止され「育成就労制度」が始まります。一言でいえば「3年間で特定技能1号の水準まで外国人材を育て、そのまま日本で確保する制度」で、目的は「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ正面から転換されました。企業実務に直結する変更点は、本人意向の転籍が分野ごとに1〜2年の制限期間経過後に可能になること、日本語要件が新設されること、送出し手数料の本人負担に上限が設けられ企業側の負担が増えることの3つです。

政省令(2025年9月30日公布)、分野別運用方針(2026年1月23日閣議決定)、運用要領(2026年2月20日公表)が出揃い、監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から施行日前の受付が始まっています。本記事では、「123万人」の数字の正体から、制度の仕組み、技能実習との違い、変更点6つ、今いる技能実習生の扱い、企業が今やるべきことまでを解説します。

この記事で分かること
  • 受入れ予定人数「123万人」の正体(上限の考え方)
  • 育成就労制度とは(3年間で特定技能1号レベルへ)
  • なぜ技能実習制度が廃止されたのか(背景3つ)
  • 技能実習との違いと、企業に影響する変更点6つ(転籍・日本語・監理支援機関・費用など)
  • 受入れ人数枠と優良企業の優遇
  • 2027年施行までのスケジュールと、今いる技能実習生の経過措置
  • 企業が今から準備すべきこと

目次

本記事の内容を動画でも解説しています

本記事の内容は、行政書士法人タッチ代表の湯田が動画でも詳しく解説しています。文字よりも動画で学びたい方は、ぜひあわせてご覧ください。

1. 育成就労制度の受入れ予定人数(123万人の正体)

政府の分野別運用方針では、新しい「育成就労」と、その先の「特定技能」を合わせて、2029年3月末までの受入れ見込数を約123万人としています。

区分 受入れ見込数(2029年3月末まで) 2025年6月末の在留者数
育成就労 42万6,200人 技能実習生 約45万人
特定技能 80万5,700人 1号特定技能外国人 約33.6万人
合計 123万1,900人 約78万人

奈良県の人口が約127万人なので、「奈良県まるごと1つ分」くらいの受入れ枠というイメージです。ただし、「外国人就労者が123万人増える」という意味ではありません。すでに在留している約78万人(技能実習生と特定技能)も含めつつ、移行しながら全体で123万人規模まで受け入れていく「上限設定」です。

この上限は、分野ごとの人手不足の見込みから、国内の人材確保・生産性向上で埋められる分を差し引き、それでも足りない分を「外国人でどこまで補うか」として分野別に積み上げて決定されたものです。2026年1月の閣議決定ではリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が新たに加わり、分野が増えればその分の不足数も計算に乗るため、全体の枠も大きくなります。

2. 育成就労制度とは(3年間で特定技能1号レベルへ)

育成就労制度は「3年間で、特定技能1号レベルの人材を育てる制度」です。従来の技能実習は「日本で技術・知識を学び、母国へ持ち帰って発展に寄与する(国際貢献・技能移転)」が建前の目的でしたが、育成就労は即戦力となる人材を育成し、そのまま日本で確保することを目的としています。

標準的なキャリアパス育成就労(3年)→ 特定技能1号(最長5年)→ 特定技能2号(在留期間の上限なし・家族帯同可)。3年間の就労を通じて一定の日本語能力と技能を身につけ、スムーズに特定技能へ移行することが前提の制度設計です。企業は外国人を「数年で入れ替わる実習生」ではなく「将来のコア人材」として採用・育成する視点が不可欠になります。

3年間で達成すべき目標

  • 技能:育成就労終了時までに、技能検定3級相当または特定技能1号評価試験に合格(特定技能1号の技能要件と実質同等)
  • 日本語:就労開始前にA1相当(JLPT N5目安)、育成就労終了時にA2相当(JLPT N4目安)以上

3. なぜ技能実習制度が廃止されたのか(背景は3つ)

  1. 目的と実態のズレ:目的は「国際貢献・技能移転」だったが、実態は日本の人手不足を補う労働力として機能していた。この乖離が低賃金労働や人権侵害、失踪の温床になった
  2. 転籍が原則できず、トラブルが構造化しやすかった:悪質な実習先から逃れられないことが、人権・保護の課題として国内外から指摘されていた
  3. キャリアパスが不透明だった:実習終了後にどう働き続けるのかが制度として見えにくく、技能実習から特定技能へ移行できない職種もあり、帰国せざるを得ない構造があった

そこで育成就労は、最初から「3年間で育てる」ことを前提に、その先の特定技能へ進むルートを明確化しています。

4. 技能実習と育成就労の違い(比較表)

比較項目 旧:技能実習制度 新:育成就労制度(2027年4月〜)
制度の目的 国際貢献(開発途上国への技能移転) 人材育成・人材確保(日本の人手不足解消)
受入れ分野 90職種以上の「移行対象職種・作業」 育成就労産業分野(特定技能の分野と原則一致)
転籍(転職) 原則不可(やむを得ない事情のみ) 分野ごとに1〜2年の制限期間経過後、要件を満たせば本人意向で可能
日本語要件 入国時の必須要件なし(介護はN4) 就労開始前にA1相当(N5)合格または相当講習。終了時A2相当(N4)
試験 1号終了:技能検定基礎級/2号終了:随時3級(実技) 1年目:A1+育成就労評価試験初級/3年目:A2+評価試験専門級等
監理 監理団体 監理支援機関(外部監査人の義務化など要件厳格化)
費用負担 送出機関手数料の規制が曖昧 本人負担上限(月給2か月分)+受入れ機関の適正分担
受入れ人数枠 常勤職員数に応じた基本人数枠(優良で2倍) 常勤職員数の15%(優良30%、優良かつ指定区域は最大45%)

5. 育成就労制度で何がどう変わるのか(変更点6つ)

変更点①:制度の目的(国際貢献→人材育成・確保)

育成就労は、実態と合っていなかった「国際貢献」を目的から外し、「人材育成」と「人材確保」を目的にしています。企業側も「実習生の受入れ」から、育成と定着を前提にした採用・教育・評価へ意識を変える必要があります。

変更点②:受入れ分野(特定技能の分野と原則一致)

新制度の受入れ分野は、原則として特定技能の受入れ分野(特定産業分野)と一致します。「実習→特定技能」の移行時に、職種・業務区分の不一致でビザ変更できないというミスマッチが解消されます。技能実習の91職種168作業がすべて育成就労の対象になるわけではないため、自社の業務が該当するかは外国人技能実習機構が公表する「技能実習2号移行対象職種と育成就労における分野(業務区分)との関係性」で確認してください。

変更点③:転籍(本人意向の転籍が可能に。ただし制限あり)

企業が最も懸念するのが「育てた人材が他社に引き抜かれるのでは」という点です。育成就労では人権保護の観点から本人意向による転籍が認められますが、無制限ではありません。

項目 内容
転籍制限期間 分野ごとに1年または2年(2026年1月の分野別運用方針で確定)。介護・建設・工業製品製造業・造船・舶用工業・自動車整備・飲食料品製造業・外食業・資源循環は2年、ビルクリーニング・宿泊・農業・漁業・林業・木材産業・鉄道・リネンサプライ・物流倉庫は1年
制限期間内 パワハラなどの「やむを得ない事情」がない限り転籍不可
本人の要件 技能検定基礎級等(または相当する育成就労評価試験)に合格、日本語A1相当(N5等)に合格
転籍先の要件 同一分野・同一業務区分内に限る。転籍先も適正な受入れ機関であること。職業紹介は監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワークに限定(民間紹介事業者は不可)
2年の分野の注意点 2年を選択した企業は、就労開始から1年経過後に昇給などの待遇向上が義務。企業判断で制限期間を1年に短縮すれば義務はかからない

変更点④:日本語能力要件(新設)

育成就労では、技能実習時代にはなかった日本語能力要件が設けられました。

  • 就労開始前:A1相当(目安JLPT N5)の試験合格、または認定日本語教育機関等でのA1相当講習(100時間以上)の受講
  • 1年目終了時:A1相当(あいさつ・自己紹介・ゆっくりなら短いやり取り)
  • 3年目終了時:A2相当(目安JLPT N4/仕事の基本的な指示を理解しやり取りできる)
「現場で覚えればいい」は通用しません。企業(または監理支援機関)には、就労中もA2目標の講習を受講できるよう、費用負担や時間確保の措置を講じる義務があります。オンライン講習も可能ですが、双方向性のあるものが求められます。

変更点⑤:監理側の変更(監理団体→監理支援機関)+外部監査人の義務化

監理団体は「監理支援機関」に変わり、許可要件が厳格化されます。最大の変更点は、業務の中立性を担保するため外部監査人の設置が義務化されることです。外部監査人は弁護士・社労士・行政書士等の有資格者など、制度に知見を持つ第三者が想定されています。また、受入れ企業と密接な関係にある役職員が監理業務に関与することが制限され、役職員1人が担当できる受入れ機関数にも上限が設けられます。既存の監理団体は自動的には移行できず、新たに許可を取り直す必要があります。詳細は監理支援機関とは?育成就労の許可要件・役割・申請スケジュールをご覧ください。

変更点⑥:費用負担の変化(初期費用+転籍費用)

初期費用:送出機関手数料に上限(本人負担=月給2か月分まで)

不透明だった送出機関への手数料にメスが入り、外国人本人が送出機関へ支払う金額は「日本での月給の2か月分まで」という上限が設けられます。本人の負担が減る分、送出機関の運営コストの一部は受入れ企業が「適正な送出し手数料」として分担することになります。参考として、技能実習制度での国別の本人支払費用総額(平均値)は次のとおりです。

国 支払費用総額(平均) 傾向
ベトナム 688,143円 本人負担が大きく減り、企業負担が増える見込み
中国 591,777円 同上
カンボジア 573,607円 同上
ミャンマー 287,405円 影響は中程度
インドネシア 235,343円 影響は中程度
フィリピン 94,821円 もともと本人負担が小さい
全体 542,311円 出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習生の支払い費用に関する実態調査」

「高い手数料を払えば良い人材が来る」という従来の構造は禁止され、送出機関と受入れ機関の間でのキックバックの授受は厳罰の対象です。

転籍費用:転籍先→転籍元へ費用を支払う仕組み

本人意向で転籍が行われる際、転籍先企業が転籍元企業へ費用を支払う仕組みが導入されます。国が定める一定額に、転籍元での就労期間に応じた按分率(1年6か月未満:6分の5、1年6か月以上2年未満:3分の2、2年以上2年6か月未満:2分の1、2年6か月以上:4分の1)を掛けた金額です。最初の受入れ企業の採用・育成コストが無駄にならないよう設計されています。

6. 受入れ人数枠:優良企業ほど多く受け入れられる

受入れ可能な人数(常勤職員数に対する比率)は、企業の「優良性」で大きく変わります。

  • 一般の受入れ機関:常勤職員数の15%まで
  • 優良な受入れ機関:常勤職員数の30%まで
  • 優良かつ指定区域(過疎地域など)に所在:監理支援機関も優良であれば最大45%まで

現在の技能実習制度下での「優良実習実施者」要件(法令遵守、待遇改善、技能検定合格率など)を満たす体制を今から整えておくことが、新制度での人数枠確保につながります。

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7. 2027年施行までのスケジュールと経過措置

時期 内容
2024年6月 改正法成立・公布(技能実習制度の廃止、育成就労制度の創設)
2025年3月11日 基本方針を閣議決定
2025年9月30日 政省令を公布(転籍要件、日本語要件、費用負担などの詳細)
2026年1月23日 分野別運用方針を閣議決定(分野ごとの転籍制限期間・受入れ見込数・新3分野の追加)
2026年2月20日 育成就労制度運用要領を公表(4月6日一部改正)
2026年4月15日 監理支援機関許可の施行日前申請 受付開始
2026年9月1日 育成就労計画認定の施行日前申請 受付開始
2026年9月30日 技能実習の監理団体の新規許可申請の受付終了
2027年4月1日 育成就労法 施行。外国人技能実習機構は外国人育成就労機構へ

今いる技能実習生はどうなる?(経過措置)

  • 施行日前に技能実習で入国した人:施行日以降も在留期限までは「技能実習」のまま活動できる。強制的に新制度へ切り替わるわけではない
  • 技能実習の継続:施行日時点で技能実習中の人は、所定の試験に合格すれば技能実習2号・3号へ移行し、最大5年まで実習を継続できる(育成就労への在留資格変更は原則不可)
  • 新規入国:2027年4月1日以降の新規入国は原則「育成就労」。施行日直前に技能実習計画の申請をしていた場合など、例外的に技能実習生として入国できる経過措置あり
  • 技能実習修了後:技能実習2号を良好に修了すれば、従来どおり特定技能1号へ試験免除で移行できる
2027年4月以降にまとまった人数を受け入れる予定なら、施行日前申請を活用してください。育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から受け付けられており、施行日と同時に受け入れるにはこの申請が必要です。監理支援機関の許可が下りていることが前提になるため、利用予定の監理団体が監理支援機関の申請を済ませているかを必ず確認してください。

まとめ:制度開始(2027年)に向け、企業が準備すべきこと

「技能実習」から「育成就労」への転換は、単なる名称変更ではなく、外国人を「日本の産業を支える不可欠な人材」として正面から受け入れる歴史的な転換点です。企業が押さえるべきポイントは次の4つです。

  1. 「長期定着・戦力化」へ発想転換:育成就労→特定技能1号→2号の基本ルートを前提に、採用・教育・評価を設計する
  2. 転籍リスクへの備え=「選ばれる企業」づくり:制限期間が過ぎれば転籍できる。待遇だけでなく住環境・人間関係・キャリア提示で定着率を上げる。2年の分野では1年経過後の昇給義務も織り込む
  3. 日本語教育の体制整備:A1・A2目標講習の受講機会(時間・費用)を確保する
  4. コスト構造の変化を事業計画へ反映:送出し手数料の企業負担、監理支援費の公表、転籍費用負担金を見込む

フィリピン人材を受け入れる場合は、育成就労でもフィリピン政府側のMWO・DMW手続きが必要になる見込みです。MWO・DMW申請手続きとはもあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 123万人は「外国人が123万人増える」という意味ですか?

いいえ。すでに在留している約78万人(技能実習生・特定技能)も含めつつ、2029年3月末までに全体で123万人規模で受け入れる「上限」の設定です。

Q2. 転籍は自由になりますか?

無制限ではありません。分野ごとに1年または2年の制限期間があり、技能・日本語の要件、同一分野・同一業務区分内という制約、転籍先の要件もあります。職業紹介も監理支援機関・機構・ハローワークに限定されます。

Q3. 日本語要件はどの程度ですか?

就労開始までにA1(目安N5)相当の合格または相当講習の受講、3年目終了時にA2(目安N4)相当が求められます。

Q4. 今いる技能実習生を育成就労に切り替える必要がありますか?

ありません。施行日前に入国した技能実習生は在留期限まで技能実習のまま活動でき、試験に合格すれば2号・3号へ移行して最大5年まで継続できます。修了後は特定技能1号へ試験免除で移行するのが一般的です。

Q5. 特定技能と育成就労、どちらで採用すべきですか?

即戦力(試験合格済み・日本語N4相当)を今すぐ確保したいなら特定技能、未経験者を3年かけて育てて長期定着させたいなら育成就労が基本です。特定技能は分野内で転職が自由なので、定着の観点では育成就労の転籍制限期間が企業側のメリットになります。詳細は特定技能1号とはをご覧ください。

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参考資料

この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士 湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野 外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
セミナー実績 国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
運営サイト 行政書士法人タッチ
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