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Lビザ完全ガイド|L-1A・L-1B・Blanket Lの要件と、駐在員派遣の実務

はじめに

複数の海外拠点を持つ企業では、管理職や専門知識を持つ社員を米国拠点へ異動させる場面が出てきます。この「企業内転勤」を担うのがLビザです。E-1・E-2(条約貿易家・投資家)と並んで、日本企業の米国駐在で広く使われている制度ですが、仕組みはEビザとかなり異なります。

この記事では、①LビザとEビザの構造の違い、②L-1A(管理職・役員)とL-1B(専門知識)の違い、③会社側の要件、④個別申請の流れ、⑤Blanket L(一括承認)、⑥家族の帯同、⑦審査でつまずきやすい論点、⑧費用の考え方、⑨EビザとLビザの選び方、の順に、人事・総務・海外事業のご担当者の視点で整理します。

 

LビザとEビザは仕組みが違う

第1・2篇でEビザを扱いましたが、Lビザは判断の主体も、会社側の手続も、根本的に異なります。まずこの違いを押さえてください。

 

Eビザ(E-1・E-2)

Lビザ(L-1A・L-1B)

判断の主体

在日米国大使館・総領事館(領事による1段階審査)

まずUSCIS(米国国土安全保障省)がI-129ペティションを審査し、承認後に領事が査証を審査(2段階)

会社側の手続

企業登録(U.S. Mission Japanへの登録)

米国側の受入企業がUSCISへI-129ペティションを提出(Form I-129, Petition for a Nonimmigrant Worker)

根拠となる関係

条約国籍(日本国籍者による50%超の所有)+日米間の貿易または投資

親会社・支店・子会社・関連会社という資格関係(qualifying relationship)

例外的な枠組み

なし

Blanket L(一括承認):事前に企業間の資格関係をUSCISに承認してもらい、個々の申請では領事段階から進められる制度

対象者

経営者・管理職・必須技能職

管理職・役員(L-1A)、専門知識を持つ社員(L-1B)

つまり、Eビザが「会社の適格性を米国大使館・総領事館に登録し、その枠内で個人を審査する」構造であるのに対し、Lビザは「米国側の受入企業が、個々の社員(または一括の枠組み)についてUSCISへ申請し、承認を得てから査証手続に進む」構造です。米国の受入企業がすでに存在し、そこに日本側から人を送り込む、という前提がLビザにはあります。

 

L-1AとL-1Bの違い

Lビザには2つの区分があります。

 

L-1A(管理職・役員)

L-1B(専門知識)

対象となる職務

管理的能力(managerial capacity)または役員的能力(executive capacity)

会社の製品・サービス・研究・設備・技術・経営手法等について、通常の従業員を超える専門知識(specialized knowledge)

海外での勤務要件

申請前3年以内に、関連会社等で継続して1年以上のフルタイム勤務

同左

米国での滞在上限

通算7年(H身分での滞在期間も通算)

通算5年(同上)

新規事務所の場合の初回承認期間

1年

1年

それ以外の場合の初回承認期間

最大3年

最大3年

Blanket Lでの扱い

対象(管理職・役員として)

対象は「専門職(profession)」の要件も満たす者に限定(後述)

管理職・役員の判断基準
役職名や会社のオーナーであることだけでは、管理的・役員的能力の証明にはなりません。USCISが重視するのは、部下の人数や職務内容、指揮命令系統における位置づけ、経営上の重要な意思決定への関与などです。組織の「本質的な機能(essential function)」を管理する立場(いわゆるファンクショナル・マネージャー)も対象になり得ますが、その場合は、管理している機能の内容と、日常業務のうちその管理業務が占める割合を具体的に示す必要があります。なお、従業員が本人1人だけの拠点であっても、その人物が組織の主要な機能を計画・組織・指揮・統制する立場にあれば、管理職・役員として認められる場合があります。
専門知識の判断基準
専門知識とは、その業界で一般的に得られる知識を超え、申請人が長年その会社に在籍する中で培った、会社固有の製品・技術・手法等に関する高度な知識を指します。単に「熟練した技能を持つ作業者(skilled worker)」であることは、専門知識には当たりません。L-1Bは、米国内の人材不足を補うための制度ではなく、あくまで会社固有の知識を米国拠点に移転するための制度です。

 

会社側の要件:資格関係と事業の継続性

Lビザの土台となるのは、日本側の会社と米国側の会社の「資格関係(qualifying relationship)」です。親会社・支店・子会社・関連会社のいずれかの関係にあることが必要です。

そのうえで、次の点が求められます。

  • 国際的な事業の継続:申請人の米国滞在期間中を通じて、米国側・日本側の双方で、規則的・体系的・継続的に商品またはサービスを提供する事業を行っていること。単に代理人や事務所が存在するだけでは足りません。
  • 1年以上の海外勤務歴:申請人が、申請前3年以内に、関連会社等で継続して1年以上、フルタイムで管理職・役員・専門知識のいずれかの立場にあったこと。この1年は米国外での勤務である必要があり、米国内での勤務や、扶養家族(L-2・E配偶者等)としての滞在期間はカウントされません。
  • 新規事務所の場合の追加要件:米国側の拠点が「1年未満しか事業を行っていない」新規事務所にあたる場合、管理職・役員では「事務所の物理的な設置」「1年以内に管理職・役員のポストを支えられる規模になる計画」、専門知識では「物理的な設置」「資格関係を満たす事業体であること」「申請人への報酬支払いと事業開始の資力があること」を示す必要があります。新規事務所での初回承認は1年に限られ、延長には実際に事業を行っていることの証明が必要です。

 

    個別申請(I-129)の流れとスケジュール

    Lビザの個別申請は、次の流れで進みます。

    1. 資格関係・要件の確認:日本側・米国側の資格関係、申請人の1年勤務要件、職務内容(管理職・役員か専門知識か)を整理します。
    2. 米国側企業によるI-129の提出:米国側の受入企業(petitioner)が、USCISの管轄サービスセンターへForm I-129を提出します。通常審査の場合、審査には数か月単位の期間を要するのが実務上の目安です(プレミアム処理を利用すれば15営業日以内に一次判断が出ますが、追加費用がかかります)。混雑状況やサービスセンターにより変動するため、直近の目安はUSCIS公式の処理期間情報でご確認ください。
    3. 承認通知(I-797)の取得:承認されると、Form I-797(Notice of Action)が交付されます。
    4. 領事段階(DS-160・面接):申請人が在日米国大使館・総領事館でDS-160を作成し、MRV申請料を支払い、面接を受けます。I-797の提示が前提となります。
    5. 入国・I-94の確認:入国時にL-1の区分でI-94が発行されます。

      新規事務所以外の案件では、初回承認は最大3年です。延長は2年ごとに、L-1Aは通算7年、L-1Bは通算5年まで可能です(米国でH区分にあった期間も通算されます)。なお、専門知識で入国した後に管理職・役員へ昇格した場合、通算7年まで滞在するには、昇格後の職務で少なくとも6か月の実績と、その変更についてのUSCISでの承認が必要です。

       

      Blanket L(一括承認)

      グループ内で多数の駐在員を継続的に行き来させる企業向けに、Blanket L(一括承認)という制度があります。個々の異動のたびに個別ペティションを出す代わりに、企業グループとしての資格関係をあらかじめUSCISに承認してもらい、以後は個々の異動者が直接、在外公館でL査証を申請できる仕組みです。

      Blanket L取得の要件(すべて満たす必要があります)

      要件

      内容

      ① 事業内容

      申請企業および対象となる各関連会社が、商業取引またはサービス業を行っていること

      ② 米国側事業の実績

      申請企業が、1年以上事業を行っている米国内の事務所を有すること

      ③ 組織規模

      申請企業が、国内外に3つ以上の支店・子会社・関連会社を有すること

      ④ 実績または規模(いずれか1つ)

      (a) 過去12か月間にL管理職・役員・専門知識職として10件以上の承認実績、または (b) 米国内の子会社・関連会社の合算年間売上高が2,500万ドル以上、または (c) 米国内の従業員数が1,000人以上

      Blanket Lは、比較的規模が大きく、多層的な組織構造を持ち、人材のローテーションが定常的に発生している企業を想定した制度です。中小規模の組織や非営利団体は、この基準を満たさないことが多く、その場合は個別ペティションによることになります。

      Blanket Lで注意したい点

      • 新規事務所は対象外:これから米国拠点を立ち上げる案件はBlanket Lの対象になりません(既存の、承認済み事業体への異動が前提です)。
      • L-1Bはより高い基準:Blanket Lで専門知識として申請する場合、単に「専門知識を持つ」だけでは足りず、「専門職(profession)」の要件(学士号相当の学歴、または相当する資格・免許等)もあわせて満たす必要があります。この判断は個別ペティションより厳格です。
      • 在外公館での個別確認:Blanket Lの承認は、あくまで「企業グループとしての資格」の承認であり、個々の異動者がL-1A・L-1Bの要件(1年勤務歴、管理職・役員または専門知識の実質)を満たすかどうかは、領事が申請ごとに確認します。承認された枠組みに入っていることが、個人の適格性を保証するわけではありません。
      • 初回3年・その後は無期限延長の申請が可能:Blanket Lの承認は初回3年間有効で、要件を満たしていれば無期限の有効期間への延長を申請できます。
      • 手数料:Blanket L対象者は、MRV申請料に加えて、Fraud Prevention and Detection Fee(500ドル、最初のI-129Sごと)が必要です。さらに、申請企業が「米国内に50人以上の従業員を雇用し、かつそのうち50%超がH-1B・L-1A・L-1Bのいずれかの身分である」場合には、追加でConsolidated Appropriations Act Fee(4,500ドル)が課されます。この追加料金は、多数のH-1B・L-1保持者を抱える大企業を主な対象としたものです。

        自社がBlanket Lの対象になり得るか、対象となる場合にどう組み立てるかは、組織構造や実績のデータによって判断が変わります。個別にご相談ください。

         

        家族の帯同(L-2)

        L-1の配偶者・21歳未満の未婚の子は、L-2として帯同できます。

        • 配偶者の就労:L-2配偶者は、身分に付随する就労許可(employment authorized incident to status)が認められています。I-94にL-2Sの区分が記載されることで、別途の就労許可証(EAD)申請を待たずに就労を開始できる運用です。
        • 子の扱い:L-2の子(L-2Y)には就労許可が付与されません。就学は可能です。
        • 滞在期間:L-2の滞在期間は、原則としてL-1本人の滞在期間に連動します。
        • 通算7年・5年の例外との関係:L-1本人が、家族をL-2として米国に滞在させ続けた場合、readmission(一時出国後の再入国)に関する一部の例外規定が適用されなくなる点に注意が必要です。

         

          よくあるつまずき(RFE論点)

          Lビザの審査で追加資料の要求(RFE:Request for Evidence)につながりやすい典型的な論点です。

          • 管理職・役員性の立証不足:役職名だけで説明し、部下の人数・職務内容・意思決定権限の具体的な記述がない。
          • 専門知識と一般的な熟練技能の混同:「経験が長い」「技能が高い」というだけでは専門知識に当たりません。会社固有の製品・技術・手法に関する知識であり、かつ米国の労働市場で容易に得られないものであることを示す必要があります。
          • 1年勤務要件の記録不備:勤務期間・職務内容・フルタイムであったことを裏づける給与記録や辞令が整理されていない。米国内での勤務期間や、扶養家族としての滞在期間が誤って算入されている。
          • 新規事務所の実体不足:物理的な事務所の確保、資金の実際の送金、事業計画との整合性が不十分。2026年のUSCISの運用では、新規事務所の初回承認にあたり、バーチャルオフィスのみでは不十分とされ、実際の事業運営に向けた物理的拠点と資金的な裏づけが求められる傾向が示されています。
          • 第三者先での勤務:L-1B専門知識者が、主として提携関係のない第三者(顧客企業等)の事業所で稼働し、かつその指揮監督を主に当該第三者が行っている場合や、実質的に労働力の供給に近い形になっている場合は、対象外とされることがあります。技術者を客先常駐させる形の異動を検討する際は、この点の整理が必要です。
          • 組織再編後の資格関係:合併・買収等により、日本側と米国側の資格関係の説明が変わる場合、既存のペティション・Blanket Lの前提が崩れることがあります(この論点は、組織再編・M&A後のビザの有効性を扱う別の記事で詳しく取り上げます)。

           

          費用の考え方

          Lビザの費用は、米国側の受入企業が負担するUSCISへの申請費用と、申請人が負担するMRV申請料(および渡航前の諸費用)に分かれます。

          項目

          目安

          備考

          I-129申請手数料(USCIS)

          1,385ドル(通常)/695ドル(従業員25人以下の企業・非営利団体)

          初回・延長のいずれにも必要

          Fraud Prevention and Detection Fee

          500ドル

          初回のみ(延長では通常不要)

          Asylum Program Fee

          600ドル(通常)/300ドル(従業員25人以下の企業)/非営利団体は不要

          初回・延長のいずれにも必要

          プレミアム処理(任意)

          2,965ドル

          15営業日以内の一次判断を保証するオプション

          MRV申請料(申請人負担)

          205ドル

          L・H・O・P・Q等のペティション型ビザ共通

          Blanket L Fraud Prevention Fee

          500ドル

          Blanket L対象者に別途必要(上記のFraud Prevention and Detection Feeとは別制度の手数料です)

          Consolidated Appropriations Act Fee

          4,500ドル

          個別・Blanket Lいずれの申請でも、雇用主が米国内50人以上雇用かつ50%超がH-1B/L-1という基準を満たす場合に課される

          このほか、米国の法律により非移民ビザの発給時に課される追加手数料(Visa Integrity Fee:US$250)が定められています。徴収の開始時期・運用は変更され得るため、申請時点の公式案内でご確認ください。

          金額はいずれも2026年8月確認時点のものであり、USCIS・米国務省の料金改定により変更される可能性があります。申請前に必ず最新の公式案内をご確認ください。

           

          EビザとLビザ、どちらが合うか

          両者は要件の性質がそもそも異なるため、単純な優劣ではなく、会社の状況によって向き・不向きがあります。

          • すでに米国拠点があり、資格関係のある会社間で人を異動させたい場合は、Lビザが自然な選択になりやすい構造です。
          • 日米間の貿易実績、または米国事業への投資を軸に説明したい場合は、Eビザが選択肢になります。
          • 将来的に多数の駐在員を継続的にローテーションさせる計画がある大企業では、Blanket Lの活用も検討に値します。
          • 家族の就労を重視する場合、配偶者の就労が認められる点はE・Lで共通していますが、要件を満たす経路が異なります。

            どちらの制度がより適切かは、会社の所有構造、事業の実態、駐在員の職務内容によって変わります。両制度を体系的に比較した記事は別途整理する予定です。

             

            当事務所でサポートできること

            当事務所(行政書士法人タッチ)では、Lビザでの駐在員派遣を検討される企業に対して、次のようなサポートを行っています。資格関係・要件該当性の一次整理のご相談、在職証明書・辞令・組織図・業務内容説明書等、日本側で必要となる資料の収集・整理・英訳、申請全体のスケジュール管理、DS-160の作成サポート、面接に向けた準備までを一貫して支援します。

            管理職・役員該当性や専門知識該当性の評価、Blanket Lの対象可否の判断、組織再編後の資格関係の整理など、米国移民法上の法的評価が必要な場合は、米国提携弁護士(Valvo & Associates)と連携し、リーガルレビューや法的意見書の作成に対応します。

             

            まとめ

            Lビザは、Eビザと並んで日本企業の米国駐在で広く使われる制度ですが、「米国側の受入企業がUSCISへI-129ペティションを提出し、承認後に領事段階へ進む」という2段階の構造は、Eビザの「企業登録→領事審査」とは根本的に異なります。

            L-1A(管理職・役員)とL-1B(専門知識)では、求められる立証の性質が異なり、特に専門知識は「一般的な熟練技能ではないこと」の説明が審査の核心になります。

            継続的に多数の駐在員を送る大企業には、Blanket Lという選択肢もありますが、要件は個別ペティションより厳格な面もあります。

            会社の資格関係・事業実態・駐在員の職務内容を早めに整理し、逆算してスケジュールを組むことが、円滑な派遣につながります。

             

            参考資料・公式リンク

             

            免責

            本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別案件に対する法的助言ではなく、個別案件の結果を保証するものでもありません。ビザの発給可否は、USCISおよび在日米国大使館・総領事館による個別審査であり、入国の可否や滞在可能期間は、入国時に米国当局(CBP)が判断します。制度・手数料・運用は変更される可能性があるため、申請前に必ず最新の公式情報をご確認ください。(2026年8月確認時点)

             

            この記事の監修者
            行政書士法人タッチ 代表行政書士 湯田 一輝
            2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
            2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
            専門分野 外国人在留資格、帰化申請
            外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
            セミナー実績 国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
            運営サイト 行政書士法人タッチ
            国際結婚&配偶者ビザサポートセンター
            帰化申請サポートセンター
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