高齢化が進む林業の現場で、即戦力として期待される「特定技能」外国人。育林から素材生産まで担える人材の確保は、事業存続の大きな鍵です。
一方で、安全管理の難しさや「林業特定技能協議会」への加入など、導入には独自のハードルも存在します。
そこで本記事では、林業分野での受け入れ要件や申請手続きを分かりやすく解説します。制度を正しく理解し、円滑な採用を実現しましょう。
目次
在留資格「特定技能」とは
いわゆる就労ビザ(就労資格)は、現業的な作業を主な業務とする仕事に就くことは限られたケースを除きできません。
しかし、日本ではこのような現業業務を行う作業員の人手不足は年々深刻化しています。
そのような現状を受け、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業として法令で定められた分野では、一定の専門性・技能を有する外国人であれば現業業務を行う作業員として受け入れることが可能になる制度がつくられました。これが「特定技能」です。
2019年に特定技能制度が始まった当初は12分野が特定技能の産業分野として定められ、林業はこの中に入っていなかったため、これまで林業分野では農業分野や漁業分野と異なり特定技能外国人の受入れを行うことはできませんでした。
しかし、2024年に4分野が追加され、新たに林業も加わったため、現在では林業分野でも特定技能外国人を受け入れることが可能です。
林業分野の特定技能で従事可能な業務
主たる業務は「造林」「素材生産」であり、
・苗木を植え、樹木を育てる作業
・丸太を生産する作業
・原⽊の⽣産を含む製炭作業
などが典型的なものとして想定されています。逆に言うと、林業分野の特定技能ではこれら以外の業務に従事することはできません。
ただし、上記にあたらない業務であっても、当該業務に従事している日本人ならば通常併せて従事することになるような業務(関連業務)であれば、主たる業務に付随して従事することが可能です。
関連業務としては、
・生産した丸太を使用して行う加工等の作業
・丸太の生産に伴う副産物(樹皮、つる等)を使用して行う製造等の作業
・機器・装置・工具等の保守管理
・資材の管理・運搬
・事業所等の清掃作業
・冬季の除雪作業
などが想定されています。
「特定技能」と「技能実習」の違い
現業的な作業を行う在留資格としては「特定技能」の他に「技能実習」という制度を聞いたことがあるかもしれません。
どちらも現業的な作業を行うという点は同じですが、技能実習は仕事を学ぶ点に重心が置かれているのに対し、特定技能は同種作業を行う日本人の概ね3年目程度の専門能力を持った即戦力の労働力としての役割に重心が置かれている点が異なり、法令の規定もそれが反映されたものになっています。また、法制度上も、後述のように技能実習の上位資格として特定技能が位置付けられています。
なお、技能実習制度は廃止が既に決定しており、今後は「育成就労」という新しい制度として2027年4月に施行される予定となっています。
| 項目 | 技能実習(技能実習) | 特定技能 |
| 目的の重心 | 仕事を学ぶ | 即戦力の労働力(人材確保) |
| 期待される能力 | 未経験からの習得 | 日本人の概ね3年目程度の専門能力 |
特定技能の「1号」と「2号」の違い
特定技能には「1号」と「2号」があります。通常は特定技能1号からスタートし、熟練した技能や専門知識を身に付けた者が特定技能2号にランクアップすることができる法設計となっています。特定技能1号には法令上様々な制約が課されていますが、特定技能2号に上がれればそのような制約も緩和されることが多いです。
例えば、特定技能1号では通算で5年間しか日本に在留することはできませんが、特定技能2号では通算期間については無制限になります。したがって、特定技能として働き続ける限りは日本にずっと在留することが可能です。特定技能2号に上がることができれば、将来的に「永住」や「帰化」も視野に入れることができます。
また、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」等の在留資格では認められている配偶者や子の帯同(家族滞在など)について、特定技能1号では限定された場合を除き認められていないため、特定技能1号では家族みんなで日本に住むということは通常難しいです。しかし、特定技能2号ではこのような家族帯同も認められるため、家族一緒に日本で生活することが可能です。
ここで、技能実習1号~3号で5年及び特定技能1号で5年の合計10年の実務経験を積めば、この実務経験に関連する業務に従事する「技術・人文知識・国際業務」に在留資格を変更でき、特定技能2号に上がらなくても日本在留を継続し且つ家族も日本に呼ぶことができるようにも思えます。しかしながら、特定技能制度におけるキャリアアップは特定技能1号から特定技能2号への移行によって行うこととされており、特定技能1号から「技術・人文知識・国際業務」に変更してキャリアアップを図ることは想定されていません。そのため、入管庁としては技能実習や特定技能1号の経歴を「技術・人文知識・国際業務」における実務経験とは取り扱わない運用になっていますので注意が必要です。
なお、林業分野の特定技能はまだ開始されて間もないため、特定技能2号は現状まだ運用されていませんが、他の分野と同様に特定技能2号も順次開始されていくと考えられます。
林業分野での外国人受入れの流れ
●育成就労(2027年4月スタート)
- 日本語試験(A1相当:N5程度)
- 3年間で「特定技能1号」水準への育成を目指す
↓
●特定技能1号(通算最大5年)
- 技能試験 + 日本語試験(A2相当:N4程度)に合格
- 即戦力として現場の主たる業務に従事
↓
●特定技能2号
- 熟練した技能(現場のリーダー級)
- 在留期間の更新制限なし(永住への道)
- 家族の帯同が可能
特定技能1号で外国人を受け入れるための要件
就労する外国人が満たすべき要件
(1)林業の一定の技能水準を有すること
この技能水準を有することが認められるには、一般社団法人林業技能向上センター主催の「林業技能測定試験」に合格する必要があります。この試験は「18歳以上」且つ「労働安全衛⽣法に基づくチェーンソーによる伐⽊等特別教育の要件を満たす講習を受講」している者でないと受験できないため注意が必要です。
また、林業職種の技能実習生なら、技能実習2号を良好に修了していれば、林業技能測定試験に合格していなくてもこの技能水準を有することが認められます。良好に修了したと言えるには、
①技能実習計画に従って技能実習1号と2号を併せて2年10月以上修了
②林業技能検定3級の実技試験に合格
③上記②が不合格の場合は、当該外国⼈の実習中の出勤状況や技能等の修得状況、⽣活態度等から良好修了であると実習実施者が評価した調書
が必要です。
(2)一定の日本語能力水準を有すること
この日本語能力水準が認められるには、「日本語能力試験N4以上」か「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」に合格する必要があります。
また、技能実習生なら、技能実習2号を良好に修了していれば前述の試験に合格していなくても日本語能力水準を有することが認められます。この場合の技能実習は林業以外の職種・作業でも問題ありません。
受入れ企業が満たすべき要件
(1)林業特定技能協議会の構成員になること
林野庁所管の「林業特定技能協議会」に加入する必要があります。特段の問題がなければ加入申請をしてから概ね10営業日程度で加入が認められます。入会費や年会費はかかりません。もっとも、この協議会に加入するには「林業労働⼒の確保の促進に関する法律(労確法)に基づく認定を受けていること」か「森林経営管理法36条2項の公表を受けていること」のどちらかを事前に満たしていなくてはなりません。
労確法に基づく認定は、各都道府県の林業労働⼒確保の促進に関する基本計画の内容に基づいた改善計画を各都道府県に提出して審査されます。森林経営管理法の公表は、都道府県による公募に応募した⺠間事業者のうち、同法36条2項の要件に該当する者として都道府県により決定されます。
(2)特定技能外国人への支援体制が整っていること
受入れ企業は特定技能外国人への下記10項目の支援計画を作成し、それを履行することが法令上義務付けられています。
①事前ガイダンス
②出入国する際の送迎
③住居確保・生活に必要な契約支援
④生活オリエンテーション
⑤公的手続等への同行
⑥日本語学習の機会の提供
⑦相談・苦情への対応
⑧日本人との交流促進
⑨転職支援(人員整理等の場合)
⑩定期的な面談・行政機関への通報
この支援は、受入れ企業が自社で行うことも、外部に委託することもどちらでも可能です。ただし、自社支援を行うためにも様々な要件があり、少なくとも「過去2年間に就労資格の外国⼈の雇用または管理をした実績があること」か「支援責任者または支援担当者として、過去2年間に就労資格の外国⼈の⽣活相談に従事したことのある者を受入れ企業の役職員から選任すること」が自社支援のためには必要です。
自社支援の要件を満たさなかったり、要件を満たしていても内製化できない等であれば、支援を外部に委託することになります。この場合は「登録支援機関」という入管庁に登録されている機関を利用する必要があります。登録支援機関と契約する場合は、自社で支援を行わなくても支援義務を適正に履行したと扱われます。
(3)雇用条件が適正であること
受入れ企業は特定技能外国人を直接雇用する必要があります。派遣契約や業務委託契約で受け入れることはできません。なお、特定技能の活動量を担保する観点から、フルタイムでの雇用が原則です。アルバイトやパートタイムのような働き方は通常認められません。
また、給与については同等レベルの日本人従業員への支給額と同額以上に設定する必要があります。そのため、最低賃金以上であれば問題ないとは必ずしもならないことに注意が必要です。比較対象となる日本人従業員がいない場合は、その地域を管轄ハローワークの求人の平均給与等が入管庁の審査において参照されます。
(4)労働環境が整っていること
多くの規定がありますが、代表的なところでは、
・労働関係法令および社会保険関係法令などの違反がないこと
・就労にあたっての保証金の徴収や違約金等の契約を行っていないこと
・非自発的離職者を発生させていないこと
・行方不明者を発生させていないこと
・一定の刑罰に処された者がいないこと
・暴力団関係法令に違反していないこと
などが挙げられます。
まとめ
特定技能1号外国人の受入れは、他の就労ビザに比べて法令が非常に煩雑で注意する点が多岐にわたり、作成や準備する書類の量も多く、しっかり段取りを組んでビザ申請を進めないと途中で頓挫するリスクがあります。
また、林業分野の特定技能は制度が始まったばかりで情報も少なく、自社の力だけで申請を行うのも非常に大変な分野であると言えます。
行政書士法人タッチは、ビザ申請の専門事務所であり且つ登録支援機関として入管庁に登録もされているため、「複雑な特定技能ビザの申請代行」「申請書類作成・内容チェック」「特定技能外国人への各種支援」「協議会加入のサポート」などがワンストップで可能です。
林業分野での特定技能の受入れを検討されていましたら、まずはお気軽にご相談ください。










