特定技能「農業」とは
農業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れ、農業分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。
特定技能「農業」の受入見込数
農業分野における2023年までの受入れ見込数は、最大36,500人であり、これを受入れの上限として運用されています。
農業分野における雇用労働力は、平成17年に13万人であったものが、平成27年には22万人と、この10年で1.7倍に増加しているほか、平成29年の農業分野の有効求人倍率は1.94倍(農耕作業員1.71倍、養畜作業員2.80倍)となっています。
また、「新たな外国人材の受入れ制度に関する基本的考え方(平成30年9月農業労働力支援協議会)」において、雇用就農者数は現時点で約7万人不足しているとされており、深刻な人手不足の状況にあるといえます。
農業就業者の世代間バランスは、現時点で基幹的農業従事者の68%が65歳以上、49歳以下は11%となっており、これからベテラン農業就業者の退職が相次ぐ影響で、労働従事者の大幅な減少が予想されます。
一方、農業就業者の減少・高齢化を背景として経営規模の拡大や雇用労働力の増加が進展していること等に鑑みると、今後も農業分野で必要となる雇用労働力は増加するものと思われます。
しかし、これらの要因による人手不足が早急に改善できる見通しは立っていません。
農業の持続的な発展を図るためには、農業について基本的な知識・技能を有し、現場の状況に応じて作業手順を自ら考え、自ら栽培管理や飼養管理、収穫・出荷調製等の作業を行うことができる即戦力の外国人を受け入れることで、農業の成長産業化につなげることが、当該分野の基盤を維持し、今後も発展させていくために必要不可欠です。
前述の通り、2023年までに13万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、年1%程度の必要労働者数の効率化(5年で1万1,000人程度)及び追加的な国内人材の確保(2023年までに40歳代以下の農業従事者を8万人程度確保)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるもので、過大な受入れ数とはなっていません。
特定技能「農業」で従事できる業務
(1)主たる業務
特定技能「農業」で従事できる業務は、①耕種農業全般、②畜産農業全般です。それぞれ対応する試験(後述)に合格する必要があります。
①耕種農業は、栽培管理、農産物の集出荷・選別などを指します。なお、実施する業務に栽培管理の業務は必ず含まれている必要があります。
②畜産農業は、飼養管理、畜産物の集出荷・選別などを指します。なお、実施する業務に飼養管理の業務は必ず含まれている必要があります。
(2)関連業務
関連業務に専ら従事することは認められません。ただし、主たる業務をあわせて行う限りにおいて、付随的に従事することは認められます。
特定技能「農業」の関連業務の例としては、
①農畜産物の製造・加工、運搬、販売作業
②冬場の除雪作業
などが挙げられます。
特定技能「農業」で外国人を雇用する条件
(1)外国人が特定技能「農業」の在留資格を取得していること
在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。特定技能「農業」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。
ア技能水準(試験区分)
実施する業務に対応する農業技能測定試験に合格する必要があります。
イ日本語能力水準
①国際交流基金日本語基礎テストまたは②日本語能力試験(N4以上)のどちらかに合格する必要があります。
ウなお、実施する業務に対応する第2号技能実習を良好に修了した者は上記ア・イの試験を免除されます。
(2)フルタイムの雇用であること
必ずフルタイムの雇用である必要があります。
フルタイムであれば、雇用形態は直接雇用・派遣雇用どちらも認められます。
(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること
受入機関一般に課される条件(特定技能条件(受入機関))のほか、特定技能「農業」において特に課される条件は以下の通りです。
労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有すること
(ア)直接雇用の場合受入企業がこの要件を満たす必要があります。「継続して6か月」であることが重要で、短期間の雇用の累積合計が6か月以上あったとしても認められません。
(イ)派遣雇用の場合派遣先がこの要件を満たす必要があります。また、派遣雇用の場合には、継続した6か月以上の雇用経験がなくても、①派遣先責任者講習、②その他労働者派遣法における派遣先の講ずべき措置等の解説が行われる講習を受講した者を派遣先責任者として選任している場合にはこの要件を満たします。
協議会の構成員であること
受入企業は、農林水産省が設置する農業特定技能協議会に加入する必要があります。
特に、農業分野の特定技能外国人を始めて受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入しなければなりません。
協議会に加入せずに特定技能外国人を就労させた場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。
協議会に対し必要な協力を行うこと
受入企業は、上記イの協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。
派遣雇用の場合は派遣先にこの要件が求められます。協議会に対し必要な協力を行わない場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。
登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する場合には、協議会に必要な協力を行う登録機関に委託すること
受入企業が、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関は上記イの協議会に必要な協力をする必要があります。
まとめ
特定技能:農業分野で外国人を雇い入れるためには、
(1)外国人が特定技能「農業」の在留資格を取得していること
(2)フルタイムの雇用(直接・派遣問わない)であること
(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること以上のことが必要です。
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
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