「技人国」の派遣が超厳格化!派遣先への誓約書義務化と5つの変更点を解説
20261月の閣僚会議で決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に基づき、出入国在留管理庁は派遣形態による外国人雇用の審査を抜本的に見直しました。

2026224日に「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」が公表され、202639日の申請分から新ルールが適用されました。

結論から申し上げますと、技人国ビザの審査において「派遣元(派遣会社)」だけでなく「派遣先(受け入れ企業)」の審査・責任がかつてないほど厳格化されます。もはや「派遣会社に任せておけば安心」という時代は終わりました。

本記事では、この新制度による「5つの重大な変更点」と、派遣元・派遣先企業がそれぞれ直ちにとるべき対策について、行政書士法人タッチがわかりやすく解説します。

派遣「技人国」ズバリ何が変わる?【5つの変更点】

今回の運用変更のポイントは、以下の5点に集約されます。

派遣元・派遣先「双方」の誓約書提出が必須に

これまで技人国ビザは、主に派遣元(所属機関)の書類で審査されていましたが、今後は「派遣元」と「派遣先」双方の責任者が署名した【誓約書】の提出が義務付けられました。 特に派遣先企業に対して、「技人国の活動範囲を理解し、絶対に単純労働(現業)をさせない」「入管の調査に協力する」ことを書面で誓約させる非常に重い内容となっています。

申請時点で「派遣先」の確定が必要(待機期間の不可)

これまでは「とりあえず派遣会社でビザを取得・更新し、その後に派遣先を探す」といった運用が事実上できてしまうケースもありました。 しかし今後は、申請の時点で派遣先が確定しており、派遣先での具体的な業務内容が証明できなければ、ビザは許可されません。

在留期間が「派遣契約期間」に連動する

これまでは派遣元との雇用契約が「無期」であれば長期のビザが出やすい傾向にありましたが、今後は「派遣先企業との派遣契約期間」が審査に直結します。 例えば、派遣先との契約が6ヶ月であれば、在留期間もそれに準じた判断(1年や6ヶ月など)になるということです。

入管による派遣先への「直接確認・実地調査」の実施

誓約書にも明記されていますが、入管庁が書類審査だけでなく、派遣先企業に対して電話での直接確認や、抜き打ちでの実地調査(現場立ち入り)を行うことが明確に示されました。「書類上だけ専門職に見せかける」という手口は通用しません。

更新時の提出書類が大幅増加(管理台帳・就業状況報告書)

ビザの更新申請時において、新たに以下の書類提出が求められるようになりました。

  • 派遣元管理台帳
  • 派遣先管理台帳
  • 就業状況報告書

入管庁の意図:事後チェックの徹底

これらの書類を追加した入管庁の意図は、「申請時だけでなく、許可後も本当に適法な業務を行っていたか(労働者派遣法を遵守し、単純労働をさせていないか)」を事後的に厳しくチェックするためです。 「就業状況報告書」によって実際の業務内容を詳細に報告させ、「管理台帳」で派遣の実態(就業日、労働時間、苦情処理等)と照らし合わせることで、申請時の「誓約書」に違反していないかを徹底的に検証します。ここで矛盾や虚偽が発覚すれば、容赦なく更新不許可やビザ取消し、さらには罰則の対象となります。

なぜ今、厳格化されたのか?(制度変更の背景と「黙認」の横行)

そもそもなぜ、派遣先企業をも巻き込むような厳しい措置が取られることになったのでしょうか。

本来、技人国ビザは「大学等で学んだ専門的・技術的な知識を必要とする業務(エンジニア、通訳、マーケティング等)」にのみ従事できる在留資格です。 しかし現実には、派遣という形態を悪用し、書類上は専門職として申請しながら、実際の派遣先では「工場でのライン作業」「倉庫での仕分け」「飲食店での接客・調理」といった単純労働(現業)にフルタイムで従事させる違法就労が後を絶ちませんでした。

その背景には、以下のような派遣元・派遣先双方の問題がありました。

派遣元による身勝手な「拡大解釈」

一部の派遣元企業(派遣会社)は、自社の都合の良いように技人国に該当する業務を極端に拡大解釈してきました。

  • 「少しでも専門業務があればOK」という曲解1日の業務内容の中に、少しでも通訳や翻訳が含まれていれば、残りの時間は工場でのライン作業や飲食店のホール接客などの単純労働(現業)をさせても問題ない」という独自の解釈。
  • 「管理」という言葉の乱用 工場における単なる「ライン作業の進行管理」や、現場での「備品管理」「在庫管理」といった業務を、無理やり「生産管理」や「経営管理」といった高度な専門業務であるかのように偽って申請する手口。

派遣先による「黙認」と責任転嫁

一方で、派遣先企業(受け入れ側)にも問題がありました。実際の現場で外国人が現業を行っていることを把握していながら、「派遣元(プロ)がOKと言っているから」「就労可能なビザを持っているから大丈夫だろう」という理由で、技人国該当性のない業務に就いていることを黙認してしまっていたという経緯があります。

このように、派遣という形態を利用することで「どんな業務をさせているか」の責任の所在が曖昧になりがちな構造がありました。この悪質な構造に根本からメスを入れるため、入管庁は「派遣先にも直接責任を負わせる(誓約書・実地調査)」という強硬手段に踏み切ったのです。

派遣元・派遣先が負うリスクと今後の対策

今回の厳格化により、派遣会社(派遣元)はもちろん、外国人を受け入れる派遣先企業にも極めて重いコンプライアンス上の責任が生じます。それぞれの立場で以下の対策を講じてください。

派遣会社(派遣元)が注意すべきこと

もし派遣先で単純労働をさせていたことが発覚した場合、誓約違反(虚偽申告)として今後の外国人派遣事業が事実上できなくなる(新たなビザ申請が下りなくなる)だけでなく、派遣元企業自体が「不法就労助長罪」に問われる致命的なリスクがあります。

ここがポイント
  • 既存案件の総点検:現在派遣している技人国スタッフの「実際の現場での業務」を直ちに確認し、管理台帳等を整備してください。少しでも現業が含まれている場合は、派遣先と業務内容の再設計を行うか、引き揚げる必要があります。
  • ビジネスモデルの転換(特定技能・人材紹介へのシフト): 現場作業を求めるクライアントに対し、安易に「技人国」で派遣することはもうできません。また、「特定技能」ビザは農業・漁業等の一部例外を除き、原則として派遣が禁止され「直接雇用」のみとなります。 したがって、製造、飲食、宿泊等の現場人材を求めるクライアントに対しては、「人材紹介(職業紹介)」や「登録支援機関としての支援業務」へとビジネスモデルを切り替える必要があります。

受け入れ企業(派遣先)が注意すべきこと

「派遣会社から『少しなら現場作業をさせても大丈夫』『このビザで大丈夫』と言われたから」という言い訳は、誓約書にサインする以上、通用しません。 違法な就労が発覚した場合、派遣元だけでなく派遣先企業も「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。 不法就労助長罪は厳罰化されており、現在は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)」という非常に重い刑事罰が科されます。また、更新が不許可になれば、現場の戦力をある日突然失うことになります。

ここがポイント
  • 「丸投げ」からの脱却:派遣会社から提案される人材の在留資格(ビザの種類)を必ず確認してください。「技人国」であった場合、自社で任せる業務が「本当に大学レベルの専門知識を要する業務か」を社内で厳しく審査してください。
  • 現場責任者への教育徹底:工場長や店長など、現場で直接指示を出す担当者に対し、「この外国人スタッフには現業(ライン作業や配膳など)を手伝わせてはいけない」というルールを徹底してください。

おわりに:派遣による技人国雇用は「丸投げ」できない時代へ

    202639日以降、技人国ビザでの派遣就労は「安易な労働力確保の手段」としては完全に使えなくなります。制度を正しく理解し、適法な運用体制を構築しなければ、企業は刑事罰や事業停止といった大きなダメージを負いかねません。

    行政書士法人タッチでは、派遣元企業様・派遣先企業様双方に対し、以下のサポートを提供しております。

    • 派遣案件の適法性診断(コンプライアンスチェック):現在の派遣契約や実際の業務内容が、新しい入管の審査基準(誓約書の内容)に適合しているかをプロの目線で診断します。
    • 「特定技能」制度への移行サポート:現場業務に従事させたい人材について、特定技能の活用や切り替えをご提案します。
    • 実地調査・監査対応:入管庁からの実地調査や事情聴取に備えた、社内管理体制の構築を支援します。

    新制度の施行は目前です。「うちの派遣の使い方は大丈夫だろうか?」と少しでも不安に思われた経営者様、人事担当者様は、手遅れになる前に、ぜひ一度、行政書士法人タッチへご相談ください。