「技術・人文知識・国際業務」の在留資格における専門士 

専門士とは、専門学校を卒業した人をいいます。より正確には「日本において一定の要件を満たす専修学校の専門課程の23年制の学科を卒業した者に授与される商号」をいいます。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本で活動したい場合に、専門士の留学生は、専攻と日本での活動との間にどれほどの関連性が求められるか問題となります。

求められる関連性の程度

大卒の場合には、日本での活動内容と大学での履修内容との関連性は比較的緩やかに認定されるのが一般的です。

一方、専門士は大卒に比べ、履修内容との関連性についてより厳格に審査される傾向にあります。これは「技能実習」や「特定技能」の在留資格との住み分けを明確にする必要があるためです。

特に、専門学校で学んだ内容が、WordExcel等の一般的なビジネススキルにとどまる場合や、抽象的・漠然・広範な分野である場合は、日本での活動との間に関連性がないと判断されやすいです。

 

また、工業専門課程や商業実務専門課程の専門学校を卒業した専門士の場合は、日本での活動内容と専攻内容・履修内容との関連性の立証が比較的容易ですが、文化教養課程の専門学校の専門士の場合は、その立証が困難である場合が多いです。

専門士の場合の関連性の要素

専門士が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得する上で重要な要素は以下の3点です。

 

(1)専門性が要求される業務が、業務量として十分存在していること

 

専門性が要求される業務よりも多くの時間を別の業務に費やすような場合は関連性が否定される場合があります。

 

(2)専門士が従事する業務が、技能実習生や特定技能外国人が従事する業務を上回る専門性を有すること

 

技能実習や特定技能の在留資格との住み分けの観点から、技能実習生や特定技能外国人よりも高度な専門性を有する業務に従事することが必要です。

 

(3)専攻科目・履修科目の成績が優秀であること

 

申請に係る専門的な活動を安定的かつ継続的に行うことができる能力がなければならないため、専攻科目・履修科目の成績が優秀である必要があります。

具体的事例

1 許可事例

(1)マンガ・アニメーション科においてゲーム理論、CG、プログラミング等を履修した者が、ゲーム開発業務に従事する場合

 

(2)国際コミュニケーション学科においてコミュニケーションスキル、接遇研修、異文化コミュニケーション、キャリアデザイン等を履修した者が、人材サービス系企業における外国人スタッフの接遇教育、管理等のマネジメント業務に従事する場合

 

(3)国際ビジネス学科においてホテル演習、フードサービス論、リテールマーケティング、簿記、ビジネスマナー等を履修した者が、飲食店経営会社の事業開発部においてアルバイトスタッフの採用、教育、入社説明資料の作成の業務に従事する場合

2 不許可事例

(1)国際ビジネス学科において英語科目を中心に履修した者が、不動産の販売営業に従事する場合

 

(2)国際コミュニケーション学科において接遇、異文化コミュニケーション、観光サービス等を履修した者が、飲食店運営企業の店舗管理、商品開発、フランチャイズ開発などの業務に従事する場合

 

()接遇学科においてホテル概論、フロント宿泊、レストランサービス、接遇概論等を履修した者が、エンジニア派遣会社における外国人従業員の監督、指導、労務管理の業務に従事する場合

通訳・翻訳業務

通訳・翻訳の業務は、外国人を雇用する企業が、当該外国人に従事させたい業務として、比較的多く挙げられるものです。

 

しかし、現実に通訳・翻訳をする能力があったとしても、専門学校での勉強内容との間に関連性がなければ、やはり在留資格を取得することはできませんので注意が必要です。

(1)許可事例

・国際ビジネス学科において経営学のほか、ビジネス通訳実務、ビジネス翻訳実務等を履修していた者が、商社の海外事業部における商談の通訳・契約資料の翻訳業務に従事する場合

 

・国際教養学部において卒業単位の3分の1以上を語学やビジネスコミュニケーション系の科目で履修し、日本語能力試験もN1に合格している者が、渉外調整の通訳業務に従事する場合

(2)不許可事例

CADIT学科において一般科目として日本語を履修した者が、通訳・翻訳業務に従事する場合

 

・国際ビジネス学科において日本語を履修したが、当該科目は日本語の基礎能力の向上させる程度にすぎなかった者が、通訳・翻訳業務に従事する場合

湯田 一輝

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数

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