技術・人文知識・国際業務ビザの人文科学分野とは、いわゆる文系の分野のことであり法律学、経済学、経営学、社会学、歴史学、会計学、研究、金融諭などの分野です。これは代表的な分野の例示ですので、入管法の人文科学の分野がこれに限られるわけではありません。技術・人文知識・国際業務ビザで禁じられている単純労働ではない一定水準以上の文科系の分野の活動を広くカバーしているものといえます。ただし、近年は特定技能ビザの参入により以前より専門性が求められる傾向があります。
専門性のレベル(人文科学分野)について
人文科学分野で技術・人文知識・国際業務ビザを取得するには、一定以上の専門性が求められます。これは学術上の専門的知識を必要とする文系の活動のことであって、単に経験を積んだことにより保有している技術や知識では足りず、学問的な知識を要するものでなくてはなりません。つまりアルバイトなどで経験を積んだことによる技術や知識ではなく、学校で学んだ学問的な専門知識が必要になるということです。この学術的な専門知識と勤務先で従事する職務内容と一定の関連性が求められます。例えば、企業の求人広告で「未経験歓迎。すぐに仕事を覚えられます。」というような業務では要件を満たしているとは言えません。
では、実際の場面においてどの程度の学術的な知識と勤務先で従事する職務内容との関連性が求められるのでしょうか。ここからは具体例を出しながら解説していきます。
ホームページ制作の場合
ホームページ制作の場合、学校で情報処理やプログラミングに関する科目を専攻していることが求められます。この学校で学んだことによる学術的な知識を活かして、勤務先でホームページ制作に従事する必要があります。この勤務先で従事するホームページ制作ですが、一般的に普及しているワードプレス等で制作するのではなく、外国人が自らプログラミングを組んでホームページを制作する必要があります。つまりワードプレス等での製作は一般的に普及しているため、学校で専門知識を学んでいなくても扱うことができると判断されます。
会計業務の場合
会計業務の場合、学校で簿記や仕訳等に関する科目を専攻していることが求められます。広く普及している会計ソフトに数字を入力する業務だけでは専門性が認められず、外国人が仕訳等の簿記の専門知識を発揮する業務であることが求められます。
カメラマンの場合
カメラマンの場合、学校で学んだ撮影系の科目を専攻していることが求められます。業務においては、結婚式場のカメラマンや企業のイベントを撮影するカメラマンでは専門性が認められません。一方で、映画制作会社やテレビ制作会社で撮影業務に従事する場合であれば専門性が認められます。
許可/不許可事例について
ここまでは、技術・人文知識・国際業務ビザの専門性のレベル(人文科学分野)と勤務先で従事する業務との関連性について解説してきました。ここからは入国管理局が公開している実際の許可/不許可事例についてご紹介します。
許可事例
(1)マンガ・アニメーション科において,ゲーム理論,CG,プログラミング等を履修した者が,本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき,ゲーム開発業務に従事するもの。
(2)電気工学科を卒業した者が,本邦のTV・光ファイバー通信・コンピューターLAN等の電気通信設備工事等の電気工事の設計・施工を業務内容とする企業との契約に基づき,工事施工図の作成,現場職人の指揮・監督等に従事するもの。
(3)自動車整備科を卒業した者が,本邦の自動車の点検整備・配送・保管を業務内容とする企業との契約に基づき,サービスエンジニアとしてエンジンやブレーキ等自動車の基幹部分の点検・整備・分解等の業務に従事するとともに,自動車検査員としての業務に従事することとなるもの。
不許可事例
(1)情報システム工学科を卒業した者から,本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき,月額25万円の報酬を受けて,コンピューターによる会社の会計管理(売上,仕入,経費等),労務管理,顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが,会計管理及び労務管理については,従業員が12名という会社の規模から,それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと,顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となったもの。
(2)ベンチャービジネス学科を卒業した者から,本邦のバイクの修理・改造,バイク関連の輸出入を業務内容とする企業との契約に基づき,月額19万円の報酬を受けて,バイクの修理・改造に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,フレームの修理やパンクしたタイヤの付け替え等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(3)国際情報ビジネス科を卒業した者から,本邦の中古電子製品の輸出・販売等を業務内容とする企業との契約に基づき,月額18万円の報酬を受けて,電子製品のチェックと修理に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,パソコン等のデータ保存,バックアップの作成,ハードウェアの部品交換等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするもとのは認められず,「技術・人文知識・国際業務」に該当しないため不許可となったもの。
終わりに
大学(短期大学を含む)を卒業している場合は、従事する業務と専攻科目との関連性を緩和して審査され、特段の事情がない限りは、関連性が肯定されます。そのため大学卒業者にあたっては、従事しようとする業務に一定以上の専門性があること、そのような専門性がある業務を遂行するに足りる知識を申請人が実際に有していることが必要です。
この記事の監修者
行政書士法人タッチ 代表行政書士
湯田 一輝
2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数
【運営サイト】
行政書士法人タッチ https://touch.or.jp/
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