特定技能「漁業」とは

 

漁業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れ、漁業分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

特定技能「漁業」の受入見込数

 

漁業分野における2023年までの受入れ見込数は、最大9,000人であり、これを受入れの上限として運用されています。

 

漁業分野における就業者は、平成10年に277,000 人であったものが平成29 年には153,000 人とおおむね半減、雇われ就業者も3年間で約1割減少しているほか、漁業分野の有効求人倍率は、漁船員2.52倍(船員職業安定年報)、水産養殖作業員2.08倍(職業安定業務統計)となっているなど、深刻な人手不足の状況にあります。漁業分野の雇われ就業者の約2割を占める65歳以上の熟練の高齢労働者が順次引退していくことから、毎年1,000人の新規雇われ就業者を維持しても、今後も人手不足の深刻化が見込まれるところ、生産性の向上及び国内人材の確保に向けた最大限の努力を不断に行ったとしてもなお、人手不足の状況を直ちに改善することが困難です。

このため、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害しないよう、在留資格「特定技能」により外国人を受け入れることで、我が国漁業の存続・発展を図り、国民のニーズに応じた水産物を安定的に供給する体制を確保するとともに、国民の将来にわたって、漁業が持つ海洋環境の保全等の多面的な機能が発揮されるよう漁業が健全に営まれることを確保することが必要不可欠です。

 

2023年までに2万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、毎年1%程度(5年間で4,000人程度)の労働効率化及び追加的な国内人材の確保(5年間で7,000人程度)を行ってもなお、不足すると見込まれる数を上限として受け入れるもので、過大な受入れ数とはなっていません。

 

特定技能「漁業」で従事できる業務

 

(1)主たる業務

 

特定技能「漁業」で従事できる業務は、漁業および養殖業です。それぞれ対応する試験(後述)に合格する必要があります。

 

ア 漁業

具体例として以下のようなものが挙げられます。

 

①漁具の操作・補修

②水産動植物の探索

③漁具・漁労機械の操作

④水産動植物の採捕

⑤漁獲物の処理・保蔵

⑥漁業に係る安全衛生の確保業務

 

イ 養殖業

具体例として以下のようなものが挙げられます。

 

①養殖資材の製作・補修・管理

②養殖水産動植物の育成管理

③養殖水産動植物の収穫・処理

④養殖業に係る安全衛生の確保業務

 

(2)関連業務

 

関連業務に専ら従事することは認められません。ただし、主たる業務をあわせて行う限りにおいて、付随的に従事することは認められます。

 

特定技能「漁業」の関連業務の例として以下のようなものが挙げられます。

 

①用具や機械の点検・管理など

②補修作業や清掃作業

③用具や資材などの仕込み・積込み

④炊事・賄い

⑤自家生産物や加工物等の運搬・陳列・販売

⑥市場・港などでの選別・仕分け作業

⑦体験型漁業の際に乗客が行う採捕の補助

 

特定技能「漁業」で外国人を雇用する条件

 

(1)外国人が特定技能 「漁業」の在留資格を取得していること

 

在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。

特定技能「漁業」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。

 

ア 技能水準(試験区分)

 

実施する業務に対応する漁業技能測定試験に合格する必要があります。

なお、漁業に3年以上従事していた者は漁業、養殖業に3年以上従事していた者は養殖業、それぞれの技能測定試験の実技試験を免除されます。

 

イ 日本語能力水準

 

①国際交流基金日本語基礎テストまたは②日本語能力試験(N4以上)のどちらかに合格する必要があります。

 

ウ なお、実施する業務に対応する第2号技能実習を良好に修了した者は上記ア・イの試験を免除されます。

 

(2)フルタイムの雇用であること

 

必ずフルタイムの雇用である必要があります。

フルタイムであれば、雇用形態は直接雇用・派遣雇用どちらも認められます。

(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること

 

受入機関一般に課される条件(リンク:特定技能 条件(受入機関))のほか、特定技能「自動車整備」において特に課される条件は以下の通りです。

 

ア 受入企業の類型に応じた所定の書類を提出していること

 

(ア)農林水産大臣または都道府県知事の許可を得て漁業・養殖業を営んでいる場合

 

①許可証の写し、②免許・指令所の写し、③その他免許を受けていることがわかる公的書類の写しといったものを提出する必要があります。

 

(イ)漁業協同組合に所属して漁業・養殖業を営んでいる場合

 

①漁業協同組合の漁業権の内容である漁業・養殖業を営むことが確認できる書類の写し、②その他漁業協同組合に所属して漁業・養殖業を営んでいることが確認できる書類の写しといったものを提出する必要があります。

 

(ウ)また、漁船を用いて漁業・養殖業を営む場合は①漁船原簿謄本の写し、②漁船登録票の写しのどちらかの提出が必要です。

 

イ 協議会の構成員であること

 

受入企業は、農林水産省が設置する漁業特定技能協議会に加入する必要があります。特に、漁業分野の特定技能外国人を始めて受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入しなければなりません。

 

協議会に加入せずに特定技能外国人を就労させた場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。

 

ウ 協議会において、協議が整った事項への適切な措置を講ずること

 

受入企業は、①特定技能外国人の安全確保、②配乗人数の上限や報告、③特定技能外国人の引き抜き防止などいった事項について適切な措置を講ずる必要があります。

 

エ 協議会に対し必要な協力を行うこと

 

受入企業は、上記イの協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。

派遣雇用の場合は派遣先にこの要件が求められます。

 

協議会に対し必要な協力を行わない場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。

 

オ 登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する場合には、協議会に必要な協力を行う登録機関に委託すること

 

受入企業が、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関は上記イの協議会に必要な協力をする必要があります。

 

まとめ

 

特定技能:漁業分野で外国人を雇い入れるためには、

 

(1)外国人が特定技能「漁業」の在留資格を取得していること

(2)フルタイムの雇用(直接・派遣問わない)であること

(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること

 

以上のことが必要です。

 

湯田 一輝

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

2018年8月 ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立
2022年4月 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」
専門分野:外国人在留資格、帰化申請
外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

【セミナー実績】
国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数

【運営サイト】
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