経営管理ビザで入国するまでの流れ
在留資格「経営・管理」(いわゆる経営管理ビザ)の審査が完了し、条件に適合していると認められれば、在留資格認定証明書(COE=Certificate of Eligibility)が出入国在留管理局から交付されます。
ここまでくれば、あとは在外公館(大使館・領事館)でビザ(査証)の発給を受け、入国するだけです。
しかし、まだ安心はできません。最後の関門である大使館でビザの発給が拒否される可能性があるのです。詳しく説明していきましょう。
在留資格認定証明書とビザの違い
在留資格認定証明書の交付をもって「ビザが下りた」と表現することがありますが、厳密には正しくありません。
ビザ(査証)は大使館や領事館が発給するものであり、在留資格認定証明書とは別のものです。
日本に入国する際に必要なのはビザであり、在留資格認定証明書ではありません。
就職活動にたとえるなら、在留資格認定証明書は「内定通知書」のようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。
在留資格認定証明書の交付は、あくまで「内定が出た」というだけです。出社日までに内定が取り消される可能性もゼロではないのです。
大使館で経営管理ビザ発給されないケースが多発
とはいえ、在留資格認定証明書が交付されたということは、出入国在留管理局の厳しい審査を経て、在留資格該当性があるという「お墨付き」をもらったということ。「これでもうビザ発給は決まったようなものだ」と思うのも当然といえます。
ところが近年、在留資格認定証明書が交付されているにもかかわらず、大使館でビザ発給が受けられないという事例が多発しています。特に中国からの経営管理ビザ申請でこうした事例が増えています。
いったいなぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
経営管理ビザへの視線が厳しくなっている
その背景には、経営管理ビザへの風当たりが年々厳しくなっているという実情があります。
事業を行うつもりがないのに経営管理ビザを悪用して日本に入国するケースがメディアで取り上げられ、広く問題視されるようになりました。
そうした状況を受けて、大使館の審査もより厳格になっています。
経営管理ビザが発給されないのはどんな場合?
そもそも、大使館はどんな基準でビザ発給の可否を決めているでしょうか?
在中国日本大使館の公式サイトで、どのような場合に査証の発給が受けられないのかが公開されています。そのなかのひとつに、次のような項目があります。
- 申請内容が虚偽であった場合
「虚偽の申請内容」にはどういったものが含まれるでしょうか。
もちろん、申請書に記載されている情報に明らかなウソが含まれているのは論外です。しかしそればかりではなく、「記載されている経営活動を実際には行わない」ということも虚偽申請に含まれます。
実際には経営活動を行わない「名ばかり経営者」が、日本に入国したいがためにビザを申請しているのではないか?……大使館員は常にそんな疑いを持って審査をしています。
したがって、大使館員から申請人に照会があった場合は、申請内容が虚偽ではないことを明確に示すことが求められます。
具体的に注意すべき点については、後ほど詳しく解説します。
経営管理ビザの大使館審査とは?基本的な流れ
次に大使館のビザ発給の流れを説明しましょう。
代理申請機関を通じてビザ申請を行う
ビザ申請の手続きは国や地域によっても異なりますが、中国で申請する場合は代理申請機関を通じて書類を提出し、ビザ申請します。
代理申請機関とは、申請人に代わって申請を行う機関のことです。日本大使館の公式サイトで指定代理申請機関のリストが公開されています。
経営管理ビザ申請の提出書類
ビザ申請の提出書類は以下の通りです。
- 査証申請書
- 旅券
- 戸口簿写し
- 居住証等の居住証明書(管轄地域内に本籍を有しない場合のみ)
- 在留資格認定証明書の写し
- 最新の決算書
- 銀行口座の取引明細
- 登記簿謄本
ビザ発給には4業務日かかる
原則として申請日の翌日から4業務日でビザが発給されますが、場合によってはさらに時間がかかることもあります。
申請内容に疑義があるとみられた場合は、審査が数週間におよぶこともあります。
大使館の電話面接では何を聞かれる?
審査期間中に、大使館員から申請人に電話がかかってくることがあります。この電話面接にどう対応するかが、ビザ発給の可否を左右する重要なポイントになります。
先ほど述べたように、「申請内容が虚偽であった場合」にはビザが発給されないおそれがあります。
電話面接では、この点に注意して応答する必要があります。「いま話していることが申請内容と矛盾していないか」ということを常に意識して質問に答えましょう。
経営計画についての質問対策
特にカギとなるのは、事業計画についてです。
電話面接では、出入国在留管理局に提出した事業計画書の内容を問われることがあります。このとき、「申請人が事業計画書の内容をよく知らない」などということはあってはなりません。
事業計画書の作成を行政書士などのプロに依頼したとしても、事業を実際に行うのは申請人自身です。本人が事業計画を理解していないのでは話になりません。
次のような基本的な情報について、記憶違いなどで間違ったことを言わないように、くれぐれも注意してください。
- 自身の経歴
- 取り扱う商品の概要
- 取引先(商品の仕入先/販売先)の概要
- 取引先と結んだ合意書の内容
- マーケティング戦略
ビザ申請の前には事業計画書を何度も見直し、大使館員からのどんな質問にも答えられるようにしておきましょう。
収支計画書も見直しておこう
また、収支計画も重要です。収支計画書は、申請人が安定的に経営を続けられるかどうかを判断する材料となる重要書類だからです。
もし収支計画についてぼんやりとした理解しかしていなければ、経営者として不適格とみなされても仕方ありません。
収支計画書の内容をあらためて見直し、商品の単価、仕入れ原価、月間/年間の売上見込、賃料、人件費、経常利益率などの数字をしっかり頭に入れておきましょう。
資金調達についても聞かれる可能性あり
もうひとつ大事なのが資金調達です。
申請書類には、申請人が資本金をどのように調達したかについても説明されています。もし書類に記載されている内容と、申請人本人の説明に食い違いがあれば、申請内容が虚偽であったことになり、ビザが発給されないおそれがあります。
もちろん、申請書類が事実通りに書かれていれば、そうしたことは起こりえません。とはいえ、申請人の記憶違いなどで誤った情報を伝えることがないように注意してください。
まとめ:申請書類を事前によく確認しよう
ここまで、大使館の電話面接で注意すべきポイントをみてきました。
いずれにしても大切なのは、申請書類の内容を事前によく確認しておくことです。
申請書類はすでに出入国在留管理局のチェックを経ているので、内容そのものは申し分ないはずです。しかし、申請人が申請内容をしっかり理解していなければ、「申請書類に書かれていることは、はたして事実なのか?」という疑いが生まれてしまいます。
そうした疑いを招くことのないよう、申請人本人が申請書類の内容を理解し、要点を自分の言葉で説明できることが何より重要です。
経営管理ビザが発給されなかった場合
残念ながらビザの発給が大使館に拒否されてしまった場合は、どうなるのでしょうか。
6か月間は同じ目的のビザ申請ができない
原則として、発給拒否から6か月間は同じ目的のビザ申請はできません。したがって、少なくとも6か月間は間隔を空ける必要があります。
また、6か月経ったとしても、拒否された理由が改善されていなければ、再び発給拒否されるおそれがあります。
ビザ発給拒否の理由は公表されない
大使館は、ビザ発給を拒否した理由を公表しません。大使館に問い合わせをしても教えてくれることはありません。したがって、拒否された本当の理由はわからず、推測するしかないのが実情です。
以上のように、実際にビザ発給が拒否された場合に取れる手段はほとんどありません。考えうる懸念点をできる限り払拭して、6か月後に再び申請をするほかはないでしょう。
ビザ発給拒否という事態をできるだけ避けるため、この記事で解説したポイントに十分注意してビザ申請を行ってください。
経営管理ビザの手続きは、行政書士までご相談ください
在留資格「経営管理」(経営管理ビザ)の認定証明書交付申請にあたっては、しっかり審査のポイントを押さえて申請することが重要です。
申請や会社設立手続きについてご不安な点があれば、まずは専門性の高い行政書士にご相談することを推奨いたします。