はじめに:経営管理ビザの資本金要件が3,000万円へ
2025年10月16日、在留資格「経営・管理」の要件が大幅に厳格化され、事業規模を証明するための出資金(資本金)が、これまでの500万円から3,000万円へと引き上げられました。
「3,000万円を用意すれば、それでビザが取れるのか?」というご質問をよくいただきますが、答えは「No」です。入国管理局の審査では、そのお金の出所(でどころ)、つまり「どのようにして3,000万円という大金を形成したのか」が、これまで以上に厳しく問われます。
この記事では、出資金3,000万円の形成過程を証明するための具体的な方法と、それぞれのケースにおける注意点を、専門家の視点から詳しく解説します。
ケース1:ご自身の収入から貯蓄した場合 (自分で貯めた)
最も正攻法と言えるのが、ご自身の収入から貯蓄した資金を充てるケースです。
証明のポイントは、給与所得などから長期間にわたってコツコツ貯蓄したことを示すために、3,000万円が貯まるまでの過程が明確にわかる預金通帳の写しを提出することです。日本国内の口座だけでなく、母国の口座の取引履歴も必要になる場合があります。
ただし、金額が3,000万円と非常に大きいため、審査は格段に慎重になります。
単に通帳を提出するだけでは不十分で、給与収入に対して貯蓄額があまりに大きい場合や、短期間に不自然な大金(数百万円単位)が入金されている場合は、「見せ金(みせがね)」を強く疑われます。
その際は、その資金の具体的な出所(例:不動産の売却、退職金など)について、契約書などの客観的な資料を添えて、詳細に説明する必要があります。
相当な高収入を長期間得ていたことを、給与明細や納税証明書などで裏付けることが重要です。
ケース2:親族などから贈与を受けた場合 (貰った)
ご両親など、親族から事業資金の援助として、贈与を受けるケースです。
この場合、以下の3つの書類が重要になります。
- 贈与者との関係を証明する書類: 親子であれば出生証明書など、関係性が客観的にわかる公的書類。
- 贈与者の資力証明: (ここが最重要) 3,000万円を贈与できるだけの資産(預金残高証明書、不動産の評価証明書、確定申告書など)を贈与者が持っていることの証明。
- 贈与契約書: 誰が、誰に、いつ、いくらを、何の目的で贈与したかを明記した契約書。
3,000万円もの贈与は、客観的に見て極めて大きな資金移動であるため、「なぜこのタイミングで、これほどの大金を贈与したのか」という経緯や理由を合理的に説明できなければなりません。
また、日本国内で贈与を受ける場合、高額な贈与税が課税される可能性がありますので、必ず事前に税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。
ケース3:金融機関などから融資を受けた場合 (借りた)
銀行や政策金融公庫、あるいは個人から事業資金として融資を受けるケースです。
金融機関からの融資であれば、金銭消費貸借契約書(融資契約書)が最も重要な証明資料となります。事業計画の実現可能性が認められ、金融機関から3,000万円もの融資を受けられたという事実は、事業の信頼性を高める上で非常に有利に働きます。
一方、親族や友人など個人から借りる場合も、必ず金銭消費貸借契約書を作成してください。
さらに、単なる契約書だけでは不十分で、貸主が3,000万円を貸せるだけの資力を持っていることを証明する資料(預金通帳の写しなど)の提出を求められる可能性が非常に高いです。もし貸主の資力証明ができないと、その借入自体の信憑性が疑われるため注意が必要です。
【新設】要件達成が難しい場合の新しい選択肢
「いきなり3,000万円を用意するのは難しい」という方も少なくないでしょう。
今回の法改正では、そうしたケースを想定した新しいルートも整備されつつあります。それが「スタートアップビザ」の活用です。
まずはスタートアップビザで日本での活動実績を作り、その後「経営・管理」ビザへ移行するという方法も考えられます。
まとめ:3,000万円の「背景」まで見られています
経営管理ビザの申請において、資本金の審査は申請時だけで終わりではありません。申請後、入管から最新の口座残高の提出を求められることもあります。申請のためだけに一時的に用意した「見せ金」は、確実に見抜かれると考えてください。
今回の改正で、入国管理局は「単にお金を持っている投資家」ではなく、「信頼できる背景を持ち、日本で真剣に事業を行う経営者」を求めているという姿勢がより鮮明になりました。
3,000万円という金額はもちろんですが、それ以上に「そのお金を動かせるだけの正当な背景と信頼性」を、客観的な資料に基づいて証明することが、許可を得るための最も重要な鍵となります。
ご自身のケースでどのような書類が必要か、少しでも不安な点がございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
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