不動産事業で経営管理ビザはとれる?
近年、「不動産事業で経営管理ビザを取りたい」という外国人が増えています。特に中国人の方の間で、このニーズが高まっています。
日本の不動産は、外国人であっても原則自由に購入できます。中国人にとって非常に魅力的な投資の対象といえます。
また、在留資格「経営管理」(以下、経営管理ビザと呼びます)は、日本で事業の経営・管理をする外国人に対して許可されます。そのため、「日本の不動産に投資する」→「日本で事業をするのだから、経営管理ビザが取れる」と考える方か多いのでしょう。
実際、不動産事業で経営管理ビザを取得することは可能です。しかし、不動産投資をすれば誰でも簡単に経営管理ビザが取れるというわけではありません。
経営管理ビザ取得の要件や注意点を詳しく見ていきましょう。
経営管理ビザの取得要件
経営管理ビザを取得するには以下の3つの要件を満たす必要があります。
①事業所の確保
日本国内に独立した事務所を持っている必要があります。レンタルオフィスでも構いませんが、独立した個室スペースが確保されている必要があります。また、賃貸物件の場合は使用目的が「住居用」ではなく「事業用」でなければなりません。
自宅兼用の事務所は原則として不可ですが、一戸建てで事務所スペースと住居スペースが明確に区分けされているなど、いくつかの条件をクリアすれば許可される可能性があります。
➁事業の継続性・安定性
事業に継続性・安定性があることが求められます。継続性・安定性は主に事業計画書の内容によって判断されるため、事業計画書は審査上、非常に重要な書類になります。
事業計画書については、後ほど詳しく解説します。
➂一定の事業規模
3つめの要件は、事業規模が一定以上であることです。具体的には、出資金の額が500万円以上であるか、もしくは常勤の職員が2人以上従事していることが求められます。
ただし、この後で詳しく解説しますが、不動産事業で経営管理ビザを取得する場合、初期費用として必要な金額は500万円を大幅に上回ることになります。この点には特に注意が必要です。
これらの要件を全て満たすには、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
不動産事業を行う上での注意点
不動産事業での経営管理ビザ取得にあたって、特に重要なポイントとなるのが事業規模です。
経営管理ビザを取得するにはその会社が行おうとしている事業が一定以上の規模である必要があります。小さすぎるビジネスでは経営管理ビザが下りません。
経営管理ビザで要求される事業規模とは?
具体的にはどの程度の事業規模が求められるのでしょうか。
たとえば、社員は代表取締役1人、役員報酬は年間300万円という会社を考えてみます。もし事業収益が年間300万円以下であれば、代表取締役の役員報酬すらまかなえず、会社は赤字になってしまいます。
さらに、事業運営には物件の維持管理費、固定資産税、事務所の賃料、社会保険料などさまざまな経費がかかります。会社を継続的・安定的に運営するには、これら諸経費を差し引いても赤字にならないだけの収益を上げる必要があります。
必要経費の総額を仮に400万円としましょう。利回りが年4%とすると、賃料収入で400万円を得るには1億円相当の物件を購入しなければなりません。
つまり、不動産事業で経営管理ビザを取得するには、少なくとも1億円規模の不動産購入が必要になるということです。これだけの初期投資をできる資力があることが、不動産事業での経営管理ビザ取得の条件のひとつになります。
ほかのビジネスとの組み合わせも検討すべき
不動産賃貸だけでは安定した事業収入が見込めないような場合は、他の事業と組み合わせることも検討しましょう。たとえば民泊です。民泊についてはこの記事で詳しく解説しています。
その他の注意点①収益不動産の購入
先に「少なくとも1億円規模の不動産購入が必要になる」と述べましたが、利回りの高い物件であれば、初期投資額をもっと低く抑えられる可能性もあります。重要なのはその不動産にどれだけの収益性があるかです。
これは裏を返せば、いくら高額の物件を購入したとしても、収益性が低ければ事業として成立しないということでもあります。経営管理ビザの取得を考えている場合は、不動産の資産価値よりも収益性に着目してください。
その他の注意点②適切な役員報酬の設定
「経費をできる限り削減したいから、役員報酬を低くしよう」とつい考えたくなりますが、その発想は要注意です。あまりに役員報酬が低いと経営者の生計が成り立っていないと判断され、ビザが下りにくくなります。
役員報酬は月額25万円(年額300万円)以上に設定するのがビザ申請上は望ましいと考えられます。
その他の注意点➂本人が実質的に経営をする
経営管理ビザを取得できるのは、事業の経営に実質的に参加する人に限られます。つまり、ただ単に不動産のオーナーであるだけでは、経営管理ビザの要件を満たしていないのです。誰かに経営を任せるのではなく、本人が直接、事業を経営しなければなりません。
その他の注意点④管理業務の外部委託
経営管理ビザを取得する人は、会社の経営に専念することが求められます。
所有する物件の清掃や設備の補修、警備などの管理業務を経営者本人が行うことはできません。こうした業務を経営者本人が行うと、資格外活動(現に有している在留資格に属さない収入を伴う事業を運営する活動)をしていると見なされ、ビザ更新時に不許可の原因になります。外部の業者に委託するか、従業員を雇う必要があります。
これらの経費を織り込んでも収益が十分に上がるよう、事前にしっかりとした収支計画を立てなければなりません。
その他の注意点⑤免許や許認可が必要な業務の確認
不動産の売買や仲介を事業として行う際には、宅地建物取引業免許の取得が必要になります。免許が必要な業務をうっかり無免許で行わないように注意してください。
また、民泊などの事業を検討している場合も、旅館業法、住宅宿泊事業法など関連する法令を事前に確認し、必要な許可を得ておく必要があります。
不動産投資における事業計画書の作成
ここまで、不動産事業で経営管理ビザを申請する際の注意点について見てきました。「意外とハードルが高い」という感想を持たれた方も多いのではないでしょうか?
ビザ申請の審査にあたって重視されるのが事業計画書です。不動産事業の場合、とりわけ収支計画が重要になります。
ただ単に不動産を持っているだけでは、事業を経営しているとはいえません。「所有する物件からどれだけの収入があるのか」「必要経費を支出してもきちんと黒字になるのか」といったことを数字で示していく必要があります。
説得力のある収支計画を立てることができれば、事業の継続性・安定性を証明でき、経営管理ビザが許可される可能性は高まるでしょう。
経営管理ビザ取得は、行政書士までご相談ください
経営管理ビザの申請にあたっては、しっかり審査のポイントを押さえて申請することが重要です。特に事業計画書については、出入国管理局を納得させるだけの説得力のあるものを用意しなければなりません。また、定款の作成も外国人にとっては非常に難易度が高いと思われます。
ビザ申請や会社設立手続きについてご不安な点があれば、まずは専門性の高い行政書士にご相談することを推奨いたします。