経営管理ビザの更新は、他の在留資格に比べて難易度が高いと言われていますが、できないわけではありません。経営管理ビザ更新のための要件や流れ。3年の経営管理ビザ取得のためのポイントについて、専門家である行政書士が解説します。
経営管理ビザの更新申請とは
経営管理ビザは、事業の経営・管理業務に従事する外国人のための在留資格で、正式には、在留資格「経営・管理」のことです。
経営管理ビザの更新では、事業の経営・管理に実質的に関与しているかどうか、事業所の要件、事業の継続性の要件を満たしているかどうかといった点について、初回の申請時と同様の厳格な審査が行われるため、他の在留資格に比べても、更新時の難易度が高いとされています。
その外国人が関与する事業が安定した経営を維持し、日本経済へ貢献しているか、雇用創出につながっているかといった点を特に重視しており、経営が赤字状態にある場合や法令違反が確認されるような場合は、経営管理ビザの更新が不許可となってしまうこともあります。
経営管理ビザの在留期間は原則1年
経営管理ビザの在留期間は、5年、3年、1年、6月、4月、3月のいずれかです。
いずれの期間になるかは、申請書に記載する就労予定期間や希望する在留期間、さらに、その外国人が経営に関与する事業規模や安定性などを総合的に考慮したうえで、入国管理局が審査を行って決定します。
5年、3年といった長期の在留期間での更新を希望される方も多いと思いますが、3年の在留期間が認められるためのハードルは高く、一般的には、1年となるケースが多いです。
経営管理ビザの更新で重視されること
経営管理ビザの更新で重視されることは、その外国人が経営に関与する事業の安定性や継続性です。
貸借対照表、損益計算書と言った決算書類が特に重視され、2期連続して売上総利益が計上されていなかったり、債務超過の状態が継続している場合は、事業の継続性がないと判断されて、経営管理ビザの更新が不許可となることもあります。
ただ、会社設立後の1期目は、最終決算が赤字となるケースは珍しくないため、単年度で赤字だからという理由で更新できなくなることはありません。
入国管理局は、単に数字だけを見ているわけではなく、経営者である外国人の経歴、日本の在留状況、会社の規模、経営内容などを総合的に判断して、更新の可否を決定しています。
決算書類の数字が芳しくない場合でも、その他の書類によって、挽回することは可能です。
経営管理ビザ更新のための要件
経営管理ビザ更新時は、新規の申請時とほぼ同様の要件を満たしていることが求められます。
事業所の確保要件を満たしていること
事業を営むための事業所が日本国内にあるかどうかということです。新規の申請時から、事業所を移転していない場合は特に問題はありませんが、事業所の移転等を行っている場合は、新たな事業所が要件を満たしているかどうかが改めて審査されます。
事業規模の要件を満たしていること
その外国人以外に日本に居住する2人以上の常勤の職員が従事していること又は、資本金の額又は出資の総額が500万円以上であることといった要件を維持している必要があります。
事業の継続性の要件を満たしていること
事業の継続性の要件は、主に貸借対照表、損益計算書と言った決算書類から判断します。
赤字決算になっていないことが理想ですが、入国管理局は単年度の決算状況だけを見ているわけではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断しており、特に、直近2期の決算状況について、次の観点から審査しています。
直近期又は直近期前期において売上総利益がある場合
直近期末において欠損金がない | 事業の継続性に問題なし |
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直近期末において欠損金があるが直近期末において債務超過となっていない | 事業計画書及び予想収益を示した資料が必要 |
直近期末において欠損金があり債務超過であるが直近期前期末では債務超過となっていない | 中小企業診断士や公認会計士等が改善の見通しにつき評価した書面の提出が必要 |
直近期末において欠損金があり直近期末及び直近期前期末ともに債務超過 | 事業の継続性は認められない。(独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等を展開する新興企業は例外措置もあり) |
直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合
原則として事業の継続性がないと判断されます。ただし、独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等を展開する新興企業は例外措置もあります。
法令遵守義務や納税義務を果たしていること
他の在留資格の更新の場合と同様に、日本の法令を遵守していることや所得税等の税金を滞納していないことが求められます。
また、経営する会社に関して、法人税等の納税や労働保険や厚生年金、健康保険の加入義務及び、保険料の納付義務を怠っていないことも要件になります。
3年の経営管理ビザ取得のためのポイント
経営管理ビザの更新時に在留期間が3年になれば、永住許可申請の足がかりとなります。
しかし、経営管理ビザは、他の在留資格と異なり、更新回数が多ければ自動的に在留期間が延長されるという扱いにはなっていません。
3年の経営管理ビザ取得の要件
経営管理ビザの更新時に在留期間を3年にするためには、次の要件を満たす必要があります。
- 入管法上の届出義務を履行していること
- 子どもに義務教育を受けさせていること(学齢期の子どもがいる場合)
- 在留予定期間が1年以上であること
- 経営する会社がカテゴリー3以上であること
- 経営する会社の経営状況が安定していると認められること
経営する会社がカテゴリー3以上とは?
在留資格「経営・管理」の申請では、会社の規模や業績により審査内容が異なります。
優良な順から「カテゴリー1」から「カテゴリー4」までの4つのカテゴリーに分類されており、「カテゴリー1」ならば、審査に必要な書類が少なくて済むということです。
- 「カテゴリー1」は、日本の証券取引所に上場している企業や、厚生労働省から、くるみん認定企業、えるぼし認定企業の認定を受けている等の公的に優良と認められている企業が該当します。
- 「カテゴリー2」は、前年分の源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業
- 「カテゴリー3」は、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した企業
- 「カテゴリー4」はそれ以外の企業です。
会社を1年以上順調に経営していれば、「カテゴリー3」になります。
「カテゴリー3」は最低ラインなので、「カテゴリー2」を目指すべきです。
経営する会社の経営状況の安定性について
経営する会社の経営状況が安定しているかどうかは、在留期間を3年にするための重要なポイントです。
具体的には、
- 直近2年間で、十分な売上があり、欠損金や債務超過がないこと。
- 従業員を雇用していること。
これらの2点が特に重視されます。
売上については、事業規模にもよりますが、1000万円を超えているかどうかが一つの目安になります。
また、経営管理ビザ申請者が十分な役員報酬を得ているかどうかもポイントです。
従業員を雇用しているかどうかも雇用創出に寄与しているかどうかの観点から重要になります。
ただ、従業員を雇用せず、一人株式会社でも安定して十分な業績を挙げているケースもあります。このような場合は、優良な取引先を有していること等を示すことができれば、在留期間3年への道が見えてきます。
経営管理ビザ更新までに準備すること
経営管理ビザ更新のためには、様々な書類を用意する必要があります。
必要となる書類は、経営する会社のカテゴリーごとに異なります。
「カテゴリー3」の場合は、おおむね次のような書類が必要になります。
- 在留期間更新許可申請書
- 3ヶ月以内に撮影した写真
- 直近期末の決算書の写し
- 会社の納税証明書
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 会社名義である銀行口座通帳のコピー
- 申請者個人の納税証明書
その他、会社の経営のために営業許認可が必要になった場合は、必要な営業許認可を取得しておく必要があります。
会社や申請者個人について、変更内容があり、届出等をすべき場合は、期限までに届出を済ませておくことも忘れないようにしましょう。
経営管理ビザ取得は当事務所までご相談ください
経営管理ビザの更新は、入国管理局に指示された書類を提出すれば、必ず、更新の許可が出るというものではありません。
提出する書類については、一度専門家が目を通し、審査の際に引っ掛かりそうな点がある場合は、追加の資料を用意する必要があります。
また、会社の経営に携わる方が、1年ごとに経営管理ビザの更新を受けるのは時間的にもコスト面でも大きなロスになります。
5年、3年と言った在留期間での更新を目指すためには、経営管理ビザに詳しい行政書士のサポートが必須です。
行政書士法人タッチでは、無料相談にてお客様一人一人のご状況を伺い、経営管理ビザ取得に向けて最適な方法を選択させて頂きます。