当事務所はビザ関係を専門としていますが、経営・管理ビザを取得したいと相談に来る外国人の方からは、「経営・管理ビザを取得する上で事業の経営・事業の管理についての実務経験は必要ですか?」という質問をよく頂きます。
このページでは、経営・管理ビザを取得する際の実務経験の必要性について解説してゆきます。
目次
経営管理ビザにおける「事業の経営」と「事業の管理」
経営・管理ビザは、主に事業の運営等の活動をするために日本に在留する外国人が取得するビザを言います。
より正確には、経営・管理ビザを取得するための活動は「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」に対して認められます。
ここで、「事業の経営」または「事業の管理」どちらに従事するかで、経営管理ビザ取得に実務経験が必要かどうかが決まります。
事業の経営とは
「事業の経営」とは、代表取締役やその他の役員として事業を運営することを言います。
具体例としては
- 日本で自ら出資して会社を設立し、代表取締役として従事する
- 外国企業の日本法人の代表取締役として従事する
といった活動が挙げられます。
事業の管理とは
「事業の管理」とは、部長、支店長、工場長などのように会社の部門を統括する職員として、その部門の事業を管理することを言います。
具体例としては
- 外国企業の日本支店の支店長として従事する
- 日本の外資系企業の管理業務に従事する
といった活動が挙げられます。
「事業の経営」の場合の実務経験
日本で行おうとする活動が「事業の経営」の場合は実務経験は必要ありません。
例えば、留学ビザで日本の大学に通っている外国人が、大学卒業後に会社を立ち上げて経営・管理ビザに変更するということも可能です。
なお、実務経験は法律上は要求されませんが、もし実務経験を持っていれば、審査上は有利に働きます。なぜなら、申請人が経営・管理ビザを申請する理由や事業の安定・継続性を強く基礎づけることができるためです。
申請人が高齢の場合には、今まで実務経験がないのに突然日本で起業するのは不自然であることや、事業が安定・継続的に行われるか疑問に思われることから、入管から実務経験を立証する資料の提出を求められる場合があります。
目安としては、申請人の年齢が60歳以上の場合には実務経験が必要になるケースが多いです。
また、既存会社の役員に就任するなど、申請人が会社への出資を行っていない場合にも、実務経験の立証を入管から求められる場合があるので注意が必要です。
「事業の管理」の場合の実務経験
日本で行おうとする活動が「事業の管理」の場合は、事業の経営または管理について3年以上の実務経験が必要です。
この「3年以上の実務経験」には大学院の経営・管理に係る科目を専攻した期間も含めることができます。
例えば、本国での実務経験1年+MBA大学院2年というような場合でも「3年以上の実務経験」の要件を満たすことができます。
なお、経営・管理に係る科目を専攻した期間は大学院に限定されますので、大学のものは含めることができない点に注意してください。
実務経験の必要性のまとめ
「事業の経営」の場合
- 自分で出資かつ60歳未満⇒実務経験不要
- 60歳以上⇒実務経験必要
- 自分で出資していない⇒実務経験必要
「事業の管理」の場合
3年以上の実務経験が必要です。
※大学院の経営・管理に係る科目を専攻した期間を含めることも可
おわりに
このページでは経営・管理ビザを取得する際の実務経験の必要性について解説しました。
経営・管理ビザは一般的に取得が難しいと言えるビザです。
自分は実務経験が必要か、必要だとして立証資料としてはどのようなものを提出すればよいか、といったことについて適切に判断するために、一度経験豊富な専門家へ相談することをおすすめします。