特定技能外国人の雇用を検討する際、または既に雇用している企業様にとって、最大の経営課題の一つが「支援業務をどうするか(誰がやるか)」という問題です。
毎月のランニングコストがかかる「登録支援機関への委託」を続けるべきか、それともコスト削減とノウハウ蓄積を目指して「自社支援(企業単独型)」に切り替えるべきか。 特に、2027年(令和9年)には新制度「育成就労」の開始も予定されており、外国人材の受入れ環境は大きな転換期を迎えています 。
本記事では、特定技能制度に精通した行政書士法人タッチが、特定技能制度における「登録支援機関への委託」と「自社支援(企業単独型)」の違い、コスト比較、そして自社支援へ切り替えるための条件について徹底解説します。
目次
1. 特定技能の「企業単独型」とは? 登録支援機関との違い
特定技能外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)には、入管法に基づき、外国人の職業生活・日常生活・社会生活上の「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、実施する法的義務があります。
この支援の実施方法には、大きく分けて2つのパターンがあります。
① 登録支援機関に委託する(外部委託型)
支援計画の作成や実施の全部を、国の登録を受けた「登録支援機関」に委託する方法です。
法改正により、1号特定技能外国人の支援を委託する場合の委託先は「登録支援機関」に限られることとなりますが、これは「委託するなら登録支援機関へ」という意味であり、要件を満たした企業が自社で支援することを禁止するものではありません 。
- 特徴: 専門的な手続きや多言語対応をアウトソーシングできるため、社内リソースを割かずに済む。
- コスト目安: 外国人1名あたり月額2万円〜3万円程度が相場。
② 企業単独型で受け入れる(自社支援型)
支援計画の作成から実施までを、すべて自社で行う方法です。 要件さえ満たせば外部に委託する必要がなく、委託コストをゼロにできます。
- 特徴: コスト削減と社内ノウハウの蓄積が可能。
- コスト: 外部委託費は0円(ただし、社内担当者の人件費や通訳ツール等の実費は必要)。
「登録支援機関への委託」と「企業単独型」の割合は?
制度開始当初は、ノウハウ不足や手続きの煩雑さを懸念し、約8割以上の企業が「登録支援機関への委託」を選択していました。一方、「企業単独型(自社支援)」での実施は約2割以下に留まっています。
しかし、近年では以下のような理由から、途中から「自社支援」に切り替える企業が増加傾向にあります。
- 受入れ人数が増え、毎月の委託料負担が年間数百万円規模になり、経営を圧迫してきた。
- 特定技能外国人が社内に定着し、日本人社員とのコミュニケーションも円滑になったため、外部の手を借りる必要性が薄れた。
- 2027年の「育成就労制度」開始を見据え、社内に外国人材育成のノウハウを貯めたいと考えるようになった 。
具体的に何をする? 義務付けられている「10の支援項目」
「自社支援に切り替えたいが、何をするのか分からない」という担当者様のために、実施しなければならない主な支援業務を整理しました。これらを自社でこなせるかが、切り替えの判断基準となります。
- 事前ガイダンス: 雇用契約締結後、入国前に労働条件や活動内容を説明する。
- 出入国時の送迎: 空港と事業所(または住居)の間の送迎を行う。
- 住居確保・生活契約支援: 社宅の提供や賃貸契約の保証人対応、銀行口座開設、携帯電話契約、ライフラインの契約手続きを補助する。
- 生活オリエンテーション: 日本のルールやマナー、交通機関の利用方法、緊急時の連絡先などを教える。
- 公的手続きへの同行: 住民登録や納税、社会保険の手続きに同行し、補助する。
- 日本語学習の機会提供: 日本語教室の案内や、学習教材の情報提供を行う。
- 相談・苦情への対応: 職場や生活上の悩みについて、外国人が十分理解できる言語で相談に応じる。
- 日本人との交流促進: 地域のお祭りや自治会への参加をサポートし、孤立を防ぐ。
- 転職支援(会社都合の場合): 人員整理などで解雇する場合、次の就職先を探す手伝いをする。
- 定期的な面談・行政への報告: 3ヶ月に1回以上、支援責任者等が面談を行い、その結果を入管へ報告する(四半期報告)。
これらを「社内の総務担当者」と「通訳スタッフ(または翻訳ツール)」で対応できるのであれば、自社支援への切り替えは十分に可能です。
登録支援機関から「企業単独型」に切り替える3つのメリット
厳しい要件をクリアしてでも、企業単独型(自社支援)に切り替えるメリットは、単なる「節約」以上の価値があります。
メリット1:年間数百万円規模のコスト削減
最も大きなメリットはコストです。具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。
- 登録支援機関へ委託: 月額30万円 × 12ヶ月 = 年間360万円
- 自社支援(企業単独型): 外部委託費 0円
年間360万円の削減は、中小企業にとって非常に大きなインパクトです。浮いた資金を外国人の賃金アップ(待遇改善)や日本人社員への語学手当に充てることで、会社全体の満足度と定着率を向上させることができます。
メリット2:社内ノウハウの蓄積と組織力強化
外部に丸投げしていると、社内に「外国人材マネジメント」のノウハウが蓄積されません。 自社で支援を行うことで、社員が異文化理解を深め、トラブル対応力も身につきます。
これは、将来的に外国人リーダー(特定技能2号等)を育成する際や、組織の多様性を高める上で貴重な資産となります。
メリット3:トラブルへの迅速対応と信頼関係の構築
「夜中に熱が出た」「アパートの水漏れ」などの生活トラブルに対し、外部機関を経由すると対応にタイムラグが生じがちです。
自社社員が即座に対応することで、外国人従業員からの信頼は格段に上がります。この信頼関係こそが、失踪や離職を防ぐ最強の対策となります。
企業単独型(自社支援)で受け入れるための条件
「コストを削減したい」という理由だけで自社支援は認められません。入管法で定められた「支援体制の基準」を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。
- 中長期在留者の適正な受入れ実績
- 過去2年以内に、中長期在留者(就労ビザを持つ外国人)を適正に受け入れた実績があること。
- または、同等の支援業務経験のある役職員が「支援責任者」として在籍していること。
- 支援責任者・担当者の選任と中立性
- 支援を実施する担当者を選任する必要があります。
- 重要なのは「指揮命令系統にないこと」です。外国人の直属の上司や現場監督が担当者を兼任することはできません(相談の中立性を保つため)。
- 言語対応体制の確保
- 外国人が十分理解できる言語(母国語等)で支援できる体制が必要です。
- 必ずしも社内に通訳スタッフを常駐させる必要はなく、通訳業者との契約や翻訳ツールの活用でも認められるケースがあります。
- 法令遵守・欠格事由なし
- 過去5年以内に労働法令違反や入管法違反がないこと。特に改正法では、不法就労助長罪の罰則が引き上げられているため(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)、コンプライアンスはより重要になります 。
【建設分野の特例】JACとFITS、CCUSへの対応
特に「建設分野」で特定技能外国人を受け入れる場合、分野独自の上乗せ基準が存在するため、自社支援の場合でも以下の対応が必須となります 。
- 建設技能人材機構(JAC)への加入: 特定技能外国人受入事業実施法人であるJAC(またはその構成団体)に加入し、行動規範を遵守する必要があります 。
- 国際建設技能振興機構(FITS)等の受入れ: 適正就労監理機関(FITS)による巡回指導や調査に対し、協力する義務があります 。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録: 受入れ企業および特定技能外国人本人のCCUS登録が義務付けられています 。
- 月給制と昇給: 日本人と同等額以上の報酬を「月給制」で安定的に支払うこと、技能の習熟に応じた昇給を行うことが求められます 。
建設分野では、企業単独型であってもJACの会費や受入れ負担金などのコストが発生しますが、それでも登録支援機関への委託料と比較すれば、大幅なコストダウンが見込めるケースが多々あります。
2027年「育成就労」を見据えた戦略的選択
2027年頃には、現在の技能実習制度が廃止され、「育成就労制度」が開始される予定です 。 新制度では、「特定技能1号水準の人材育成」が目的となるため、受入れ機関(企業)には、これまで以上に質の高い育成・支援能力が求められます 。
今から「自社支援」に切り替え、社内に支援のノウハウを蓄積しておくことは、新制度へのスムーズな移行だけでなく、「選ばれる企業」になるための重要な投資となります。
行政書士法人タッチでは、受入れ人数が増えてきた企業様に向けて、以下のサポートを行っております。
- 自社支援「適性」診断: 貴社が要件を満たしているか、コストメリットが出るかを試算します。
- 支援内製化サポート: 切り替え手続き、社内マニュアル作成、担当者教育を伴走支援します。
- 外部顧問サービス: 自社支援を行いながら、複雑な書類作成や法改正対応(四半期報告等)のみを行政書士がサポートするプランです。
「まずはいくらコストダウンできるか知りたい」「今の体制で切り替え可能か確認したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
特定技能・自社支援への切り替えに関するご相談は、行政書士法人タッチまでお気軽にご連絡ください。











