日本の既存の会社が外国人を取締役等の役員や支店長・部長クラスで迎え入れる場合は、「経営・管理」ビザの取得を検討します。
外国人に経営管理ビザを取得させるためには、事業の経営又は管理に実質的に参画しているかどうかがポイントです。肩書だけで仕事内容が一般の従業員と変わらない場合は、一般的な就労ビザを取得しなければなりません。
この記事では、外国人を会社の取締役とする場合、経営管理ビザと就労ビザのどちらが必要になるのか解説します。
取締役の在留資格は「経営・管理」
日本の会社が外国人を従業員として雇う場合は、一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得させるケースが多いですが、外国人を取締役として受け入れる場合は、「経営・管理」の在留資格が必要になります。
「経営・管理」の在留資格は、日本において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動を行う場合に必要です。
一般的には、外国人が日本国内で会社を設立(起業)する場合に必要になりますが、既に設立された会社の経営に参画したり、事業の管理に従事する場合も必要になります。
役員の経営管理ビザ取得のための要件
外国人が日本国内で起業するために、経営管理ビザ取得を目指す場合は、設立する会社の規模等が重要視されます。
一方、外国人が既に設立された会社の取締役等の役員に就任する場合は、その外国人を取締役等の役員に就任させる必要性があるのかどうかも審査のポイントになります。
500万円以上の出資を行う場合
外国人がその会社に500万円以上の出資を行ったうえで、その会社の取締役等の役員に就任するケースでは、外国人が会社を設立したうえで、その会社の経営を行っているのと同じになります。
そのため、会社の規模や事業所の確保といった点が審査において、重視されます。
500万円以上の出資を行わない場合
外国人がその会社に500万円以上の出資を行わない場合というのは、既に日本で設立された会社に「雇われ社長」等として、招聘されるケースです。
この場合、その外国人が事業の経営又は管理の経験を有しており、日本人が役員等に就任することで受ける報酬額と同等以上の報酬額を受けている必要があります。
さらに、会社の規模等の要件を満たしていることはもちろん、その外国人を取締役等の役員とする必要性があるのかどうか? という点も審査において重視されます。
既存会社の役員に就任し、経営管理ビザを取得する際の注意点
外国人が既存会社の役員等に就任する場合は、経営・管理の在留資格が必要になります。
ただ、役員に就任したら当然に、経営・管理の在留資格に該当するわけではありません。経営・管理は、外国人が事業の経営又は管理に「実質的に参画している」場合の在留資格です。
具体的には、
- 事業の運営に関する重要事項の決定
- 事業の執行や監査の業務
等に関わっていることが必要です。
取締役等の肩書を付けられただけで、こうした権限を行使していない場合は、経営・管理の在留資格を取得することはできないので注意が必要です。
その他、下記に紹介する点も考慮する必要があります。
担当業務が明確であるかどうか
大きな会社の場合は、取締役ごとに人事部門や財務部門等の管掌が設けられていることが多いです。この場合は、担当する分野を明確に記載します。
一方、小さな会社では、取締役が数人しかおらず、担当部門が明確でないこともありますが、このような場合でも、名ばかり取締役とみなされないように、業務内容を明確に示す必要があります。
なお、小さな会社と言っても、従業員数が10名以上ほどの規模はないと、外国人を新たに取締役に就任させる必要性が乏しいと判断される可能性があります。この場合は、その外国人を取締役として活動させる必要性について具体的に記載しなければなりません。
担当業務量が適正であるかどうか
日常的に、取締役等の役員としての業務を行っているのかどうかがポイントになります。
取締役等の肩書を付けられただけで、大半の時間は他の従業員と同じ業務に従事しているだけであるとか、そもそも会社に出勤していないといったような状態の場合は、取締役等の役員として活動しているとは言えないため、経営・管理の在留資格を取得できません。
中小企業の場合、取締役等の役員自身も他の従業員と同じ仕事に関わることはよくあることです。外国人がこうした形で働く場合は、役員に就任した後でも、一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で通すといった対応が必要になることもあります。
「経営・管理」と「技術・人文知識・国際業務」はどちらか一方しか取得できないため、どちらが適切なのか判断に迷った場合は、専門家である行政書士に相談しましょう。
経営管理ビザ取得までの流れ
既存の会社が外国人を取締役等の役員として迎え入れる場合は、次の2つのパターンが考えられます。
- 既に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格等で日本で働いている人を取締役等の役員とする場合(国内在住人材の採用)
- 海外に在住している外国人を日本に入国させて取締役等の役員とする場合(海外在住人材の採用)
前者の場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格等から「経営・管理」への在留資格変更許可申請が必要です。
後者の場合は、新規に「経営・管理」の在留資格を取得させます。
在留資格変更許可申請(国内在住人材の採用)の場合
自社の外国人従業員を取締役等の役員とする場合は、会社の経営陣が本人と話し合いを行い、業務内容について決定します。
単に取締役に就任してもらうだけでなく、担当業務についても明確に決め、その外国人に事業の経営又は管理に実質的に参画してもらうことがポイントです。
本人との話し合いがまとまったら、株主総会での取締役選任決議を経た上で、取締役選任の役員変更登記を申請します。
その後、「経営・管理」への在留資格変更許可申請を行います。
在留資格変更許可申請は、基本的に本人が行いますが、必要書類が多い上、審査が厳しいため、専門家である行政書士のサポートを受けるべきです。
新規の「経営・管理」在留資格申請(海外在住人材の採用)の場合
海外在住の外国人を呼び寄せて、取締役等の役員とする場合も、まずは、会社の経営陣が本人と話し合いを行い、業務内容について決定します。
本人との話し合いがまとまったら、株主総会での取締役選任決議を経た上で、取締役選任の役員変更登記を申請します。
その後、「経営・管理」の在留資格の新規申請を行います。
この手続きは、会社が本人に代わって行うこともありますが、必要書類が多い上、審査が厳しいため、専門家である行政書士に依頼するのが確実です。
経営管理ビザ取得は、行政書士までご相談ください
日本の会社が、外国人を取締役等の役員として受け入れる場合は、経営管理ビザへの変更や新規申請が必要ですが、経営管理ビザを取得するためには、事業の経営又は管理に実質的に参画しているかどうかがポイントになります。
取締役になっても、業務内容の大半が一般の従業員と同じ場合は、就労ビザのままとすることも考えられます。
経営管理ビザと就労ビザのどちらを取得すべきか、判断が難しいケースも多いため、迷っている方は、専門家である行政書士にご相談ください。
行政書士法人タッチでは、無料相談にてお客様一人一人のご状況を伺い、最適な在留資格を提案し、取得までサポートさせていただきます。