経営管理ビザ

日本進出を失敗しないための事前確認ポイント10選

海外企業の日本進出は、準備不足のまま進めると、後から大きな手戻りや追加コストが発生することがあります。会社設立・許認可・ビザ・税務・労務と、確認すべき論点は多岐にわたりますが、最初の段階で正しく整理しておくことで、スムーズな日本進出が可能になります。

この記事では、日本進出を失敗しないために事前に確認しておくべき重要ポイントを10項目にまとめました。

ポイント1:進出形態を正しく選んでいるか

子会社・支店・駐在員事務所の3つの選択肢の中から、自社の事業内容・目的・リスク許容度に合った形態を選ぶことが出発点です。

「とりあえず設立しやすいから」という理由だけで形態を決めると、後から許認可が取れない、ビザ申請で問題が生じるといったトラブルが起きることがあります。形態の変更は後からでもできますが、手続コストと時間がかかるため、最初の選択を慎重に行うことが重要です。特に、経営管理ビザの取得を念頭に置いている場合は、法人形態・資本金・事務所の実態がビザ審査に直結するため、ビザの専門家と相談しながら設計することが不可欠です。

確認事項:事業目的に照らして子会社・支店・駐在員事務所のどれが最適か、専門家と確認しましょう。

ポイント2:業種に必要な許認可を把握しているか

飲食業・建設業・不動産業・人材派遣業・医療業など、特定の業種では会社設立後に許認可を取得しなければ営業を開始できません。許認可によっては申請から取得まで数ヶ月かかるため、設立と並行して許認可の準備を進める必要があります。

また、許認可には人的要件(資格保有者の配置)・財産的要件(一定以上の資本金)・設備要件などが課されることが多く、これらを満たさない状態で申請しても不許可になります。許認可の種類によっては、要件を満たすまでに数ヶ月かかるものもあるため、設立と並行して要件整備を進めることが重要です。「設立が終わってから許認可のことを考える」では遅すぎるケースが実務上多く見られます。

確認事項:自社の事業に必要な許認可の種類・要件・審査期間を事前に把握しましょう。

ポイント3:経営管理ビザの要件を理解しているか

外国籍の代表者・役員が日本で経営活動を行うには、経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)が必要です。2025年省令改正により要件が大幅に見直されており、主な要件は以下のとおりです。

  • 資本金・出資総額:3,000万円以上(改正前は500万円)
  • 経歴・学歴(経営者):経営・管理経験3年以上、または経営管理・事業分野に関する修士相当以上の学位を有すること
  • 雇用義務:1人以上の常勤職員(日本人・永住者等)を雇用すること
  • 日本語能力:申請者または常勤職員のいずれかがCEFR・B2相当以上の日本語能力を有すること
  • 専門家確認:新規事業計画について、経営に関する専門的な知識を有する者(弁護士・公認会計士等)の確認を受けること(上場企業相当規模の場合等を除く)
  • 事業所の確保:実態のある事務所を確保していること
  • 申請者が経営または管理に実質的に従事すること

なお、既に在留中の方には、施行後3年を経過した後の最初の在留期間更新許可申請時以降、改正後の基準への適合が原則として求められます。

これらの要件は複合的に審査されます。設立前の段階からビザ要件を踏まえた設計が不可欠です。

確認事項:資本金・経営経験・雇用計画・日本語能力・事業計画の専門家確認など、改正後の要件を全て満たしているか専門家と確認しましょう。

ポイント4:資本金の額は適切か

法律上は1円から会社設立が可能ですが、経営管理ビザの取得を見据えると3,000万円以上の資本金が必要です(2025年省令改正による)。また、業種によっては許認可取得のために一定以上の資本金が求められます(例:宅建業は1,000万円以上が財産的基礎の目安)。

一方、資本金が多すぎると設立登記費用(登録免許税)が増えるほか、法人住民税の均等割(資本金に応じて増額)が増加します。実態に見合った適切な額を設定することが重要です。また、資本金は設立後の事業運転資金・事務所の敷金・設備投資などにも充てられるものです。ビザ要件を満たしつつ、事業計画と整合した資金計画のもとで資本金の額を決定することが、事業の安定的な立ち上がりにもつながります。

確認事項:許認可・ビザ・税務のそれぞれの観点から、資本金の適切な額を検討しましょう。

ポイント5:事務所(事業所)の確保は適切か

日本法人の設立には登記上の本店所在地が必要であり、経営管理ビザの申請には実態のある事務所の確保が求められます。

バーチャルオフィスは費用が安い一方、経営管理ビザ審査では「事業の実態なし」と判断され不許可になります。専用スペースがあるレンタルオフィスや、通常の賃貸オフィスを確保する必要があります。業種によっては、許認可の要件として一定規模の事務所・設備が求められる場合もあります。また、事務所の住所は登記にも使われるため、後から変更すると変更登記の費用と手間が発生します。事業の実態と将来の拡張性を見据えて、最初から適切な事務所を選ぶことが重要です。

確認事項:事務所の形態(バーチャル・レンタル・賃貸)がビザ審査・許認可要件を満たすか確認しましょう。

ポイント6:設立後の税務・会計体制を整えているか

会社設立後は、日本の税務申告・会計処理を適切に行う必要があります。特に、外資系企業の場合は本社との取引(移転価格・配当・役員報酬など)に関わる税務上の論点が生じることがあります。

設立後すぐに税理士と顧問契約を結び、税務届出・決算準備を進めることが重要です。設立後2ヶ月以内に税務署へ法人設立届出書を提出する必要があるなど、期限のある届出もあります。期限を過ぎると青色申告の適用が受けられなくなるなど、税務上の不利益が生じる場合があります。設立と同時期に税理士を決め、届出のスケジュールを共有しておくことで、こうしたリスクを防ぐことができます。多言語対応の税理士を選ぶと、本社とのコミュニケーションもスムーズです。

確認事項:信頼できる税理士との顧問契約を設立前・設立直後に手配しましょう。

ポイント7:従業員の採用・労務管理の準備ができているか

日本で従業員を雇用する場合、労働基準法・社会保険・雇用保険などの日本の法令に従った労務管理が必要です。外国人従業員を採用する場合は、在留資格の確認・管理も必要になります。

また、就業規則は10人以上の従業員を雇用する場合に作成・届出が義務となりますが、10人未満でも整備しておくことが労働トラブル防止に役立ちます。日本では労働者の権利保護が強く、解雇や賃金問題をめぐるトラブルは外資系企業でも珍しくありません。採用前に労働条件を明確にした雇用契約書を整備し、社会保険への加入を適切に行うことが重要です。

確認事項:採用計画に応じて社会保険労務士との連携体制を整えましょう。

ポイント8:専門家の連携体制はできているか

日本進出では、行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士など複数の専門家が必要になります。それぞれに個別相談すると、全体の整合性が取れなくなることがあります。

窓口を一本化し、各専門家が連携して対応できる体制を整えることが、手続の漏れ・遅延・コストの無駄を防ぐポイントです。行政書士法人タッチのように、ワンストップで対応できる専門家グループに依頼することも有効な方法です。

確認事項:専門家の窓口が一本化されているか、連携体制が整っているか確認しましょう。

ポイント9:スケジュールに十分な余裕を持っているか

「○月から日本で事業を開始したい」という目標に対して、逆算したスケジュールを立てることが重要です。会社設立・許認可・ビザ申請のそれぞれに時間がかかり、並行して進める部分と順番がある部分を整理する必要があります。

多くの場合、余裕を持ったスケジュールで動き始めた企業ほど、スムーズな日本進出を実現しています。「思ったより時間がかかった」という声は非常に多いため、早め早めの行動が重要です。特に、書類の収集・翻訳・認証に予想以上の時間がかかるケース、銀行口座の開設審査が長引くケース、ビザ審査で追加書類の提出を求められるケースなど、想定外の遅延要因は多数あります。各ステップに2〜3週間のバッファを設けた現実的なスケジュールを立てることが、結果的に予定どおりの日本進出を実現する近道です。

確認事項:ゴールから逆算したスケジュールを作成し、各手続の所要期間を正しく把握しましょう。

ポイント10:進出後の運営体制を見据えているか

日本進出は、会社設立や各種申請が完了した時点がゴールではありません。事業開始後も、在留資格の更新・許認可の更新・税務申告・各種変更登記など、継続的な手続が発生します。

また、日本での事業が想定どおりに進まない場合の対応(事業内容の変更・縮小・撤退)についても、あらかじめ想定しておくことが重要です。進出後も相談できる専門家との継続的な関係を構築しておくことが、安定した日本事業運営の基盤となります。特に、経営管理ビザの更新時期(1年・3年・5年)には、日本での事業実績が改めて審査されます。売上・納税・従業員雇用など、事業の継続性を示す記録を日頃から整えておくことが、スムーズなビザ更新につながります。

確認事項:進出後の顧問体制・相談窓口を事前に整えておきましょう。進出後に「誰に相談すればいいかわからない」という状態にならないよう、信頼できる専門家とのパイプを設立段階から築いておくことが重要です。

まとめ

日本進出を成功させるためには、会社設立の手続だけでなく、許認可・ビザ・税務・労務・専門家連携・スケジュール管理など、多岐にわたる論点を事前に整理することが重要です。「わからないまま進める」のではなく、「全体像を把握してから動き出す」姿勢が、後の手戻りや追加コストを防ぐ最善の方法です。

この10のポイントは、いずれも「後から気づいた」では手遅れになりやすい論点です。日本進出の検討を始めた早い段階で、これらを一つひとつ確認しておくことが、結果的に最短・最小コストでの進出実現につながります。

行政書士法人タッチでは、初回相談(無料)のなかで日本進出に必要な手続の全体像と優先順位をご案内しています。「何から始めればよいかわからない」という段階からでもお気軽にご相談ください。専門家が日本進出全体を整理しながら、最適な進め方をご提案します。

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

専門分野
外国人ビザ(在留資格)・帰化
主な取扱業務

・外国人在留資格申請、帰化
・対日投資に関する支援業務
 (経営管理ビザ,対日投資コンサルティング等)
・外国人材の雇用、技能実習監理、特定技能登録支援業務

開業以来、国際業務を専門とし、
年間1,000件以上の在留資格・帰化実務に対応

公式サイト
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