経営管理ビザ

経営管理ビザは事業計画書が最重要【書き方】

経営管理ビザ計画書サムネ

新設会社を設立し、経営管理ビザを取得するにあたり、事業計画書の内容、そして事業所の実体性資本規模といった「事業の実体」そのものが、審査の上で最も重要な要素となります。

経営管理ビザの要件は近年大幅に厳格化されました。単に必要な書類を集めて申請するだけでは許可は得られません。事業計画書で事業の「安定・継続性」が認められない場合や、そもそも省令で定められた以下の新しい基準を満たしていない場合は、不許可となります。

【まず始めに】事業の中身をきちんと考える

まずは事業の内容をきちんと詰めていき、その上で計画書に落とし込みます。そもそも事業の内容が定まっていなかったり、あやふやな目的でスタートしたりするケースでは、許可は得られません。

よくある例

貿易業務をします。
⇒何の商品をどこに売るの?

化粧品や雑貨を母国に売ります。
⇒化粧品と雑貨の種類は?どのような手段で売るの?

最初にどういったビジネスをするのかを明確化しないことには、事業計画書も中身の内容となりますので、最初にきちんとビジネスモデルを考えることが重要です。

事業計画書の書き方とポイント

新しい前提要件(資本金3,000万円、常勤職員1名、事業所確保など)をクリアした上で、緻密な事業計画書を作成します。

以前は「融資を申請するような高度な計画書までは求められない」という風潮もありましたが、厳格化された現在では、計画の具体性と実現可能性、そしてそれを裏付ける客観的な資料が強く求められます

事業計画書には書く項目があり、項目ごとにポイントがありますのでそれを押さえて記載してゆきます。

①事業の概要(事業の全体像)

事業計画書はストーリー性があることが重要です。いきなり細部の説明をすると全体が見えず、審査する側にとってわかりにくくなってしまうので、まず始めに全体像を説明し、各論に入っていきます。

具体的にどのような事業を行うのかを簡潔に記載します。

②起業の動機と市場規模(なぜそのビジネスを始めるのか)

なぜそのビジネスを始めようと思ったのかを市場規模や顧客ターゲットを交えて記載します。

記載例(化粧品貿易業)

中国人にとって日本ブランド化粧品は、食品や薬品と同じく品質面で強い信頼があり、また、「日式(日本製)=高級」というブランドへの憧れから、絶大な人気を得ております。

中国製の化粧品も多く販売されていますが、中には怪しげな商品であったり、日本ブランドに見せかけた偽物があり、正真正銘の「メイドインジャパン」の商品を欲しがる人が多く、日本の化粧品は無添加、アルコールフリー、無香料、無着色などを売りにしているので安心感を得ております。

また中国の化粧品輸入額はコロナ禍の2020年も伸張を続け、1月~10月の輸入総額は既に前年を超え160億ドルとなり、国別でみると、2019年に日本が韓国を抜きトップとなって以降、さらにその差を広げ、2020年1月~10月の輸入総額の24.7%(39億ドル)を占めています。高価格ながら安全面等で信頼性の高い日本製品を購入可能な購買層の拡大、日本ブランドが強い基礎化粧品(スキンケアプロダクツ)分野は、メイクアップ分野と比べて外出頻度が減っても需要が低下しないなどが要因として考えられます。

上述のとおり中国において日本の化粧品の需要が増大を続けているのを最大のチャンスと捉え、学生時代より当該貿易業務の立案検討を重ね、日本製化粧品の仕入れ先の確保及び中国国内等の販売先、ルートの確保に見通しが立ったことから、この度資本金3,000万円を用意し、○○株式会社を設立致しました。

③ターゲット顧客と自社の強み

次に誰に向けたサービスなのかを明確化します。

具体的には、

  • ターゲットとなる顧客層
  • 顧客が抱える困りごとやニーズ
  • その顧客に価値提供をするにあたっての自社の強みや資源

を記載します。

④主な商品と商品の販売方法

これは経営管理ビザ申請にあたっては引き続き重要となる箇所です。具体的にどのような商品を販売し、どういった手法で顧客に販売するのかを記載します。

漠然と化粧品を売りますでは許可は得られないので、きちんと商品説明とその写真や実績があれば納品書や請求書を添付します。

記載例

  • 商品:中国で人気の高いPOLA社及び資生堂社の化粧品
    ⇒具体的な商品名と商品画像を添付します。
  • 仕入れ先:株式会社○○ ※契約書あり
    ⇒仕入れが必要なビジネスをする場合は、どこから仕入れを行うかも記載します。仕入れ先の目途がない場合は、申請前に仕入れ先を確保します。
  • 仕入れ商品保管先:埼玉県さいたま市○○区1-2-3 ※契約書あり
    【注意】 貿易業務を行う場合、商品の保管先が問われます。もしここが「事業所」を兼ねる場合、十分な面積が必要です。
  • 販売先:○○店、○○株式会社、個人消費者
    ⇒経営管理ビザ申請前に、販売先をある程度確保しておくことも重要です。
  • 販売方法:法人向けには、販売数量・種類に応じて弊社から直接発送し、個人消費者にはタオバオに出品の上、販売を行う。
  • 販売単価:1万円~3万5千円

⑤ここまでの進捗

経営管理ビザを取得するには、きちんとビジネスが安定継続的に行われる見込みがあるかを証明することが必要です。

要件が厳格化された現在、単なる「見込み」ではなく、以下のような客観的な証拠(裏付け資料)をどれだけ提示できるかが極めて重要です。

仕入れ先

  • 第一株式会社 取引基本契約書締結済
  • 第二商事 取引基本契約書締結済

販売先

  • 第三貿易有限公司 中国籍の知人が経営する会社であり、弊社との取引に関する合意書(または発注書)締結済

⑥マーケティング(どのように顧客を集めていくか)

どのように集客を図るかを記載します。開業初期で未確定な部分もあるかと思いますが、実現可能な計画を記載します。

プッシュ戦略(直接的な営業活動)

2022年に来日し、専門学校、前職を通して多くの人脈を築いて参りました。専門学校の同級生の中には、独立開業した者も多数おり、また在日中国人は、独自のコミュニティを日本国内で形成し、facebookやWeChatなどのSNSを通して繋がっております。

開業当初は、弊社ビジネスを上記対象者を中心に広く周知を図り、紹介型ビジネスにより集客を図ります。
(2025年11月現在:3社と契約見込み)

プル戦略(広告やPRなど)

上記の紹介型ビジネスに加え、タオバオを筆頭にアマゾン・楽天を使用しWEB上での販売を積極的に行います。私は、日本語と中国語に長けているので、中国への輸出だけでなく、日本国内の中国製品の需要に合わせてゆくゆくは中国製品の供給を日本国内で実施していきたいと考えております。

⑦収支計算書

最後に収支計算書を記載します。
「収支計画書 サンプル」とネット検索すると様々なフォーマットが出てきます。

具体的には下記の数字と、【最重要】その数字の根拠を記載します。

  • 売上見込み
    (根拠:確保済みの販売先との取引合意書、類似市場のデータなど)
  • 仕入れ高
    (根拠:仕入れ先との契約書、見積書など)
  • 販売管理費
    (根拠:事務所の賃貸借契約書、雇用する常勤職員の雇用契約書、社会保険料の見積もり、広告宣伝費の見積書など)
  • 損益計画書

根拠資料がなければ、計画書は「絵に描いた餅」と判断されます。見積書や契約書、市場調査データなど、数字の裏付けとなる客観的資料を必ず添付してください。

 

以上が、厳格化された経営管理ビザ申請にあたっての事業計画書の書き方になります。
行うビジネスモデルによっては書き方も異なりますが、以前にも増して、①新しい前提要件(資本金、常勤職員、事業所)のクリアと、②客観的資料に裏付けられた緻密な事業計画が不可欠となったことをご理解ください。

事業計画書を書くのは大変ですが、きちんと考えて記載することで、ビザ取得後のビジネスにも活用できますので、時間をかけて丁寧に記載しましょう。

要件が非常に複雑かつ厳格になったため、ご自身での判断が難しい場合は、必ず専門の行政書士にご相談ください。

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

専門分野
外国人ビザ(在留資格)・帰化
主な取扱業務

・外国人在留資格申請、帰化
・対日投資に関する支援業務
 (経営管理ビザ,対日投資コンサルティング等)
・外国人材の雇用、技能実習監理、特定技能登録支援業務

開業以来、国際業務を専門とし、
年間1,000件以上の在留資格・帰化実務に対応

公式サイト
https://touch.or.jp/
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