外国人が日本で会社を設立し、事業を運営するために必要な在留資格「経営・管理」(いわゆる経営管理ビザ)。この経営管理ビザの許可基準は、最新の上陸基準省令の改定により、これまでとは比較にならないほど厳格化されました。
「以前と同じような準備で申請したら不許可になった」「更新の時期が来たが、新しい要件を満たせておらず不安だ」というご相談が、当行政書士事務所にも多く寄せられています。現行の許可基準においては、最新の変更点を正確に理解し、十分な対策を講じていなければ、新規取得はもちろん、ビザの更新すら難しくなっています。
本記事では、入管業務に精通した行政書士が、最新の改正省令に基づき、経営管理ビザが不許可になる典型的な理由と、確実に許可を勝ち取るための実践的な対策を徹底解説いたします。現に旧要件で経営管理ビザを取得している方にとっても、今後の更新に向けた死活問題となりますので、ぜひ最後までお読みください。
はじめに:現行の改正省令により「経営・管理」のハードルは劇的に上がった
これまでの経営管理ビザの要件といえば、「資本金500万円以上」や「2名以上の常勤職員の雇用(または資本金による代替)」といったものが一般的でした。しかし、現行の許可基準では、事業の継続性と安定性をより厳格に審査するため、許可基準の抜本的な見直しが行われました。
最新の省令改定による主な変更点は以下の通りです。
- 資本金・出資総額の大幅な引き上げ:500万円から3,000万円へと変更されました。
- 常勤職員の雇用義務化:1人以上の常勤職員の雇用が義務付けられました。
- 日本語能力要件の新設:申請者又は常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することが必要になりました。
- 専門家による事業計画書の確認義務化:新規事業計画について経営に関する専門的な知識を有する者の確認が義務付けられました。
これらの変更は、日本における外国人経営者の事業規模をより確実なものとし、ペーパーカンパニーや実態のない事業を防ぐためのものです。旧基準の知識のまま申請準備を進めることは、不許可リスクを極大化させる行為に他なりません。
既に「経営・管理」ビザを持っている方の更新不許可リスク
今回の省令改定で最も注意すべきなのは、現在すでに「経営・管理」の在留資格で日本に滞在している外国人経営者の方々です。「すでにビザを持っているから、次回の更新も問題ないだろう」と安心していると、思わぬ不許可通知を受け取ることになります。
施行後3年を経過した後の「初回更新」が最大の壁
既に在留中の方には、経過措置として2025年10月16日の施行日 から3年間(2028年10月16日まで)の猶予期間が設けられています。しかし、この猶予期間を経過した後に到来する最初の在留期間更新許可申請時以降は、原則として改正後の新しい許可基準への適合が求められます。
つまり、この2028年10月16日という期日までに、事業を成長させて「資本金を3,000万円以上に増資し」 、かつ、「新たに1名以上の常勤職員を雇用する」 という「両方の要件」を完全に満たしておかなければ、容赦なく「更新不許可」となるリスクが待ち受けているのです。
猶予期間中であっても不許可になるケース
では、2028年10月16日までの猶予期間中に行う更新申請なら100%安全かというと、そうではありません。施行日から3年以内の更新申請であっても、審査は厳格に行われます。
具体的には、以下のようなケースでは不許可となる可能性が高まります。
- 経営状況が著しく悪化している:赤字が連続しており、事業の継続性が見込めない場合。猶予期間中の審査においても、経営状況や改正後の許可基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断が行われます。
- 新基準への適合見込みがない:次回更新申請時までに改正後の許可基準を満たす見込みがないと判断された場合。
- 専門家の評価文書が提出できない:審査の過程で、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあり 、これに適切に対応できない場合。
更新時に厳格にチェックされる「公租公課」の履行状況
さらに、現行の更新審査において非常に重視されるのが「公租公課(税金や社会保険料など)の支払義務の履行状況」です。
以下に該当する未納や滞納がある場合、経営者としての適格性が疑われ、更新不許可の強力な理由となります。
- 労働保険の適用状況:雇用保険の被保険者資格取得の履行や保険料納付、労災保険の適用手続等を怠っている場合。
- 社会保険適用状況:健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格取得や保険料納付をしていない場合。
- 税金の滞納(法人の場合):源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税などの国税、並びに法人住民税や法人事業税などの地方税の未納。
- 税金の滞納(個人事業主の場合):申告所得税や消費税などの国税、並びに個人住民税や個人事業税などの地方税の未納。
改正省令に基づく「新規申請」での不許可原因
これから新たに経営管理ビザを取得しようとする方にとっては、最新の許可基準を最初からすべてクリアしなければなりません。ここでは、新規申請において不許可の典型例となる4つの原因を解説します。
1. 資本金・出資総額が「3,000万円」に達していない
もっとも大きな変更点が、事業規模の要件です。従前は「500万円の資本金」で事業規模が認められていましたが、現行の基準では「3,000万円以上」の資本金等が必要となりました。この基準を満たしていない申請は、その時点で不許可となります。
- 法人の場合:株式会社における払込済資本の額(資本金の額)、又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の出資の総額を指します 。
- 個人事業主の場合:事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指します 。この「投下総額」を客観的な証拠書類をもって立証できなければ、要件を満たしていないと判断されます。
2. 常勤職員(1名以上)の雇用実態がない
改正前は、要件なし(資本金の代替要件として2人以上の雇用要件)とされていました。しかし、最新の要件では、資本金が3,000万円以上であっても、必ず「1人以上の常勤職員の雇用を義務付ける」こととなりました。
ここで不許可の落とし穴となるのが「誰を雇用できるか」という対象者の制限です。「常勤職員」の対象は、日本人、特別永住者、及び法別表第二の在留資格(「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」)をもって在留する外国人に限られます 。法別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務などの一般的な就労ビザ)をもって在留する外国人は対象となりません。これを誤ると要件未達で不許可となります。
3. 日本語能力(CEFR B2相当等)の証明不足
現行法では、新たに「日本語能力」に関する要件が追加されました。申請者又は常勤職員のいずれかが、相当程度の日本語能力を有することが必要になります。
相当程度の日本語能力とは、「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力であり、以下のいずれかに該当することを客観的な資料で証明できなければ不許可となります。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること
- BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上取得していること
- 中長期在留者として20年以上我が国に在留していること
- 我が国の大学等高等教育機関を卒業していること
- 我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること
なお、この要件を満たすための「常勤職員」については、前述の雇用義務とは異なり、法別表第一の在留資格をもって在留する外国人(就労ビザを持つ外国人等)も含まれます。
4. 専門家による「事業計画書」の確認・評価の欠如
経営管理ビザの申請において事業計画書は命綱です。最新の改正省令では、在留資格決定時において提出する事業計画書について、その計画に具体性、合理性が認められ、かつ、実現可能なものであることを評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者の確認を義務付けました。
この「専門的な知識を有する者」とは、具体的には以下の国家資格保有者を指します 。
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
これら専門家から評価を受け、その確認文書を添付しなければ、申請は不許可となります。
5. 事業の安定継続性が客観的に認められない場合
経営管理ビザの審査において、根本となるのが「事業の安定性および継続性」です。たとえ形式的に3,000万円の資本金を用意し、常勤職員を雇用したとしても、肝心のビジネスモデルが破綻していたり、事業としての実効性が疑わしい場合は、「事業の安定継続性が客観的に認められない」として不許可になります。
- 具体性に欠ける事業計画:ターゲット顧客、販売ルート、価格設定などが曖昧で、どのように利益を出していくのかが不明確な場合。
- 不自然な資金繰り:高額な資本金(3,000万円)の出所や形成過程が不明確であったり、運転資金がすぐに底をつくような無謀な計画になっている場合。
新たに「専門家による事業計画書の確認」が義務付けられたのも、まさにこの「客観的な安定継続性」をプロの目で厳しくチェックするためです。形式的な要件クリアにとどまらず、実際のビジネスとしてしっかりと成立することを、説得力のある事業計画と客観的な裏付け資料によって立証しなければなりません。
実務で盲点となる「不許可」の落とし穴
上記で挙げた明確な数値基準や資格要件以外にも、審査において「実態がない」とみなされ、不許可となる実務上の落とし穴が存在します。
事業所の実態:自宅兼事務所は原則認められない
改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められません。独立したオフィス空間や店舗をしっかりと確保する必要があります。
経営者としての活動実態:業務委託への依存
業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱われます。事業の主要な業務を他社に丸投げしていると判断された場合、不許可となります。
長期間の出国による活動の形骸化
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められません。経営者は日本を拠点として事業を指揮監督することが求められます。
不許可を回避するための戦略的対策
ここまで解説してきた通り、現行の経営管理ビザの審査は非常に厳しいものとなっています。施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」活動を前提とする永住許可申請等も認められなくなります。確実な許可と安定した事業運営のために、以下の対策を強く推奨します。
更新を見据えた「改善計画」の策定(既存の在留者向け)
すでにビザをお持ちの方は、猶予期間である「2028年10月16日」を見据えた中長期的なロードマップを策定してください。3,000万円までどう増資するか、いつ常勤職員を採用するかを、客観的で合理的な「事業計画」としてまとめ上げる必要があります。
行政書士と「事業計画の専門家」のダブルチェック体制
新規申請の際も更新の際も、専門家との連携が不可欠です。なお、弁護士及び行政書士以外の方が、官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがあります。
申請書類の作成を適法に行う「行政書士」と、事業計画の客観的評価を行う「中小企業診断士・公認会計士・税理士」とが緊密に連携できる体制を構築している事務所に依頼することが、不許可を回避する最短ルートです。
まとめ:最新の許可基準を正しく理解し、安定した経営を
経営管理ビザの最新の改正省令は、資本金3,000万円、常勤職員の雇用、日本語能力、専門家による事業計画の確認など、非常に高いハードルを課しています。しかし、しっかりと準備を行い、要件を満たした事業者にとっては、日本社会から高い信頼を得て安定した経営が行える環境が整ったとも言えます。
不許可通知を受け取ってから後悔しないために、そして将来の永住申請への道を閉ざさないためにも、最新の基準を正しく理解し、早め早めの対策を講じてください。
当行政書士事務所では、最新の法令に精通した専門家が、中小企業診断士などの外部専門家とも連携し、皆様の経営管理ビザの確実な取得と更新を強力にサポートいたします。現状の要件適合性に不安がある方、これからの事業計画について相談したい方は、ぜひ一度当事務所へお問い合わせください。









