会社設立における「外国人1人」のケースでよくある注意点
外国人が単独で日本に会社を設立する際に、よく誤解されやすいポイントがあります。以下では、「外国人1人」で会社を設立する際に頻出する疑問や誤解について整理します。
日本人の共同経営者がいないと設立できない?
結論から言うと、日本人の共同経営者がいなくても会社設立は可能です。
日本の会社法では、会社の設立には「1人以上の発起人」がいればよいと定められており、発起人の国籍や居住地に制限はありません。
したがって、外国人1人だけで会社を設立することに法的な問題はありません。
ビザがないと登記できない?
これも誤解されやすい点ですが、ビザの有無は登記とは無関係です。
発起人や代表取締役に対し、日本国内の在留資格や居住地を持つことは求められていません。そのため、たとえ日本に在留していない外国人であっても、法人登記は可能です。
資本金の額に特別な制限がある?
会社設立において、資本金額に法的な下限は設けられていません。
株式会社や合同会社は、1円からでも設立可能です。これは日本人でも外国人でも同様です。
会社設立自体は可能だが「ビザの壁」に注意
ここまで述べたように、外国人1人で日本に会社を設立することは法的に可能であり、登記にも国籍やビザの制限はありません。
しかし、設立後に日本国内で実際に経営活動を行う場合には、ビザという別のハードルが存在します。これを見落としていると、せっかく会社を設立しても活動が著しく制限されるリスクがあります。
ビザがなければ日本に長期滞在・事業運営はできない
外国人が日本で会社を経営するためには、在留資格「経営・管理」(通称:経営・管理ビザ)が必要です。
経営・管理ビザとは、就労ビザの一種で、主として日本国内で企業の経営をするために日本に在留する外国人が取得するものです。
単に投資目的で日本の不動産を取得する場合や、外国から日本企業へ出資をするのみという場合のように日本に滞在しない場合には、経営・管理ビザの取得はできません。
つまり、実際に日本に滞在して事業運営を行う意思と体制があることが前提条件となります。
経営管理ビザの要件
経営・管理ビザを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
①事業所の存在
事業を営むための事業所が日本国内に存在していることが必要です。
まだ事業が開始されていない場合でも、事業所として使用する施設が確保されていなければなりません。
不動産登記簿謄本や賃貸借契約書などの資料の提出が求められます。
また、事業所として認められるためには一般的に以下の要件を満たしている必要があります。
賃貸契約が「事業用」であること
契約名義が法人、または事業を行う個人名義であることや、契約書の使用目的が「事務所」「事業用」と明記されていることが必要です。
独立したスペースが確保されていること。
客観的に一つの部屋として機能している空間が求められます。
単にパーテーションで部屋の区分けをしただけのレンタルオフィスやバーチャルオフィスのような実体のない住所のみでは、事業所としては認められません。
事業に必要な設備や広さを設けていること
パソコン、机、通信設備などの業務遂行に必要な最低限の設備が常設されていることが求められます。
②事業の規模
下記のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 常勤の職員を2名以上(日本人・特別永住者・定住者・永住者・その配偶者等)雇用すること。
- 資本金または出資総額が500万円以上であること。
- 上記の条件に準ずる規模であることが認められること。
なお、資本金または出資総額については、その形成過程が審査されることになります。資本が不正な手段でなく、貯金や借り入れなど合法的な手段で確保されていることが必要です。
③経営・管理の経験
申請人が事業の管理に従事しようとする場合、事業の経営または管理について3年以上の経験(大学院での専攻期間を含む)を有していなければなりません。
また、日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受ける必要があります。
設立はできてもビザが無いと活動が制限される
繰り返しになりますが、会社の登記自体はビザなしでも可能です。しかし、ビザがない状態では、日本に中長期的に滞在しながら経営活動を行うことはできません。
また、以下のような実務的制限も発生します。
- 法人口座が開設できない(本人確認ができず、金融審査に通らない)
- 事務所契約が難しい(不動産業者が契約を拒否するケースあり)
- 税務署や官公庁とのやりとりができない(届出義務が果たせない)
つまり、「登記=活動開始OK」ではないことに注意し、設立前からビザ取得までを見越した戦略設計が必須です。
外国人1人の会社を設立するための具体的な要件と必要書類
外国人が日本で単独で会社を設立することは可能ですが、設立にはいくつかの明確な要件があります。
パスポート等の本人確認書類(翻訳が必要な場合あり)
設立手続きにおいて、発起人となる外国人の本人確認書類の提出が必要です。
また、提出する公的書類が日本語以外で作成されている場合は、翻訳文の添付が求められます。翻訳文には、翻訳者の署名または翻訳責任の明記が推奨されます。
- パスポートの顔写真ページのコピー
- 在留カード(保有者のみ)
- 現住所の証明書類(母国の住民票や公共料金請求書など)
日本国内に住所・オフィスが必要(バーチュルオフィスは要注意)
日本で法人登記を行うためには、日本国内の住所を本店所在地として確保することが必須です。
この住所は、法務局への登記簿記載住所となるだけでなく、今後の税務署・年金事務所・銀行・出入国在留管理局等との連絡窓口になります。
住所のみを借りられる「バーチャルオフィス」は、法務局での登記そのものは一応可能です。
しかし、実際に事業を行っていない(事務所としての実体がない)と判断されると、経営・管理ビザの審査や後述する法人口座開設などで高確率で否認されるので注意が必要です。
母国での印鑑証明書や署名証明書
- 印鑑証明書(印鑑登録証明)
→ 印鑑登録制度がある国(中国・韓国など)では取得可能。 - 署名証明書(サイン証明)
→ 公証人や大使館にて署名が本人のものであることを証明する書類。
印鑑登録制度のない国(カナダ・アメリカ・欧州諸国など)で取得可能。
これらの証明書は、会社設立時の登記や定款認証に使用されます。公証人への提出書類の一部として必要になるため、事前の準備が重要です。
資本金の入金と証明方法
会社設立時には、資本金をいったん代表者個人の日本の銀行口座に入金し、その後法人名義の口座に移すのが一般的です。
経営・管理ビザを取得する場合は、資本金の入金が確認できる銀行振込明細書、出資金の出所を示す書類(母国での給与明細、納税証明、預金通帳など)、自己資金であることを示す説明書や翻訳資料などで証明します。
外国人1人の会社設立で気をつける実務ポイント
外国人が単独で会社を設立する際、法律上の制限は少ない一方で、実務上のハードルが多数存在します。これらは主に言語・本人確認・公的手続きの運用に関するものです。
言語の壁(定款や登記書類)
会社設立に必要な書類(定款、公証役場提出書類、登記申請書など)はすべて日本語で作成・提出が必須です。
銀行口座の開設(本人確認が厳格)
設立した法人名義での銀行口座を開設するには、近年マネーロンダリング対策等で審査が非常に厳格化されています。特に、役員が外国人のみの会社に対する審査は一層厳しく、口座開設が困難になるケースも少なくありません。
法人口座開設に必要な書類は以下のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(発行から6ヶ月以内)
- 法人の印鑑証明(発行から6ヶ月以内)
- 取引担当者の公的な本人確認書類(在留カード、マイナンバーカード等)
- 許認可、届出、登録等の完了が確認できる書類(営業許認可が必要な業種の場合のみ)
税務署・年金・労働保険などのその後の届出も重要
会社設立後は、税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク等への一連の届出が必要です。
これらはすべて日本語の書類で行い、提出期限付きでの対応が義務となっています。
外国人が設立した会社で経営・管理ビザを取るには?
会社設立から各種届出を完了したのち、出入国在留管理局へ経営・管理ビザ申請を行います。
案件や時期によって審査期間は異なりますが、一般的に2〜3ヶ月程度の期間を要します。
事業計画書や損益計画表等のビザ申請書類の準備にも時間がかかるため、会社設立や届出と同時進行で行います。
設立だけでは不十分:ビジネスの「実態」が必要
「ビザ」の壁で紹介したように、経営・管理ビザを取得するためには、3つの要件を満たす必要があります。また、事業の安定継続性についても詳細に説明しなければいけないため、ビジネスの「実態」が必要不可欠です。
無料相談やサポートサービスの案内
このページでは、日本において外国人が1人で会社設立する場合の要件と経営・管理ビザについて解説しました。
経営・管理ビザは満たすべき要件や立正資料が多岐に渡り、取得が難しいビザの一つです。
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