テーマ別コラム

日本に支店を設ける場合と子会社を設ける場合の比較
- 2026年04月27日


日本への進出を検討している海外企業にとって、最初の壁となるのが「どのような形で日本に拠点を構えるか」という選択です。大きく分けると、子会社(日本法人)の設立、支店の設置、駐在員事務所の開設という3つの方法があります。それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、事業内容や目的によって最適な選択肢は変わります。
この記事では、3つの進出形態の違いを整理し、どのような企業にどの方法が向いているかを、設立手続・税務・ビザの観点も交えて詳しく解説します。
子会社とは、海外の親会社とは別に、日本国内で独立した法人を新たに設立する方法です。最も一般的な進出形態であり、株式会社または合同会社として設立するケースがほとんどです。
法的な独立性が最大の特徴です。子会社は日本法に基づく独立した法人であるため、契約の締結、銀行口座の開設、従業員の採用、許認可の取得など、日本での事業活動をフルに行うことができます。また、親会社と法的に切り離されているため、子会社が負った債務や法的リスクは原則として親会社には及びません。これはリスク管理の観点からも重要なポイントです。
設立手続の流れ(株式会社の場合)
子会社として株式会社を設立する場合、大まかに以下の流れで手続が進みます。
まず、会社の基本情報(商号・本店所在地・事業目的・資本金・役員構成など)を決定し、定款を作成します。定款は公証人による認証が必要です。次に、資本金を払い込み、法務局に設立登記を申請します。登記が完了すると法人として正式に成立し、その後、税務署・都道府県・市区町村への届出、社会保険の加入手続などを行います。
設立から登記完了まで、スムーズに進んでも通常2〜4週間程度かかります。代表者が外国在住の場合や、必要書類の収集に時間がかかる場合はさらに長くなることがあります。
支店とは、海外の本社(外国会社)がそのまま日本国内に営業拠点を設ける形態です。日本に独立した法人を設立するのではなく、外国会社の一部として日本法務局に登記を行います。
子会社と異なり、支店は本社と法的に一体です。支店が行った取引や負った債務は、最終的に本社に帰属します。そのため、支店の活動が本社のリスクに直結する点には注意が必要です。
支店の設置登記では、外国会社の登記証明書・定款・役員に関する書類などを用意し、日本語翻訳を添付したうえで法務局に申請します。外国語書類が多く、各国の公証・認証手続が必要になるため、書類収集に時間がかかるケースも少なくありません。また、日本における代表者(日本における代表者)を定める必要があり、その人物が日本国内に住所を持つことが求められます。
駐在員事務所は、日本での営業活動を行わない拠点です。市場調査、情報収集、本社との連絡・調整などを目的とした事務所であり、日本での売上を立てる取引を直接行うことはできません。
法務局への登記は不要で、設置のハードルが最も低い形態です。ただし、営業活動の禁止という制約が厳しく、実際にビジネスを動かす段階になれば、子会社または支店への移行が必要になります。
| 項目 | 子会社(日本法人) | 支店 | 駐在員事務所 |
| 法的独立性 | あり(独立した法人) | なし(本社と一体) | なし |
| 営業活動 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 許認可取得 | 可能 | 条件による | 不可 |
| 設立コスト | 高め | 中程度 | 低い |
| 本社へのリスク波及 | 限定的 | 直接波及 | 限定的 |
| 登記 | 必要 | 必要 | 不要 |
進出形態によって、税務上の取り扱いも異なります。
子会社は、日本の法人として独立しているため、日本国内で発生した所得に対して日本の法人税が課されます。親会社への配当送金は、租税条約の内容によって源泉徴収税率が変わることがあります。
支店は、日本国内で稼得した所得に対して課税される点は子会社と同様ですが、本社との取引(内部取引)に関する移転価格の問題や、本支店間の費用配分の取り扱いが複雑になりやすい点が特徴です。また、支店から本社への利益送金(送金利子)に対して税負担が生じる場合もあります。
駐在員事務所は、原則として収益を生まないため、通常は日本での課税関係が生じません。ただし、実態として営業活動を行っていると認定された場合は、恒久的施設(PE)として課税される可能性があります。
税務上の取り扱いは事業内容や親会社の所在国によっても異なるため、日本の税理士への相談を並行して進めることをお勧めします。進出形態の選択が後から変更しにくい場合もあるため、設立前の段階で税務上の論点を確認しておくことが重要です。
見落とされがちですが、日本進出の形態は代表者や駐在員の在留資格(ビザ)の申請とも深く関わっています。
たとえば、子会社または支店が設立されていれば、代表者は「経営・管理」の在留資格(いわゆる経営管理ビザ)を申請する前提が整います。経営管理ビザの取得には、日本に設立された法人(または支店)の存在が原則として必要であり、事業実態が認められることが審査のポイントとなります。
一方、駐在員事務所の場合は、活動内容が営業行為に該当しないと判断されるため、経営管理ビザの取得が難しくなります。「企業内転勤」の在留資格を活用するケースもありますが、要件や審査の観点が異なります。
このように、法人設立の形態とビザの取得はセットで考える必要があります。設立手続を進めた後にビザ申請でつまずくケースも実務上は少なくないため、最初の段階から両方の論点を整理しておくことが重要です。
最後に、日本進出の実務でよく見られる失敗パターンをいくつか紹介します。
「会社設立さえすれば大丈夫」と思ってしまう
会社設立はスタートに過ぎません。許認可が必要な業種では、設立後に許認可申請を経て初めて営業が可能になります。また、代表者の来日にはビザ取得が必要なため、設立とビザ申請を並行して進める段取りが欠かせません。資本金の額や事務所の実態など、設立時の意思決定がビザ審査にも影響することがあるため、最初の段階から全体を見据えた判断が求められます。
書類の準備を後回しにしてしまう
支店設置の場合、外国語書類の翻訳・認証に予想以上の時間がかかることがあります。また、経営管理ビザの申請では、事業計画書や事業実態を示す書類の準備が重要です。これらを後から慌てて揃えようとするとスケジュールが大幅に遅れることがあるため、早めに必要書類を洗い出しておくことが重要です。
専門家への相談が縦割りになってしまう
登記は司法書士、税務は税理士、ビザは行政書士と、それぞれ別の専門家に個別相談しているうちに、全体の整合性が取れなくなるケースがあります。たとえば、司法書士に設立登記を依頼したものの、ビザ申請に必要な事業実態の整備が後手に回り、結果としてビザ審査が長期化するといった事態も起こりえます。日本進出では複数の手続が連動しているため、全体を一括して整理できる窓口を持つことが、スムーズな進出への近道です。
海外企業が日本に進出する方法は、子会社・支店・駐在員事務所の3つに大別されます。それぞれの特徴を正しく理解したうえで、事業内容・スケジュール・コスト・ビザの論点をあわせて整理することが、スムーズな日本進出への第一歩です。
「どの形態が自社に合っているかわからない」「会社設立のほかに何が必要か整理したい」という方は、まずは専門家への相談から始めることをお勧めします。行政書士法人タッチでは、初回相談を無料で承っており、日本進出に必要な実務を全体から整理したうえでご案内しています。
| 2018年8月 | ビザ申請・帰化申請専門の「ゆだ行政書士事務所」設立 |
|---|---|
| 2022年4月 | 個人事務所を行政書士法人化「行政書士法人タッチ」 |
| 専門分野 | 外国人在留資格、帰化申請 外国人ビザ関係を専門とし、年間1000件以上の相談に対応 |
| セミナー実績 | 国際行政書士養成講座、公益財団法人戸田市国際交流会、埼玉県日本語ネットワーク、行政書士TOP10%クラブ、行政書士向け就労ビザ講習会など多数 |
| 運営サイト | 行政書士法人タッチ 国際結婚&配偶者ビザサポートセンター 帰化申請サポートセンター 就労ビザサポートセンター 永住ビザサポートセンター 経営管理ビザサポートセンター アメリカビザサポートセンター ビザサポートセンター |
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