経営管理ビザ

日本に会社を設立するまでの流れ―株式会社と合同会社はどちらがいいか

海外企業や外国人起業家が日本で事業を始めようとするとき、まず直面するのが「どのような会社形態で設立するか」という選択です。日本には複数の会社形態がありますが、実務上よく使われるのは株式会社合同会社の2種類です。

この記事では、株式会社と合同会社の違いを整理したうえで、日本に会社を設立するまでの具体的な流れをステップごとに解説します。

株式会社と合同会社、何が違うのか

株式会社(KKKabushiki Kaisha

株式会社は、日本で最も普及している会社形態です。株式を発行して資金を調達し、株主と経営者が分離できる構造を持っています。社会的な知名度・信頼度が高く、取引先や金融機関からの信用を得やすいのが特徴です。

一方で、設立手続において定款の公証人認証が必要であり、その費用(約5万円)が合同会社にはかかりません。また、決算公告の義務があるなど、運営上の義務も比較的多い形態です。

合同会社(GKGodo Kaisha

合同会社は、2006年の会社法改正によって導入された比較的新しい会社形態です。LLC(Limited Liability Company)に近い概念で、出資者(社員)が直接経営に参加する構造です。

設立費用が株式会社より低く(登録免許税が6万円→株式会社は15万円)、定款認証も不要なため、スピーディーに設立できます。Apple Japan、Amazon Japan、Google Japanなど外資系企業が合同会社を選ぶケースも多く、近年認知度が高まっています。

どちらを選ぶべきか

項目 株式会社 合同会社
設立費用の目安 約25万円〜 約10万円〜
定款認証 必要(約5万円) 不要
登録免許税 15万円〜 6万円〜
社会的信用度 高い やや低い(認知度向上中)
決算公告 義務あり 不要
経営の柔軟性 やや低い 高い

日本での本格的な事業展開、取引先への信用が重要な場合は株式会社が無難です。一方、コストを抑えたい、外資系企業として日本法人を設ける場合は合同会社も有力な選択肢です。

経営管理ビザの取得を前提とする場合、株式会社・合同会社どちらでも要件を満たすことができますが、事業実態や申請内容によって判断が変わることもあるため、専門家への確認をお勧めします。

会社設立の流れ(ステップごとに解説)

Step 1:基本事項の決定

会社設立に先立って、以下の基本事項を決定する必要があります。

  • 商号(会社名):日本語・英語・カタカナなど使用できる文字の規定があります
  • 本店所在地:登記上の住所。バーチャルオフィスの使用可否は業種・ビザの種類によります
  • 事業目的:定款に記載する事業内容。許認可が必要な業種は目的の書き方に注意が必要です
  • 資本金の額:1円から設立可能ですが、経営管理ビザを見据える場合は3,000万円以上が必要です(2024年の要件変更による)
  • 役員構成:代表取締役(株式会社)または代表社員(合同会社)を定めます
  • 株主・出資者構成:誰がどれだけ出資するかを決定します

これらの決定は、後のビザ申請や許認可手続にも影響するため、最初の段階で慎重に整理することが重要です。

Step 2:定款の作成・認証

株式会社の場合、定款を作成したうえで公証人による認証を受ける必要があります。公証役場での認証には事前予約が必要で、費用は約5万円です。

合同会社の場合、定款の作成は必要ですが公証人認証は不要です。

Step 3:資本金の払込み

定款認証後、出資者の個人口座(代表者等の口座)に資本金を振り込みます。この時点ではまだ法人口座が存在しないため、個人口座への払込みで代替します。払込みの事実を示す「払込みがあったことを証する書面」を作成し、登記申請に添付します。

Step 4:登記申請(法務局)

設立に必要な書類一式を揃え、本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 設立登記申請書
  • 定款(株式会社は認証済みのもの)
  • 払込みがあったことを証する書面
  • 代表取締役・取締役の就任承諾書
  • 印鑑届書
  • 登録免許税(収入印紙)

申請から登記完了まで、通常7〜10営業日程度かかります。登記が完了すると法人として正式に成立し、登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の取得が可能になります。

Step 5:各種届出・口座開設

登記完了後、以下の届出・手続を行います。

税務関係

  • 税務署への法人設立届出書(設立後2ヶ月以内)
  • 都道府県・市区町村への法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書(任意だが節税効果があるため多くの場合提出)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇用する場合)

社会保険関係

  • 健康保険・厚生年金の新規適用届(年金事務所)
  • 労働保険の成立届(労働基準監督署・ハローワーク)※従業員を雇用する場合

銀行口座の開設

法人口座の開設は、登記事項証明書・定款・代表者の本人確認書類等が必要です。近年、外国人代表者や設立直後の法人に対して審査が厳しくなっている金融機関もあるため、余裕を持って手続を進めることが重要です。

設立にかかる期間の目安

フェーズ 期間の目安
基本事項の決定・定款作成 1〜2週間
定款認証(株式会社) 数日〜1週間
資本金払込み 数日
登記申請〜完了 1〜2週間
各種届出・口座開設 1〜3週間
合計 約1〜2ヶ月

スムーズに進んだ場合でも、設立着手から事業開始できる状態になるまで1ヶ月以上かかることが一般的です。経営管理ビザの申請も並行して進める場合は、さらにスケジュールに余裕を持つ必要があります。

海外在住の方が設立する場合の注意点

代表者が海外在住の場合、以下の点に注意が必要です。

印鑑証明書の取得:日本の法人設立では、代表者の印鑑証明書が必要になります。外国人の場合、日本の市区町村に住民登録がなければ日本の印鑑証明書が取れないため、サイン証明書(在外公館発行)などで代替する手続が必要になる場合があります。

公証・認証書類:外国在住の方が作成する書類には、現地の公証・アポスティーユ(外国公文書の認証)が求められることがあります。

来日の要否:手続の一部(公証役場での認証、銀行口座開設など)は来日対応が必要なケースがあります。行政書士・司法書士に依頼することで、代理対応できる範囲もあります。

外国語書類の取り扱い:外国の法人が出資者となる場合、その法人の登記証明書や定款など外国語書類を日本語に翻訳して提出する必要があります。翻訳の精度や書類の取得に時間がかかることもあるため、早めに準備を始めることをお勧めします。

日本の住所の確保:登記上の本店所在地として使用できる住所が必要です。バーチャルオフィスを利用する場合、業種や経営管理ビザの申請において利用可能かどうかを事前に確認する必要があります。実態のある事務所が求められるケースもあるため、住所の選択は慎重に行いましょう。

株式会社・合同会社以外の選択肢は?

日本には株式会社・合同会社のほかに、合名会社・合資会社という会社形態もありますが、現在の実務ではほとんど使われません。海外企業の日本進出においては、株式会社か合同会社の二択で検討するのが一般的です。

また、株式会社と合同会社の選択は、設立後の運営コストにも影響します。株式会社は決算公告の義務があり、役員の任期(最長10年)に応じた重任登記も必要です。合同会社にはこれらの義務がないため、設立後の維持コストを抑えたい場合に有利です。ただし、将来的に株式を発行して資金調達を行いたい、上場を目指したいという場合は、株式会社一択になります。事業の将来像も踏まえて形態を選ぶことが重要です。経営管理ビザの取得には法人の設立が前提となるため、在留資格を必要とする外国人の方には基本的に会社設立が必要です。

設立後に必要な許認可・ビザの手続も忘れずに

会社設立が完了しても、それだけで事業を開始できるとは限りません。業種によっては、別途許認可の取得が必要です。たとえば、飲食業であれば保健所の営業許可、建設業であれば建設業許可、人材派遣業であれば労働者派遣事業許可などが必要になります。許認可によっては申請から取得まで数ヶ月かかるものもあるため、会社設立と並行して許認可の要否を早めに確認することが重要です。

また、代表者や役員が外国籍の場合、在留資格(ビザ)の申請も必要です。経営管理ビザの申請では、会社の設立登記が完了していること、事務所の確保、事業の実態などが審査されます。設立のタイミングとビザ申請のタイミングを適切に設計しないと、来日が遅れたり、申請が不許可になるリスクもあります。特に経営管理ビザでは、事業の継続性・安定性が審査されるため、設立直後から事業実態を積み上げていく姿勢が重要です。

会社設立・許認可・ビザ申請は、それぞれが独立した手続でありながら、互いに密接に連動しています。全体を見据えて計画的に進めることが、スムーズな日本進出の鍵となります。

まとめ

日本での会社設立は、基本事項の決定から始まり、定款作成・認証、資本金払込み、登記申請、各種届出という流れで進みます。株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、コスト・信用度・経営の柔軟性・ビザの要件などを総合的に判断する必要があります。

「どちらの形態が自社に合っているかわからない」「海外から設立手続を進めたい」という方は、ぜひ一度専門家にご相談ください。行政書士法人タッチでは、会社設立から経営管理ビザの申請まで、日本進出に必要な実務をワンストップで支援しています。設立前の段階からご相談いただくことで、形態の選択・書類準備・ビザ申請の段取りを一貫して整理することが可能です。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

専門分野
外国人ビザ(在留資格)・帰化
主な取扱業務

・外国人在留資格申請、帰化
・対日投資に関する支援業務
 (経営管理ビザ,対日投資コンサルティング等)
・外国人材の雇用、技能実習監理、特定技能登録支援業務

開業以来、国際業務を専門とし、
年間1,000件以上の在留資格・帰化実務に対応

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