海外企業や外国人起業家が日本で会社を設立する際、「どのような書類を用意すればよいか」は最初に把握しておきたいポイントです。書類の種類は多く、取得に時間がかかるものもあるため、早めに全体像を整理しておくことが重要です。
この記事では、日本法人(株式会社・合同会社)の設立に必要な書類と手続を、代表者が外国在住の場合の注意点も含めて整理します。
設立に必要な書類の全体像
日本法人の設立に必要な書類は、大きく「会社に関する書類」と「人に関する書類」に分けることができます。
会社に関する書類
定款
定款は、会社の基本的なルールを定めた書類です。商号・本店所在地・事業目的・資本金・役員構成などを記載します。株式会社の場合は、作成後に公証人による認証を受ける必要があります。合同会社の場合は認証不要ですが、定款の作成自体は必要です。
定款の事業目的の書き方は、後の許認可申請やビザ審査にも影響します。たとえば、飲食業・建設業・不動産業など、特定の許認可が必要な業種は、定款の目的に適切な記載がなければ許認可を取得できない場合があります。定款作成は専門家に依頼することをお勧めします。
払込みがあったことを証する書面
資本金の払込みが完了したことを示す書類です。代表者等の個人口座への振込明細(通帳のコピー等)をもとに作成します。払込みは定款認証後に行う必要があるため、手続の順序に注意が必要です。
設立登記申請書
法務局に提出する登記申請書です。会社の基本情報(商号・本店所在地・資本金・役員等)を記載します。
登録免許税(収入印紙)
設立登記には登録免許税が必要です。株式会社は資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社は資本金の0.7%(最低6万円)です。
人に関する書類
代表者・役員の就任承諾書
代表取締役(株式会社)または代表社員(合同会社)が就任を承諾したことを示す書類です。本人の署名が必要です。
印鑑届書と印鑑証明書
日本の法人登記では、代表者の印鑑(実印)を法務局に届け出る必要があります(印鑑届書)。また、その印鑑に対応した印鑑証明書も添付書類として必要になる場面があります。
日本に住民登録のある方は、市区町村で印鑑登録を行い、印鑑証明書を取得できます。一方、日本に住民登録のない外国人の場合は、日本の印鑑証明書が取得できません。 この場合、本国の公証機関が発行するサイン証明書(署名証明書)などで代替する手続が必要になります。
外国人・外国在住者に追加で必要な書類
代表者や役員が外国人・外国在住者の場合、以下の書類が追加で必要になることがあります。
パスポートのコピー
本人確認書類として、パスポートのコピーが必要です。
在留カードのコピー(日本在住の外国人の場合)
日本に在住している外国人は、在留カードのコピーを本人確認書類として使用できます。
サイン証明書(海外在住者の場合)
日本の印鑑証明書の代わりとして、在外公館(日本大使館・領事館)が発行するサイン証明書(署名証明書)を使用する方法があります。取得には在外公館への予約・来館が必要で、国によっては数週間待つケースもあります。
外国会社の登記証明書・定款(外国法人が出資者の場合)
外国の法人が出資者として参加する場合、その法人の登記証明書・定款の提出が求められます。これらは外国語で書かれているため、日本語翻訳の添付が必要です。また、内容の真正を証明するアポスティーユ(外国公文書の認証)が必要な場合もあります。
アポスティーユ
アポスティーユとは、ハーグ条約に基づく外国公文書の認証制度です。日本法務局に提出する外国の公文書には、発行国のアポスティーユ(または大使館・領事館の認証)が必要になる場合があります。アポスティーユの取得は発行国の機関で行うため、取得に時間がかかることがあります。ハーグ条約の締約国であれば比較的手続がスムーズですが、非締約国の場合は領事認証という別の手続が必要になります。自国がどちらに該当するかを事前に確認しておきましょう。
設立後に必要な書類・届出
設立登記が完了した後も、以下の書類・届出が必要です。
税務関係の届出書類
| 届出書類 | 提出先 | 期限 |
| 法人設立届出書 | 税務署 | 設立後2ヶ月以内 |
| 法人設立届出書 | 都道府県・市区町村 | 設立後速やかに |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立後3ヶ月以内または最初の事業年度終了日のいずれか早い日 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 給与支払い開始後1ヶ月以内 |
社会保険関係の届出書類
| 届出書類 | 提出先 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 年金事務所 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | ハローワーク(従業員雇用時) |
| 労働保険 保険関係成立届 | 労働基準監督署(従業員雇用時) |
銀行口座開設に必要な書類
法人口座を開設するには、金融機関ごとに異なりますが、一般的に以下の書類が必要です。
- 登記事項証明書(設立後に法務局で取得)
- 定款(認証済みのもの)
- 代表者の本人確認書類(パスポート・在留カードなど)
- 代表者の住所確認書類
近年、マネーロンダリング対策の観点から、外国人代表者・設立直後の法人に対する口座開設審査が厳格化しています。複数の金融機関に申請する必要があるケースや、開設に1〜2ヶ月以上かかるケースもあります。事業開始に向けた資金の入出金が必要になる前に、早めに口座開設の手続を始めることが重要です。また、ネット銀行やフィンテック系の決済サービスを補完的に活用する企業も増えています。
許認可・ビザ申請に必要な追加書類
会社設立の書類とは別に、許認可申請や経営管理ビザの申請には独自の書類が必要です。主なものを整理します。
経営管理ビザ申請に必要な主な書類
| 書類 | 概要 |
| 在留資格認定証明書交付申請書 | 入管に提出する申請書 |
| 事業計画書 | 事業内容・収支計画・市場分析などを記載 |
| 登記事項証明書 | 法人設立の証明 |
| 事務所の賃貸借契約書 | 事業実態の証明 |
| 直近の決算書(既存法人の場合) | 事業の継続性・安定性の証明 |
| 代表者のパスポートコピー | 本人確認 |
| 申請人の学歴・職歴証明書 | 経営能力の証明 |
経営管理ビザの審査では、事業計画書の内容が特に重視されます。市場分析・具体的な集客方法・収支見込みなどを具体的に記載する必要があり、抽象的な内容では審査が通りにくい傾向があります。専門家のサポートを受けながら作成することをお勧めします。
許認可申請に必要な書類(例:建設業許可)
建設業許可の場合、以下のような書類が必要です。
- 許可申請書
- 工事経歴書
- 財務諸表(直近5年分)
- 経営業務管理責任者の証明書類(経歴・資格等)
- 専任技術者の証明書類(資格証・実務経験証明等)
- 誓約書・登記されていないことの証明書など
許認可の種類によって必要書類は大きく異なります。設立前の段階で、自社の事業に必要な許認可とその要件・必要書類を確認しておくことが重要です。
書類準備のポイントと注意点
外国語書類は早めに手配する
アポスティーユの取得・サイン証明書の取得・外国語書類の翻訳など、海外で取得・対応が必要な書類は時間がかかります。設立の意思が固まったら、すぐに必要書類のリストを確認し、手配を始めることが重要です。特に、在外公館(大使館・領事館)での手続は予約が必要な場合が多く、混雑期には数週間待つこともあります。書類の手配は「早すぎる」ということはありません。
書類の不備は手続を大幅に遅延させる
登記申請書類に不備があると、法務局から補正を求められ、手続が遅延します。特に外国語書類の翻訳精度や、アポスティーユの要否については、専門家に事前確認を取ることをお勧めします。一度不備が生じると、書類の再取得・再翻訳が必要になる場合もあり、数週間単位のロスが生じることがあります。最初から専門家を活用することがトータルで見て効率的です。
定款の事業目的は慎重に決める
定款は一度作成・認証すると変更が難しく、変更する場合は追加費用がかかります。事業目的の記載は、現在の事業だけでなく、将来展開する予定の事業も含めて記載しておくことが実務上有効です。許認可が必要な業種の目的記載については専門家の確認を受けることが重要です。また、事業目的が曖昧すぎると許認可審査やビザ審査において説明が難しくなるため、具体性と網羅性のバランスが大切です。
翻訳の精度にも注意する
外国語書類の日本語翻訳は、正確性が求められます。翻訳の誤りや不自然な表現が原因で、審査に時間がかかったり、補正を求められたりするケースがあります。公的書類の翻訳は、専門の翻訳者または行政書士等の専門家に依頼することをお勧めします。
デジタル化の動きにも注目する
近年、日本でも行政手続のデジタル化が進んでいます。法務局へのオンライン申請(商業登記電子申請)や、税務署への電子申告(e-Tax)などが普及しており、書類の提出方法も変わりつつあります。ただし、外国語書類の添付が必要なケースなど、依然として書面対応が必要な場面も多く残っています。最新の手続方法は専門家に確認することをお勧めします。
まとめ
日本法人の設立に必要な書類は多岐にわたり、代表者が外国在住・外国籍の場合はさらに手配が複雑になります。全体の書類リストを早めに把握し、海外での取得が必要なものから優先的に手配することがスムーズな設立への近道です。
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