「資本金3,000万円の新基準を満たしていないから、経営・管理ビザが更新できないのではないか」
――そうしたニュースや噂を耳にして、不安を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし実は、経営・管理ビザを更新できない「本当の理由」は、新要件を満たしていないことではありません。
本記事では、既存のビザ保持者に対する「3年間の猶予期間」の実態と、更新許可を得るために審査で本当に見られている「5つの重要な要件」を、行政書士が徹底解説します。次回の更新に向けて今から何を改善し、何を準備すべきかを整理していきましょう。
- 2028年10月までの「3年間の猶予期間」と、猶予期間後の運用ルール
- 更新許可を得るための5つの要件
- 租税関係法令の遵守
- 労働法・社会保険法令の遵守
- 事業の継続性があること
- 活動実態があること
- 在留中の出国が合理的な範囲内であること
3年間の猶予期間とは
既に「経営・管理」の在留資格で在留している方が、施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の許可基準に適合する見込み等を踏まえて許否判断が行われます。
なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書の提出が求められる場合があります。
このように、既存の経営・管理ビザ保持者には3年間の猶予期間が設けられています。現時点で新要件を満たしていないからといって、直ちに更新申請が不許可になるわけではありません。
不許可となるケースは、自ら経営活動を行っていない、債務超過にもかかわらず改善計画を示していないなど、別の問題があると考えられる場合です。法律に沿ってきちんと活動している方が、直ちに更新不許可になるわけではありませんので、正しい情報に基づいて準備を進めることが大切です。
猶予期間後の運用
施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の許可基準に適合する必要があります。つまり、2028年10月以降の更新申請については、原則として新要件を満たしていなければなりません。
ただし、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、次の要件をすべて満たすときは、その他の在留状況を総合的に考慮して許否判断が行われるという注釈規定があります。
- 経営状況が良好であること
- 法人税等の納付義務を適切に履行していること
- 次回更新申請時までに改正後の許可基準を満たす見込みがあること
※「高度専門職1号ハ」(「経営・管理」活動を前提とするもの)についても、「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提となるため、上記と同様の取り扱いとなります。
ただし、この注釈規定に関する運用基準は、現時点では決まっておりません。つまり、何が「経営状況が良好」と評価されるのか、何があれば「次回までに要件を満たす見込み」と判断されるのか。これらは、今後入管庁が定め、適宜公開がされるということになります。
【実務家の視点】これだけ急激な改正を行ったのであれば、結果として不安定な立場に置かれる外国人経営者やそのご家族が多数発生することは、政府としても想定できたはずです。だからこそ、この注釈規定の運用基準を早期に公表すること――これを、現場の実務家として強く要望します。運用基準が公表されれば、いま更新に不安を感じている方々も、猶予期間終了に向けた準備に、適切に動き出すことができます。
更新許可を得るための5つの要件
ここからは、更新審査で実際に確認される5つの要件を一つずつ解説します。新要件を満たしていない場合であっても、以下の5つの要件を満たしていなければ、更新は許可されません。
1. 租税関係法令の遵守
国税および地方税を適切に納付している必要があります。事業所として納付すべき以下の国税・地方税に係る納付状況が確認されます。
法人の場合
- 国税:源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税
- 地方税:法人住民税(都道府県民税・市区町村民税)、法人事業税
個人事業主の場合
- 国税:源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税
- 地方税:個人住民税(都道府県民税・市区町村民税)、個人事業税
これらに未納があれば不許可の原因になります。心当たりのある方は、直ちに納付の手続きを行ってください。
2. 労働法・社会保険法令の遵守
- 雇用する従業員(アルバイトを含む)の労働条件が、労働関係法令に適合していること
- 労働保険の適用事業所である場合は、当該保険の加入手続きを適正に行い、保険料を適切に納付していること
- 健康保険及び厚生年金保険の適用事業所である場合は、当該保険の加入手続きを行っていること、及び雇用する従業員の資格取得手続きを行い、保険料を適切に納付していること
※ 社会保険への加入義務のない個人事業主の場合、各職員の国民健康保険への加入状況の提出は不要です。ただし、社会保険の強制適用事業所に該当しないことの説明と、個人事業主自身の国民健康保険への加入状況の提出が必要です。
租税関係法令・労働法・社会保険法令に不履行がある場合
義務の不履行またはその疑いが認められた場合、申請人には追完書類として、入管より「是正状況の確認書」の提出が求められます。例えば、納税をしていない、労働保険・社会保険に加入していない、あるいは未納があるといった状況に対して、入管が「どうなっているのか」を確認するための書類です。事業主としては是正に向けた対応を取っていくことになりますが、その対応の結果によって、更新の許否が変わってきます。取り扱いは次の3区分です。
- 是正が認められる場合
- 是正に向け手続き中であると認められた場合
- 是正が認められない場合(回答がない場合を含む)
これら①〜③に対する具体的な取り扱いは、入管審査要領において黒塗りとなっており、詳細は公表されていません。実務上の推測としては、①は問題なし、③は不許可理由に該当、②は不履行に合理的な理由があり現在是正に向け手続き中であることが証明できれば今回は問題なしとされ、次回更新時に状況が精査される、と考えられます。
【②の具体的なイメージ】本来は社会保険料も納税もしなければなりませんが、どうしてもキャッシュが足りず支払いが遅延している、というケースがあります。この場合でも、「こういった改善計画があり、いつまでに遅延分を支払う予定である」ということをきちんと証明できれば、今回限りは更新が許可されるだろう、というのが実務上の推測です。いずれにしても、税・社会保険料は法律に沿って加入し、きちんと全額を支払うことが大前提です。
3. 事業の継続性
事業の継続性がなければ、当然、更新は許可されません。事業の継続性については、原則として決算状況によって判断されます。既存会社の場合の判断基準は以下のとおりです。
| 決算の状況 | 取り扱い・必要な対応 |
|---|---|
| 直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない | 事業の継続性に問題なし |
| 直近期末において欠損金があるが、直近期末において債務超過となっていない | 事業計画書及び予想収益を示した資料が必要 |
| 直近期末において欠損金があり債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっていない | 中小企業診断士や公認会計士等が改善の見通しにつき評価した書面の提出が必要 |
| 直近期末において欠損金があり、直近期末及び直近期前期末ともに債務超過 | 事業の継続性は認められない。(独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等を展開する新興企業は例外措置もあり) |
単に赤字(欠損金あり・債務超過なし)の場合は、事業計画書と予想収益を示した資料を提出すれば問題ありません。直近期で債務超過に陥っている場合は、改善計画書を必ず提出し、あわせて中小企業診断士や公認会計士等の評価書を添付することになります。
2期連続で債務超過となっている場合は、原則として事業の継続性は認められません。ただし、独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデルを展開する新興企業には例外措置もあります。2期連続の債務超過だからとここで諦めるのではなく、今後の事業モデル・計画・改善書をきちんと提出していくことが求められます。
※ 直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合
企業の主たる業務において売上総利益がない、すなわち売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業活動を行っているものとは認められません。原則として事業の継続性がないと判断されます。
【売上総利益がない、とは】例えば、優れた日本製のペンを大量に仕入れて海外に販売する事業であれば、仕入原価50円・販売価格100円というように、通常は利益が積み上がっていきます。ところが「売上高が売上原価を下回る」というのは、50円で仕入れたものを100円で売っているような状態です。通常の経営を行っていれば、まず起こり得ません。だからこそ、売上総利益がない場合は事業の継続性が認められない、と判断されるのです。
4. 活動実態
旧要件では、要件のハードルの低さから、移住や医療を目的とした「経営実態のない申請」が横行していました。今回、この活動実態について、ガイドラインで明確に定められました。
業務委託を行うなどして、経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められません。
例えば、業務の大半を外部に委託し、日常的に申請人本人による経営活動を行っていない場合や、具体的な事業内容・財務状況など経営者として本来把握すべき情報を把握していない場合などが、これに該当すると想定されます。
【民泊・不動産賃貸のケースに要注意】話題になった民泊や不動産の賃貸収入が典型例です。1億円で物件を購入してビザを取得し、あとは管理会社に丸投げで自分は何も事業を行っていない――このような場合は、更新できません。 一方、不動産ビジネスで経営・管理ビザを維持すること自体は可能です。継続したいのであれば、管理会社に丸投げするのではなく、自ら管理業務を行うこと。そして、事業を広げるために、A物件だけだったところをB物件・C物件と、経営者として購入を検討・実行し、民泊や賃貸収入で売上を上げていく。このように、実態のある経営活動を行わなければ更新は許可されません。なお、不動産事業からスタートして別の事業を行っても構いませんし、不動産事業にこだわる必要もありません。ただ、管理会社に丸投げしているだけでは、更新は取れません。
5. 在留中の出国
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして、在留期間更新許可は認められません。これも、今回新たにガイドラインで明確化されました。
判断は個々の在留状況に応じて行われますが、一般論としては、決定された在留期間のうち累計でその過半を超える期間について、再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む)をしている場合には、正当な理由があるときを除き、在留期間更新に係る審査において消極的な要素として評価されることになります。
【具体例】例えば、経営・管理ビザの在留期間が1年付与され、そのうち半年間を海外で過ごしていた――このような場合は、日本できちんと経営活動を行っているとは認められません。
この「活動実態」と「在留中の出国」という2つの論点は、非常に重要です。これまでは、投資をして少し経営活動をしていれば更新の許可が出ていたかもしれません。しかし、今後はそれが一切通用しません。投資をしたうえで、必ず自ら経営活動を行ってください。不動産や民泊物件を購入し、管理会社に投げて、自分はわずかに手伝っているだけ――これでは更新は取れません。日本にいて、自ら経営活動を行う。これが更新のための許可要件です。現在、管理会社に丸投げして経営実態のない方は、このままでは更新許可を取得できませんので、経営活動の実態が伴う事業に切り替えていただく必要があります。
まとめ
本記事では、経営・管理ビザを更新できない「本当の理由」と、各更新要件について解説しました。
お伝えしたとおり、2028年10月16日までの3年間は猶予期間が設けられており、新基準に適合していなくても、経営状況や今後の見込み等によって更新の判断が行われます。また、猶予期間終了後であっても、経営状況が良好で税金を適切に納付しており、次回更新までに基準を満たす見込みがあれば、在留状況を総合的に考慮して判断される救済措置の規定も存在します。
つまり、ビザが更新できなくなる本当の理由は、次のような根本的なルール違反にあります。
- 税金や社会保険を適切に払っていない
- 決算で直近2期連続で売上総利益がない、債務超過であるなど、事業の継続性が認められない
- 業務を外部に委託しすぎて、経営の活動実態がない
- 在留期間の過半を超えるような長期間の出国をしている
「資本金が足りないから」とすぐに諦めて事業をたたむ必要はありません。まずは税金や保険の納付、経営活動の実態証明など、当たり前の義務をしっかりと果たすことが何よりも重要です。
ただし、万が一義務の不履行があった場合の「是正状況の確認」への対応や、赤字・債務超過の際に求められる事業計画書、さらには中小企業診断士等の評価書の提出など、専門的な対応が求められるハードルは確実に上がっています。
次回の更新に不安がある方はお早めにご相談ください
次回の更新に少しでも不安がある方や、赤字決算でどのように対策すべきか悩んでいる方は、手遅れになる前に、お早めに専門家へご相談ください。国際業務を専門とする行政書士法人タッチが、御社の大切な事業を守るためのサポートをいたします。
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