経営管理ビザ

外国法人の日本進出ガイド――何を・どの順番で・いつまでに? 進出の全体像とスケジュール【入口】

「日本に進出したいが、何から手をつければいいか分からない」――これは、海外企業の経営者・ご担当者から最も多くいただくご相談です。会社設立・許認可・在留資格(ビザ)・税務・労務と手続きは多岐にわたり、担当する専門家もそれぞれ異なるため、全体像が見えないまま個別に動くと「登記は終わったのにビザが下りない」「口座が作れず資本金を動かせない」といった停滞が起こりがちです。本記事では、外国法人の日本進出の全体像を、5つの領域・4つのフェーズ・時間のかかる3つの工程に整理し、自社に合うパターン(子会社+企業内転勤/経営・管理/駐在員事務所)の見極めまでを、国際業務を専門とする行政書士がやさしく解説します。

この記事でわかること

  • 日本進出を構成する「5つの領域」と、会社設立の流れを含む全体像
  • 進出全体の4フェーズ・スケジュールと、時間がかかる3つの工程(クリティカルパス)
  • 「自社はどのパターンか」の見極め(子会社+企業内転勤/経営・管理/駐在員事務所)
  • シリーズ全記事への道案内と、最初の一歩(無料相談)

日本進出は「5つの領域」でできている

日本進出の手続きは複雑に見えますが、整理すると次の5つの領域に分けられます。本記事では、外国法人の会社設立の流れを含む日本進出の全体像を、この5領域に沿って俯瞰します。ここを押さえれば、進出の地図はほぼ手に入ります。

  • 形態選定 ― どの形で日本に拠点を置くか(子会社・支店・駐在員事務所)を決めます。最初の分岐点であり、その後の手続き・コスト・ビザの取りやすさを大きく左右します。
  • 会社設立 ― 定款(会社の基本ルールを定めた文書)の作成・認証、法人の設立登記などを行います。登記手続きは司法書士が担当します。
  • 許認可 ― 事業内容によっては、営業を始める前に行政機関の許可・届出が必要です(行政書士の担当領域)。「会社を作る=すぐ営業できる」とは限りません。
  • 在留資格(ビザ) ― 代表者や社員が日本で活動するための在留資格を取得します(行政書士〔国際業務〕の担当領域)。日常的に「ビザ」と呼ばれますが、正式には「在留資格」といいます。
  • 税務・労務 ― 法人税・消費税などの税務(税理士の担当)と、社会保険・雇用契約などの労務(社会保険労務士の担当)です。設立直後から期限のある手続きが始まります。

重要なのは、これら5領域が独立しておらず、相互に関連している点です。たとえば「資本金をいくらにするか」は会社設立の論点であると同時に、ビザの要件や銀行口座の審査にも影響します。「事業所をどこに置くか」も、設立・ビザ・許認可のすべてに関わります。だからこそ、領域ごとにバラバラに進めるのではなく、全体を見渡して段取りを組むことが欠かせません。

全体スケジュール:4つのフェーズと時系列

5つの領域を「いつ」進めるのか。進出は、おおむね次の4つのフェーズで進みます。まずは全体の流れと、各工程の担当・目安期間をつかんでください。

フェーズ 主な工程 主な担当 目安期間(概算)
第1:方針・形態の決定 進出目的の整理、進出形態(子会社/支店/駐在員事務所)の選定、事業計画の骨子づくり 行政書士(窓口)・経営者 数週間〜
第2:会社設立 定款の作成・認証、印鑑の準備、資本金の払込、設立登記、設立後の各種届出 司法書士(登記)・行政書士 約1〜2か月
第3:並行手続(許認可・ビザ・口座) 業種別の許認可申請、在留資格(COE)申請と査証取得、法人銀行口座の開設 行政書士・各専門家 約2〜4か月以上
第4:開業前後の手続と運営 税務署等への届出、社会保険・労働保険の適用、雇用契約の整備、事業開始 税理士・社労士・行政書士 設立後〜継続

※期間はあくまで一般的な目安です。事業内容・選ぶ拠点形態・自治体や審査機関の状況によって大きく変動します。とくに第3フェーズの許認可・ビザ・口座は、想定より時間がかかることが少なくありません。

ここで多くの企業が誤解しがちなのが、「設立 → 許認可 → ビザ → 開業」と一本道で順番に進めればよい、という考え方です。実際には、第2フェーズと第3フェーズは“同時並行”で動かすのが現実的です。ビザ審査では会社の事業実体(事務所・資本金・事業計画)が確認され、許認可も事業の準備状況と関わるため、設立がすべて終わるのを待ってから着手すると、全体が大きく後ろ倒しになるからです。順番と並行のさじ加減が、進出スピードを決めます(詳しくは「同時並行・段取り」の記事で解説します)。

見落とすと開業が遅れる「3つのクリティカルパス」

進出スケジュールには“律速工程”――つまり全体の所要期間を決めてしまうボトルネックがあります。クリティカルパスとは、工程全体の中で最も時間がかかり、その遅れがそのままプロジェクト全体の遅れに直結する経路のことです。外国法人の進出では、次の3つがとくに時間を要し、早めに着手しないとスケジュール全体が後ろ倒しになります。

  • 許認可
    業種によっては、許可が下りるまで営業を開始できません。たとえば中古品の売買には古物商許可、飲食店には営業許可が必要です。申請先(警察署・保健所・都道府県など)は業種ごとに異なり、書類審査や現地確認を経て許可が出るまで数週間〜数か月かかることがあります。「会社さえ作れば営業できる」と考えていると、ここで足止めされます。(→「許認可」の記事)
  • 在留資格(ビザ)
    代表者や社員が日本で働くには在留資格が必要です。海外から呼び寄せる場合は、(1)入管に在留資格認定証明書(COE:日本での活動が要件を満たすことを事前に証明する書類)を申請し、(2)本国の日本大使館・領事館で査証(ビザ)の発給を受け、(3)来日する、という多段階のプロセスを踏みます。審査だけでもおおむね3〜4か月程度を見込む必要があります(2025年10月の改正後は長期化傾向にあります)。さらに、後述する「経営・管理」の在留資格は2025年10月に要件が大幅に厳格化されました。(→「経営管理ビザ」の記事)
  • 銀行口座の開設
    法人の銀行口座は事業の生命線ですが、外資系・新設・外国人代表の法人に対する審査は近年とくに厳しく、開設までに時間がかかります。やっかいなのは、設立時の資本金の払込と口座開設が“ニワトリと卵”の関係になりやすい点です。事業の実体や住所をどう説明するかが鍵になります。(→「銀行口座」の記事)

この3つは、いずれも「申請してから結果が出るまで待つしかない」性質のものです。だからこそ、設立を終えてから始めるのではなく、できるだけ早く、並行して準備を進めることが、進出全体を遅らせないコツになります。

自社はどのパターンか――進出の3パターン診断

進出の進め方は、「誰が・何のために日本へ来るのか」によって変わります。とくに外国法人(企業)の場合、経営者本人が来日するとは限らないため、ビザの選び方が個人の起業家とは異なる点に注意が必要です。代表的な3つのパターンを見てみましょう。

パターンA:本社はそのまま、社員を派遣して日本子会社を運営したい

本国に本社があり、その社員や役員を日本の子会社に送って運営させるケースです。この場合、選択肢となり得るのが【企業内転勤】という在留資格です。これは、海外の本社等で一定期間(異動の直前に1年以上など)勤務してきた社員を、日本の関連会社(子会社・支店など)へ異動させる場合に使える在留資格で、後述する「経営・管理」のような資本金要件は課されません。「外国法人だから経営・管理ビザ」と思い込みがちですが、社員を転勤させる形であれば企業内転勤が有力な候補になります(一定の要件があり、職務内容にもよります。派遣する人が日本で主に行う活動が会社の経営・管理そのものである場合は、企業内転勤ではなく「経営・管理」が必要になります。詳細は「経営管理ビザ」の記事へ)。

パターンB:創業者・経営者本人が来日し、事業を経営・所有したい

創業者やオーナーが自ら日本に住んで会社を経営・所有するケースです。この場合は【経営・管理】の在留資格(いわゆる経営管理ビザ)が基本となります。ただし2025年10月の制度改正により、資本金・事業所・日本語能力・経営経験・事業計画の専門家確認など、複数の要件が大幅に厳しくなりました。改正前の感覚のままでは要件を満たせないことがあるため、早い段階での見極めが重要です。

パターンC:まずは市場調査・情報収集から始めたい

本格進出の前に、市場や顧客を調べたいという段階であれば、駐在員事務所という選択肢があります。設置のハードルは低い一方で、駐在員事務所では営業活動や契約の締結ができず、事務所名義での法人銀行口座の開設も原則としてできません(実務上は代表者個人名義の口座で運営するのが一般的です)。本国の representative office と同じ感覚で選ぶと「事業が始められない」ことになりかねないため、注意が必要です。

パターン 主な拠点形態 主な在留資格 営業・口座開設
A:社員を派遣して運営 子会社(または支店) 企業内転勤 など
B:本人が来日して経営 子会社 経営・管理
C:まず市場調査・情報収集 駐在員事務所 担当者の状況による 不可

なお、経営者本人が来日したいものの、改正後の「経営・管理」の要件をすぐには満たせない場合には、起業準備のために一定期間滞在できる制度(スタートアップビザ等)を入口とする方法もあります。どのパターンが自社に合うか、また各在留資格の詳しい要件は、無料相談で個別に整理できます。まずは「外国法人にはA・B・Cの分岐があり、必ずしも経営・管理ビザだけではない」という点を押さえてください。

日本進出で特に注意したい6つのポイント(このあとの記事で詳しく)

日本の制度には、海外の企業が「自国の常識」で進めるとつまずきやすい独特のポイントがあります。シリーズの後続記事で一つずつ解説しますが、入口として概要を予告しておきます。

  • 印鑑(はんこ)制度 ― 日本では、契約や登記の場面で「実印」と呼ばれる登録した印鑑と、その証明書(印鑑証明)が使われる慣習があります。サインの文化圏から来ると戸惑う仕組みで、外国人の場合は印鑑証明の代わりに「サイン証明」を在外公館等で取得することになります。
  • 住所・事業所 ― 会社の登記やビザには、事業を行う実体のある住所が必要です。形態によっては、バーチャルオフィスでは要件を満たしにくい場面があります。
  • 海外からの送金 ― 資本金の払込や本社からの資金移動には、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく届出が必要になる場合があります。
  • 法人口座の開設 ― 前述のとおり、外資・新設法人の口座開設審査は厳しく、リードタイムの見込みが重要です。
  • 解雇規制 ― 「日本では自由に解雇できる」というのは誤解です。日本の労働法では解雇に厳しい制約があり、採用前にルールを理解しておく必要があります。
  • バーチャルオフィスの可否 ― コスト削減のためにバーチャルオフィスを検討する企業は多いものの、ビザや許認可の要件との関係で使えないケースがあります。

シリーズ全記事ナビ――気になるテーマから読む

本シリーズは、進出の流れに沿って構成しています。気になるテーマから読み進めてください(各記事は順次公開予定です)。

第1ステージ:形態の決定・会社設立

子会社・支店・駐在員事務所――外国法人の日本進出、それぞれ何ができて何ができないか
3つの拠点形態の違いを「営業可否・口座開設・ビザの取りやすさ」などで比較し、誤った形態選択を防ぎます。

株式会社と合同会社、外国法人はどちらを選ぶべきか――信用・コスト・柔軟性で比較
株式会社(KK)と合同会社(GK)の費用・社会的信用・経営の柔軟性を比較し、選び方を整理します。

日本で会社を設立するまでの流れ――外国法人ならではの壁(印鑑・サイン証明・定款認証・日銀届出)
設立手続きを、注意したいポイントを中心にステップで解説します。

第2ステージ:並行手続(許認可・ビザ)

自社の事業に許認可は必要か――注意が必要な業種と申請先
許可が必要な代表的な業種と、申請先・目安期間を一覧にして整理します。

経営管理ビザ完全ガイド――資本金3,000万円・日本語・雇用・事業所、6つの要件を満たすには【2025年10月改正対応】
2025年改正後の「経営・管理」の要件と申請の流れを、最重要テーマとして詳しく解説します。

なぜ設立・許認可・ビザは「同時並行」でなければ失敗するのか――外国法人の日本進出、よくある進行ミスと正しい段取り
別々・順番に進めて失敗する典型例と、正しい進め方・進行管理のコツを解説します。

第3ステージ:開業前後(税務・労務・口座)

外国法人が日本で納める税金のすべて――法人税・消費税・地方税をやさしく解説
設立直後の届出から毎期の申告まで、日本の税金の全体像を整理します。

日本で最初の従業員を雇う前に――社会保険・雇用契約・解雇規制の基礎
社会保険・雇用契約・就業規則と、誤解されやすい解雇規制を解説します。

外資系の新設法人はなぜ銀行口座を作りにくいのか――審査の傾向と通すための準備
口座開設審査が厳しい背景と、通すための準備のコツをまとめます。

まとめ

日本進出にいくらかかるのか――初期費用・ランニングコスト、資本金3,000万円は「別枠」で考える
設立・事務所・ビザ・許認可・税務顧問などの費用感を合算して示します。

日本進出でよくある誤解と最終チェックポイント――進出を成功させるために
シリーズ全体の総まとめと、進出前の最終チェックリストです。

このほか、業種別の事例編(例:アメリカの自動車会社が日本で中古車輸出拠点を立ち上げるケース)も順次追加していきます。

まとめ――「窓口一本化」が進出の成否を分ける

ここまで見てきたように、日本進出は ①形態選定 ②会社設立 ③許認可 ④在留資格(ビザ)⑤税務・労務 という5つの領域からなり、それぞれ担当する専門家が異なります。登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士、許認可とビザは行政書士――というように分かれています。

ここに、外国法人が陥りやすい落とし穴があります。これらの専門家を別々に手配すると、各人は自分の担当範囲しか見ないため、「全体を誰も見ていない」状態になりがちです。前述のとおり、資本金・事業所・事業計画は複数の手続きに同時に影響します。担当者間で前提がずれると、「登記は終わったが、ビザ審査で事業実体が足りないと指摘された」「契約した事務所がビザ要件に合っていなかった」といった手戻りが起こります。

だからこそ価値を持つのが、窓口の一本化です。私たち行政書士法人タッチは、国際業務を専門とする行政書士法人として、日本進出に必要な実務を全体から整理し、提携する司法書士・税理士・社会保険労務士等と連携しながら、ひとつの窓口でサポートします。形態の選定から、許認可・ビザ、設立後の税務・労務、銀行口座開設まで、全体スケジュールを見ながら順番と役割を整理して進行を管理します。海外本社との多言語でのやり取りにも対応します。

まずは無料相談から

「自社はどのパターンに当てはまるのか」「何から始めればよいのか」を整理するところから始めませんか。行政書士法人タッチでは、初回のご相談を無料で承っています(STEP 0:無料相談)。現状とご進出の目的をうかがい、進出形態の整理と、必要な手続きの全体像をご案内します。

ご相談の結果、具体的な支援が必要になった場合は、内容に応じた有料の支援プラン(初期コンサルティング等)をあらためてご提案します。費用の見通しを丁寧にご説明しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
メール:contact@touch.or.jp
電話:埼玉オフィス 048-400-2730 / 東京オフィス 03-6825-0994

※本記事の内容は2026年6月時点の一般的な情報であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。在留資格・税務・登記等の要件や金額は改正・変更されることがあり、個別の事情により取扱いが異なります。具体的なご判断にあたっては、出入国在留管理庁・国税庁等の最新の公式情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。なお、登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士が担当し、行政書士法人タッチが窓口として連携します。

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

専門分野
外国人ビザ(在留資格)・帰化
主な取扱業務

・外国人在留資格申請、帰化
・対日投資に関する支援業務
 (経営管理ビザ,対日投資コンサルティング等)
・外国人材の雇用、技能実習監理、特定技能登録支援業務

開業以来、国際業務を専門とし、
年間1,000件以上の在留資格・帰化実務に対応

公式サイト
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