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永住者とは
「永住者」とは入管法上の在留資格(いわゆるビザ)のひとつです。「永住権」や「永住資格」などとも俗称されます。
日本で生活する外国人が日本国内で行うことができる活動は、自身の在留資格の範囲に制限されます。しかし、「永住者」は最も活動の制限が少ない在留資格であり、日本におけるほとんど全ての活動が認められます。また、在留期間も無制限になるため、他の在留資格では定期的に必要な在留期間の更新許可申請も行う必要がありません。
帰化との違い
「永住者」と似たものとして「帰化」があります。
「永住者」はあくまでも外国人のまま日本に住み続けるものであるのに対し、「帰化」は完全に日本人になるという点が異なります。
どちらも日本でほとんど自由に暮らすことができるという面にあまり違いはありません。しかし、完全に日本人になる「帰化」と異なり、「永住者」は外国人のままであるため、依然入管法による管理の対象になる点に大きな違いがあります。すなわち、日本人であるという資格は本人の意思で日本国籍を離脱しない限り失わないものであるのに対し、永住者であるという資格は入管法の規定に基づき本人が望まなくても失う場合があるということを意味します。
具体的に永住者の在留資格を失う場合としては以下の3つが挙げられます。
- 再入国に関する適切な対応を取らなかった場合
- 退去強制された場合
- 在留資格を取り消された場合
①再入国に関する適切な対応を取らなかった場合
永住者であっても、再入国許可を受けずに日本から出国(単純出国)すると在留資格を失います。
ここで、再入国許可とは、外国人が一時的に出国し再び日本に入国しようとする場合に、入国・上陸手続を簡略化するために法務大臣が出国に先立って与える許可を言い、永住者であれば5年間(特別永住者は6年間)を最長として決定されます。事前に入管に申請して再入国許可を受けることで、日本から出国しても永住者の在留資格を保持することができます。
なお、出国の日から1年以内に再入国する場合には、原則として再入国許可の申請は不要です(みなし再入国許可)。出国時に再入国出国記録(再入国EDカード)の「一時的な出国であり、再入国する予定です」という欄にチェックして、入国審査官に提示することで1年間の再入国許可の効果を受けることができ、入管に再入国許可申請を行っていなくても永住者の在留資格を保持することができます。
もっとも、再入国許可(みなし再入国許可含む)を受けたとしても、その有効期間の間に日本に戻ってこなかった場合は、やはり永住者の在留資格は失われます。
②退去強制された場合
退去強制とは、退去強制事由(入管法24条各号)に該当する外国人を日本国外に強制的に退去させることを言います。永住者の場合であっても日本から強制的に退去させられ、その結果として永住者の在留資格も失います。
主要な退去強制事由としては下記のものが挙げられます。
- 無期または1年を超える懲役もしくは禁錮(法改正後は拘禁)に処せられた者
- 薬物犯罪の有罪判決を受けた者
- 売春に直接関係がある業務に従事する者
③在留資格を取り消された場合
在留資格の取消事由(入管法22条の4第1項各号)に該当する場合は、永住者の在留資格であっても取り消される可能性があります。
主要な取消事由としては下記のものが挙げられます。
- 偽りその他の不正の手段で永住許可を受けた場合
- 現在の住居地を退去した日から90日以内に新住居地を届け出ない場合
- 虚偽の住居地を届け出た場合
永住者の在留資格の取消事由が拡大
令和6年の入管法改正により、永住者の場合の在留資格の取消事由が拡大されました。
これは、永住許可後に在留期間更新許可申請のような在留審査がなくなることに起因して、税金の支払いを怠ったり、法令を遵守せず素行を悪化させる永住者が散見されたためと考えられています。
例えば、東京都豊島区では2021年度の国民健康保険料の滞納率は日本人で7.5%、外国人で39.3%であり、2021年度に時効によって消滅した外国人の滞納分の累計額は2億3800万円にのぼるとのデータがあります。
それでは拡大された取消事由を見ていきましょう。なお、特例法に基づく地位である特別永住者は上述の趣旨が当てはまらないため、特別永住者は今回の改正の対象外となっています。
ア 永住者が入管法上の義務を遵守せずまたは故意に公租公課の支払いをしない場合
退去強制事由ではないが、罰則により遵守が担保されているような入管法上の義務については、正当な理由なく履行しない場合には取消事由になると考えられます。
この取消事由の拡大は、上述のような一部の悪質な永住者を対象とするものであり、大多数の永住者を対象とするものではありません。そのため、例えば、うっかり在留カードを携帯しなかった場合や在留カードの有効期間の更新手続きを意図せず忘れてしまった場合のような軽微な入管法違反について、永住者の在留資格を取り消すことは想定されていません。
公租公課も故意に支払いをしない場合に限定されており、うっかり忘れてしまった場合や病気等でやむを得ず支払いできなかった場合に、永住者の在留資格を取り消すことは想定されていません。
公租公課とは……国や地方公共団体によって課される金銭的負担の総称で「租税公課」とも呼ばれます。公租は法人税、所得税、住民税などの租税のことで、公課は健康保険料や社会保険料などの租税以外の金銭的負担が含まれます。
イ 永住者が一定の重大な犯罪等により拘禁刑に処された場合
退去強制事由と異なり刑期の制限がありませんが、対象となる犯罪等は殺人、強盗、窃盗、詐欺や危険運転致死傷といった重大なものに限定されています。
過失による違法性の低い犯罪や単なる交通違反を犯した永住者の在留資格を取り消すことは想定されていません。
取消事由に該当するとすぐに在留資格を取り消されるのか
在留資格の取消事由に該当し得る状況があったとしても、即座に在留資格を取り消されるわけではありません。
必要な行政手続きを経た上で、取消しが相当であると判断された場合に在留資格が取り消されることになります。
また、今回の改正では、永住者が取消事由に該当した場合、直ちに在留資格を取り消して出国させるのではなく、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格への変更を許可することとしています。具体的にどのような在留資格に変更するかは、在留状況や活動状況に鑑み、それぞれの外国人への個別判断となりますが、多くの場合、「定住者」の在留資格を付与されて、引き続き日本で暮らすことができると考えられています。
なお、今後も公租公課を支払わない意思が明白である場合や犯罪傾向が顕著である場合のように、当該外国人が引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合には他の在留資格への変更はされず、永住者の在留資格が取り消される結果として日本から出国することになります。
家族はどうなるのか
永住者が在留資格を取り消されたとしても、その家族も一緒に在留資格を取り消されることにはなりません。
例えば、永住者の在留資格を取り消された者の配偶者や子の在留資格が「永住者」である場合、引き続きそのまま日本に永住者で暮らすことが可能です。「永住者の配偶者等」である場合は、適宜「定住者」などに在留資格を変更して引き続き日本で暮らすことができます。
役所などに相談することでかえって不利益に繋がることはあるのか
改正後の入管法62条の2では、国または地方公共団体の職員がその職務を行うにあたり在留資格の取消事由に該当するかもしれない外国人を知ったときは、その旨を通報することができることとしています。
この規定についても、上述の趣旨が該当するため、単に支払い忘れがあった公租公課を支払うために役所に相談に行ったような場合に通報されてしまうといったことは想定されていません。
公租公課の支払いについて困っていることや不安なことがある場合は関係行政機関に必ず相談し、自身の在留資格について心配な点がある場合には外国人在留支援センター(FRESC)の窓口に相談することが重要です。不明な点をそのままにしたり意図的に隠したりすることの方が、かえって永住者を取り消される事態に繋がってしまいます。
最後に
当事務所では、永住者の問題について広く相談を受け付けています。
永住者の資格を失う場合は、ほんの少し気を付けるだけでほとんどのケースを回避可能です。少しでも不安を抱えている方は、「行政書士法人タッチ」の利用をご検討ください。
無料相談のご予約は、当事務所へのお電話またはお問い合わせフォームから承っております。お困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。