永住権の申請前に
永住権を取得するためには、最低限満たさなければならない条件があるため、申請前に条件を満たしているかどうかを確認することが重要です。満たしていない場合、申請が不許可になる可能性が高く、時間と労力を無駄にすることになりかねません。
永住権の条件
永住権を取得するためには、以下4つの条件を満たす必要があります。
①素行が善良であること
日本において法令を遵守し、日常生活で社会的に非難されることのない生活を営んでいることが求められます。具体的には、過去に犯罪歴がないことや、罰金刑や懲役刑を受けていないことが基準です。また、交通違反も一時停止違反等の軽微なものであれば問題にならないことが多いですが、飲酒運転や重度のスピード違反は刑事罰に分類されるため注意が必要です。万が一、過去に刑事罰を受けている場合は、一定期間を経てから申請することが推奨されます。どの程度の期間をあけるかは、刑の重さや支払った罰金額によっても異なるのですが、一般的には5~10年程度が目安になります。
②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
永住権を申請するためには、自身で安定した生活を送れるだけの経済力を持っていることが必要です。具体的には、申請者が独立して生計を維持できる資産や収入があるかどうかについて審査されます。判断基準としては、一般的に年間300万円以上の収入が目安とされており、扶養する家族がいる場合は、1人につき20万〜30万円の上乗せが必要となることが多いです。収入の証明には、市区町村が発行する課税証明書や納税証明書を提出することが求められ、申請時には直近数年間の安定した収入が確認できることが理想的です。
③日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能などから見て将来において安定した生活が見込まれること
永住権の申請には、申請者が日本社会において公共の負担とならず、将来的にも安定した生活を維持できる見込みが求められます。公的支援を受けずに自立し、生活できるかどうかが審査されるポイントです。例えば、生活保護を受給している場合は永住権の取得が難しくなります。一方で、資産や収入が安定しており、自己の生計を独立して維持できている場合は、申請に有利に働きます。また、特定の技能や難関資格を活かして安定した職業に就いていることも、将来の生活における安定性を裏付ける要素として重要視されます。
④その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
永住権を取得するためには、申請者の永住が日本国の利益に資するものであることが求められます。これは、単に日本に居住しているだけでなく、社会や経済に対して一定の貢献があることを示す要件です。主には、以下のポイントが審査の対象となります。
引き続き10年以上日本に在留していること
原則として、申請者は日本に10年以上継続して在留していることが必要です。特にそのうち5年以上は就労資格(在留資格「技能実習」や「特定技能1号」を除く)、または居住資格を持っていることが求められます。なお、頻繁に出国している場合、要件のカウントがリセットされることがあり、連続して10年在留しているとみなされないため注意が必要です。
例えば、1年間で半年以上出国している場合、期間はリセットされていると考えましょう。
罰金刑や懲役刑を受けていないこと
日本国の利益に合すると認められるためには、法律違反していないことが求められます。例えば、納税義務の適正な履行や年金・保険料の納付などが含まれます。税金や保険料の未払い、または納付遅延がある場合は、永住権の取得が難しくなります。
現在の在留資格の最長期間を保持していること
永住権の申請には、現在保有している在留資格の在留期間が最長であることが必要です。例えば、日本人の配偶者等や技術・人文知識・国際業務などの在留資格は、1年、3年、5年の期間で許可されることがありますが、永住権申請時には最長の5年の在留期間があることが理想的です。ただし、3年の在留期間でも申請が可能です。ご自身が条件を満たしているか不安な方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
反社会勢力との関わりや、テロリスト活動に関連する人物は、永住権を取得できません。
永住権の条件緩和の特例について
永住権の申請条件には、「原則10年在留に関する特例」が存在していますが、特定の申請者に対して要件が緩和される場合があります。2024年(令和6年)6月10日に改訂された最新のガイドラインによると、以下のような場合で特例が適用されます。
日本人、永住者、または特別永住者の配偶者や子供
日本人、永住者、または特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上続いており、さらに引き続き1年以上日本に在留していることが条件です。日本人や永住者の実子などの場合は、1年以上日本に継続して在留していることが求められます。
定住者の在留資格を有する者
「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留している場合も、特例として原則10年在留の要件が緩和され、永住権の申請が可能です。
難民認定を受けた者
難民として認定されている場合、補完的保護対象者に認定されている場合も、認定後5年以上継続して日本に在留していることで、永住権申請の条件を満たします。
日本への貢献が認められる者
外交、社会、経済、文化などの分野において日本への貢献があると認められる場合は、5年以上の在留によって原則10年在留の要件が緩和されます。具体的な貢献の内容は、「我が国への貢献に関するガイドライン」に基づいて判断されます。
(出入国在留管理庁:我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドラインhttps://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan36.html)
高度人材外国人としてポイントが70点以上である者
高度専門職省令に基づくポイント計算で70点以上を有している高度人材外国人については、3年以上日本に在留していることで永住権を申請することが可能です。さらに、80点以上を有する場合には、1年以上の在留で申請可能となります。
永住権の申請についてのポイント
永住権の申請にあたっては、申請手続きや必要書類、提出期限などを正確に理解しておくことがスムーズな申請につながるポイントです。
申請期間について
永住権の申請は、現在の在留資格の有効期間が満了する前に行う必要があります。
もし、申請中に在留期間が満了してしまう場合は、別途「在留期間更新許可申請」を同時に行うことが必要です。万が一「在留期間更新許可申請」を行わなかった場合、永住申請中でも在留期限を過ぎたらその時点でオーバースティになります。その場合、永住申請の許可も厳しくなりますので必ず「在留期間更新許可申請」を行いましょう。
また、出生などの理由で在留資格の取得を希望する場合は、事由発生後30日以内に申請を行いましょう。期限を過ぎると不利になる可能性があるため、早めの準備が重要です。
申請先について
永住権の申請は、「居住地を管轄する地方出入国在留管理局」に対して行います。
提出書類や申請の流れについては、事前に地方出入国在留管理局や外国人在留総合インフォメーションセンターに問い合わせるなどし、必要書類を揃えましょう。
また、申請書類の提出は、申請人本人が行うことが基本ですが、未成年者や病気で自ら出頭できない場合には、同居者や行政書士などが代理申請することも認められています。
永住権取得後の在留カードの扱いについて
永住権を取得すると、基本的に在留期限はなくなります。しかし、永住者も定期的な在留カードの更新手続きや、引っ越しなどの際に住所変更の届出を行わなければならず、注意が必要です。以下では、永住権取得後の在留カードの扱いについて解説します。
在留カードの更新手続き
永住権を持つ外国人でも、7年ごとに在留カードを更新しなければなりません。更新の手続きは、有効期限が切れる2か月前から開始でき、管轄の地方出入国在留管理局で行います。
居住地変更の手続き
永住者が引っ越した際には、住所変更の手続きを行う必要があります。住民票の移動手続きと併せて、14日以内に地方出入国在留管理局に居住地変更届を提出します。提出が遅れたり、虚偽の住所を届け出たりすると、永住権の取り消しリスクが生じるため注意です。
その他の手続き
在留カードの紛失や汚損、情報の変更があった場合にも、速やかに再交付や情報の更新手続きを行う必要があります。紛失した場合は、まず警察に遺失届を出し、その後14日以内に入管に再交付の申請を行います。また、氏名や国籍などの変更が生じた場合も、14日以内に地方出入国在留管理局に届け出を行うことが義務付けられています。
永住申請は当事務所までご相談ください
永住権の取得は、いくつもの条件を満たす必要があり、手続きも多岐にわたります。
初めて永住権の申請をする場合、書類の準備や期限内での手続きを漏れなく行うことが重要です。しかし、手続きが煩雑で不安を感じる方は多いのではないでしょうか。
行政書士法人タッチでは、永住権の申請に関する手続き全般をサポートしています。書類作成から提出、手続きのフォローまで、一貫して対応いたします。
申請にあたって不明な点や不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。お客様一人ひとりに合わせた適切なサポートをご提供いたします。