経営管理ビザ

日本進出でよくある誤解と総まとめ――外国法人がつまずく16のポイント


日本進出でつまずく外国法人の多くは、能力や準備が足りなかったわけではありません。つまずきの正体は、自国では当たり前だった常識が日本では通じない――そんな「誤解」の積み重ねです。「駐在員事務所でも営業できる」「赤字なら税金はかからない」「手続きは順番に・別々に頼めばよい」。一つひとつは小さな思い込みでも、それが連鎖すると、登記は終わったのにビザが下りない、口座が作れず資本金を動かせない、といった停滞を生みます。逆に言えば、これらは“能力”の問題ではなく、知ってさえいれば避けられる“情報”の問題です。本記事はシリーズの総まとめとして、各回で登場した誤解を一度に整理して解き、正しい全体像を再提示します。国際業務を専門とする行政書士が、やさしくご案内します。

※内容は2026年7月時点。最新は公式情報をご確認のうえ専門家にご相談ください。

この記事でわかること

  • 外国法人がつまずく16の誤解を、①拠点・ビザ ②会社の種類・お金 ③手続き・実体の3グループで一度に整理
  • 一つの誤解(例:バーチャルオフィス)が、ビザ・口座・遅延へと連鎖していくしくみ
  • 正しい全体像の再整理――5つの領域・4つのフェーズ・3つのクリティカルパス・同時並行・横串の設計
  • 誤解を避け、連鎖を断つ鍵=窓口一本化と、最初の一歩(無料相談)

なぜ「誤解」でつまずくのか――能力ではなく情報の問題

本シリーズでは、進出形態の選び方から、会社設立、許認可、在留資格(ビザ)、税務・労務、費用まで、外国法人の日本進出を一通りたどってきました。各回でくり返し見えてきたのは、つまずきの多くが「日本の制度を知らなかった」というただ一点に集約される、ということです。日本の制度は、海外の常識とは前提が違う部分が少なくありません。だからこそ、自国の感覚のまま進めると、思わぬ場所で足止めされます。

ここで強調したいのは、これは恥ずべきことでも、特別に難しいことでもない、という点です。知らなければ誰でもつまずきますが、先に知っていれば、その多くは避けられます。以下では、各回で登場した代表的な誤解を3つのグループに分けて、「❌よくある誤解 → ⭕実際は → 詳しくはどの記事か」という形で一度に整理します。気になる項目だけ拾い読みしても、最後まで通して読んでも構いません。

① 拠点・ビザの誤解(3件)

❌ よくある誤解 ⭕ 実際は(→詳しくは)
駐在員事務所でも営業できる 駐在員事務所では、営業・契約の締結・法人名義の口座開設はできません。できるのは市場調査や情報収集などの準備活動だけです。本国の representative office と同じ感覚で選ぶと、「事業が始められない」ことになりかねません。(→「進出形態の比較」の記事
外国法人だから経営・管理ビザ 在留資格は「日本で何をするか」で決まります。社員・役員を派遣して専門業務に就かせるなら、資本金要件のない企業内転勤が候補です(転勤直前に1年以上の勤務・資本関係・技人国に該当する業務などの条件あり)。会社を経営・管理する経営者本人は経営・管理です。企業内転勤は“経営者を送り込む手段”ではなく、経営・管理の資本金要件を回避する代替にもなりません。(→「経営管理ビザ」の記事
経営・管理は資本金500万円・社長一人でOK、日本語も不要 2025年10月16日施行の改正で大きく変わりました。いまは ①資本金3,000万円以上 ②常勤職員1名以上(原則として日本人・永住者・定住者・日本人の配偶者等など別表第二の身分系。技人国等の就労資格は雇用要件の頭数に含まれない)③申請人または常勤職員のいずれかが日本語B2相当(JLPT N2以上等)④経営経験3年以上または関連分野の修士等 ⑤中小企業診断士・公認会計士・税理士のいずれかが確認した事業計画書 ⑥独立した事業所(バーチャル原則不可)の6要件を、すべて満たす必要があります。既存保有者には2028年10月16日までの経過措置がありますが、自動更新ではなく、次回更新で適合または適合見込みが必要になり得ます。(→「経営管理ビザ」の記事

② 会社の種類・お金の誤解(6件)

❌ よくある誤解 ⭕ 実際は(→詳しくは)
合同会社(GK)は信用が低くて使えない 法律上、株式会社も合同会社も、出資者の責任が出資の範囲にとどまる「会社」です。Apple Japan合同会社やグーグル合同会社など、著名な外資も合同会社を採用しています。ただし、BtoBの取引慣行や、将来の上場・資金調達を重視するなら株式会社が無難な場面もある、という整理です。(→「株式会社と合同会社」の記事
GKなら日本の税金が安い・ビザ要件も軽くなる ビザ要件も、日本の法人課税も、会社形態(株式会社か合同会社か)で基本的に変わりません。米国の「チェック・ザ・ボックス」は米国側の税制の論点であり、適用の可否は本国の会計士・税務専門家に確認が必要です(日本の行政書士が米国税務の助言を行うものではありません)。(→「株式会社と合同会社」の記事
資本金3,000万円も“費用”として消える 資本金は、支払うと消える費用ではありません。会社の口座に入り、家賃・給与・仕入などに使える「払込資本」=会社自身のお金です。費用とは別枠で考えます。(→「進出費用」の記事
設立の登録免許税は最低15万円/6万円 登録免許税は資本金×0.7%で計算されます。経営・管理を前提に資本金3,000万円とすると、株式会社・合同会社とも21万円です。「最低15万円/6万円」はあくまで最低額で、本シリーズの読者(資本金3,000万円)には当てはまりません。(→「進出費用」「会社設立の流れ」の記事
新設法人は2年間は消費税が免税 資本金1,000万円以上の新設法人は、1期目から消費税の課税事業者です。経営・管理を前提とする資本金3,000万円では、この「2年免税」は使えません(大きな親会社をもつ場合は「特定新規設立法人」の論点もあります)。(→「税金」の記事
赤字なら税金はかからない/均等割は7万円 赤字でも、法人住民税の均等割は発生します。本シリーズの読者(資本金3,000万円)は約18万円/年の区分です(約7万円は資本金1,000万円以下・従業員50人以下といった最小規模の場合の額です)。社会保険料の会社負担も赤字でも発生します。なお法人税は原則23.2%、中小法人(資本金1億円以下。資本金5億円以上の親会社の完全子会社は対象外)は年800万円以下の所得に15%(令和9年3月末までに開始する事業年度までの時限措置)。防衛特別法人税が令和8年(2026年)4月以後に開始する事業年度から課されます(多くの中小は税額0円ですが、0円でも申告が必要です)。(→「税金」「従業員の雇用」の記事

③ 手続き・実体の誤解(7件)

❌ よくある誤解 ⭕ 実際は(→詳しくは)
会社さえ作れば銀行口座も作れる 会社設立と口座開設は別物です。新設・外国籍代表の法人に対する審査は厳しい傾向で、代表者が非居住者のままだと、ほぼ作れません。背景には、金融庁の方針のもとでのAML/CFT(マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策)の強化があります。可否は最終的に銀行が判断します。(→「銀行口座」の記事
バーチャルオフィスで十分 バーチャルオフィスは、ビザ(独立した事業所)でも、口座(事業所の実体)でも不利になります。住所選びは、登記・ビザ・口座が連鎖する“入口”です。(→「経営管理ビザ」「銀行口座」の記事
日本でも自由に解雇できる(at-will) 日本には労働契約法16条の解雇権濫用法理があり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効です。解雇には30日前の予告(または予告手当)が必要で、整理解雇は4要素(人員削減の必要性・解雇回避の努力・人選の合理性・手続の妥当性)で慎重に判断されます。(→「従業員の雇用」の記事
印鑑やサイン証明は些細なこと 海外在住者は日本の印鑑証明が取れないため、本国でのサイン証明+アポスティーユ(非加盟国は領事認証)が必要で、時間がかかります。設立スケジュールのボトルネックになりやすいポイントです。(→「会社設立の流れ」の記事
手続きは順番に・それぞれの専門家に別々に頼めばよい 資本金・事業所・事業計画・事業の実体は、複数の手続きに同時に効きます。だから順番に・別々にではなく、同時並行で進め、領域をまたぐ“横串”の整合を、誰かが一貫して見る必要があります。とくに経営者本人が来日して経営する場合は、「本人先行型(準備の在留資格で先に来日し、設立後に更新・変更)」と「協力者型(国外の本人に代わり日本の協力者が設立し、COEで来日)」の2つの入口があり、設立と来日の順番が逆になります。 協力者に設立を丸投げし本人が一切関与しない形は、経営の実体を疑われ不許可リスクとなります。(→「同時並行・段取り」の記事
許認可は会社を作ってから考えればよい/どの事業にも要る(または要らない) 許認可の要否は事業内容によります。必要な場合、申請先は業種ごとにバラバラ(公安委員会・保健所・税務署・観光庁・都道府県知事 等)で、定款の事業目的にも織り込む必要があり、会社の成立と並行して準備します。許認可の申請は行政書士の本来業務です。(→「許認可」の記事
外為法の届出は出資10%以上のときだけ 10%(2020年に1%へ引下げ)という基準は、上場会社の株式・議決権の取得に関する閾値です。外国投資家による新設子会社の設立・出資は、それ自体が「対内直接投資」にあたり、指定業種は事前届出(審査期間あり)、それ以外は投資後45日以内の事後報告が原則です。(→「会社設立の流れ」の記事

なぜ誤解は「連鎖」して遅延を生むのか

ここまでの誤解は、それぞれ単独でも問題ですが、本当に怖いのは連鎖です。日本の制度は、登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士、許認可・在留資格は行政書士――というように担当が分かれた“縦割り”になっています。一方で、資本金・事業所(住所)・事業計画・事業の実体という“同じ材料”は、設立・許認可・ビザ・口座・税務という複数の手続きに同時に効きます。そのため、ある場所での一つの思い込みが、後工程で次々と問題を引き起こします。代表的な例で見てみましょう。

誤解は連鎖する――「バーチャルオフィスで十分」の例

「バーチャルオフィスで十分」と考えて契約する
↓ 登記そのものはできる(ここまでは進む)
↓ しかし経営・管理ビザの「独立した事業所」要件を満たせず、ビザで行き詰まる
↓ 銀行口座の審査でも、事業所の実体を問われて通りにくい
↓ 結局、住所を契約し直し、ビザ申請も口座開設もやり直し
そのぶん全体が後ろ倒しになり、開業が大きく遅れる

たった一つの住所の選択ミスが、ビザ・口座・スケジュールへと波及していくのが分かります。だからこそ、個々の手続きを別々に最適化するのではなく、全体を見渡して“横串”で整合を取ることが欠かせません。横串の整合と早期の並行着手で、こうした連鎖の多くは未然に防げます。

正しい全体像の再整理――5領域・4フェーズ・3つのクリティカルパス

誤解を解いたうえで、最後に正しい全体像をコンパクトに再掲します。これが、進出の“地図”です。

日本進出を構成する「5つの領域」と担当

領域 内容(ひとこと) 主な担当
① 形態選定 子会社・支店・駐在員事務所のどれにするか 行政書士(窓口)
② 会社設立 定款の作成・認証、設立登記 司法書士(登記)
③ 許認可 業種別の許可・登録・免許・届出 行政書士
④ 在留資格(ビザ) 経営・管理/企業内転勤 など 行政書士〔国際業務〕
⑤ 税務・労務 法人税・消費税/社会保険・雇用 税理士/社会保険労務士

※ 登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士、許認可・在留資格は行政書士が担当し、行政書士法人タッチが窓口として連携します。

進出の「4つのフェーズ」(おおむねこの流れ)

  • 第1:方針・形態の決定(数週間〜)――進出目的の整理、形態の選定、事業計画の骨子づくり
  • 第2:会社設立(約1〜2か月)――定款の作成・認証、資本金の払込、設立登記、設立後の届出
  • 第3:並行手続(許認可・ビザ・口座)(約2〜4か月以上)――許認可申請、在留資格の申請、法人銀行口座の開設
  • 第4:開業前後の手続と運営(設立後〜継続)――税務・社会保険の届出、雇用契約の整備、事業開始

ポイントは、第2フェーズ(会社設立)と第3フェーズ(並行手続)を“同時並行”で動かすことです。設立がすべて終わるのを待ってから着手すると、全体が大きく後ろ倒しになります(→「同時並行・段取り」の記事)。

見落とすと開業が遅れる「3つのクリティカルパス」

全体の所要期間を決めてしまうボトルネックが、許認可・在留資格(ビザ)・銀行口座の3つです。いずれも「申請してから結果が出るまで待つしかない」性質のため、設立を終えてから始めるのではなく、できるだけ早く、並行して準備を進めることが、進出全体を遅らせないコツです。

そして、これら5領域・4フェーズ・3つのクリティカルパスを貫くのが、資本金・事業所・事業計画・事業の実体という“横串”の整合です。ここを一貫して見られるかどうかが、誤解の連鎖を断てるかどうかの分かれ目になります。

進出前のセルフチェック――「自社は大丈夫か」で見直す

以上の16の誤解は、そのまま進出前のチェックリストとして使えます。一つずつ「自社は大丈夫か」と確認し、少しでも引っかかる項目があれば、そこが優先して確認すべきポイントです。くり返しになりますが、これらは知ってさえいれば避けられる“情報”の問題ですから、引っかかったこと自体は何ら問題ではありません。むしろ、早く気づけたことが前進です。

とくに、住所(事業所)・資本金・在留資格・許認可の4点は、複数の手続きに同時に効く“横串”の論点です。この4つは、早い段階で方針を固めておくほど、後工程の手戻りを減らせます。気になる項目が一つでもあれば、後述の無料相談で、その点から整理できます。

だから「窓口一本化」――誤解を避け、連鎖を断つ

ここまで見てきた誤解と連鎖には、共通の処方箋があります。それは、進出全体を一貫して見る“窓口”があることです。各専門家はそれぞれの担当を的確に進めてくれますが、領域をまたぐ横串の整合は、放っておくと誰も担いません。そこを一手に引き受けるのが、窓口一本化の役割です。

行政書士法人タッチは、国際業務を専門とする行政書士法人として、登記(提携司法書士)・税務(税理士)・労務(社会保険労務士)・事業計画の確認(中小企業診断士/公認会計士/税理士)と連携し、在留資格・許認可は自ら担いながら、進出全体を窓口一本化で整理・進行管理します。海外本社との多言語でのやり取りにも対応します。まずは、STEP 0の無料相談から。御社の状況をうかがい、見落としがちな誤解の有無と、全体の段取りを整理してご案内します。

なお、誠実にお伝えすると、窓口一本化は成功を保証するものではありません。許認可や在留資格の可否は、最終的に行政機関の判断によります。それでも、本記事で見た誤解の多くは、知って、早めに横串で整えておくことで、リスクを下げ、手戻りを防ぐことができます。具体的な支援が必要な場合は、内容に応じた有料プラン(PHASE 1〜)をあらためてご提案します。

また、本シリーズの内容を実在に近い1社のケースに落とし込んだ業種別の事例編(例:アメリカの自動車会社が日本で中古車輸出拠点を立ち上げるケース)も、今後あわせて公開していく予定です。自社の業種で「結局どの順番で何をやるのか」を具体的につかみたい方は、そちらもご参照ください。

まずは無料相談から(STEP 0:無料)

「自社が見落としている誤解はないか」「何から手をつければよいのか」を整理するところから始めませんか。行政書士法人タッチでは、初回のご相談を無料で承っています。現状とご進出の目的をうかがい、誤解の解消と進出の全体像、そして窓口一本化での進め方をご案内します。ご相談の結果、具体的な支援が必要になった場合は、内容に応じた有料の支援プラン(PHASE 1:初期コンサルティング 330,000円〔税込〕〜 など)をあらためてご提案し、費用の見通しを丁寧にご説明します。まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
メール:contact@touch.or.jp/電話:埼玉オフィス 048-400-2730 / 東京オフィス 03-6825-0994

関連記事――シリーズ全12回

本シリーズは、進出の流れに沿って構成しています。気になるテーマからお読みください。

第1ステージ:形態の決定・会社設立

第2ステージ:並行手続(許認可・ビザ)

第3ステージ:開業前後(税務・労務・口座)

まとめ

このほか、業種別の事例編(例:アメリカの自動車会社が日本で中古車輸出拠点を立ち上げるケース)も順次追加していきます。

※本記事の内容は2026年7月時点の一般的な情報であり、特定の事案に対する法的・税務的助言ではありません。在留資格・税務・登記・許認可・銀行口座等の要件や金額・税制は、法令の改正や個別の事情により異なることがあります。具体的なご判断にあたっては、出入国在留管理庁・国税庁・法務局・金融庁・財務省・日本銀行などの最新の公式情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。なお、米国の税務(チェック・ザ・ボックス等)については本国の会計士・税務専門家にご確認ください。登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士、事業計画の確認は中小企業診断士・公認会計士・税理士が担当し、在留資格・許認可は行政書士が担います。行政書士法人タッチは、これらの専門家と連携する窓口として進出全体を整理・進行管理します。

この記事の監修者

行政書士法人タッチ 代表行政書士

湯田 一輝

専門分野
外国人ビザ(在留資格)・帰化
主な取扱業務

・外国人在留資格申請、帰化
・対日投資に関する支援業務
 (経営管理ビザ,対日投資コンサルティング等)
・外国人材の雇用、技能実習監理、特定技能登録支援業務

開業以来、国際業務を専門とし、
年間1,000件以上の在留資格・帰化実務に対応

公式サイト
https://touch.or.jp/
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