日本に会社を設立したものの「何の税金を・いつ・どこに納めるのか分からない」――これは、外国法人や日本で会社を経営したい方から、設立の前後に必ずいただくご相談です。日本の法人課税は、国に納める法人税などと、都道府県・市町村に納める地方税が組み合わさり、しかも設立直後から「期限付き」の届出が始まります。全体像を知らないまま開業すると、届出の期限を逃したり、想定外の納税で資金繰りに苦しんだりしがちです。本記事では、外国法人が日本で納める税金の全体像を、法人税・消費税・地方税に分けて、設立直後の届出から毎期の申告までやさしく整理します(個別の税額計算など具体的な税務は、提携する税理士が担当します)。
この記事でわかること
- 会社に複数の番号(法人番号・代表者のマイナンバー・在留カード)が出てくる理由と、その違い
- 設立直後にやるべき「期限付き」の届出(法人設立届=2か月以内 ほか)と、期限を逃すデメリット
- 毎期かかる主な税金(法人税・消費税・地方税)と、決算日から2か月以内という申告・納付の期限
- 消費税の基礎と、外国子会社が設立初年度から課税事業者になりやすい理由
- 海外とつながる税務(移転価格・配当源泉・グローバルミニマム課税)の入口と、税理士連携・無料相談への進み方
まず整理――なぜ会社に複数の「番号」が出てくるのか
日本で会社を設立し、代表者が来日すると、いくつもの「番号」が登場します。よく似ていて混同しやすいのですが、それぞれ目的の異なる別物です。最初にここを整理しておくと、このあとの税務の手続きがぐっと分かりやすくなります。
- 法人番号(13桁):会社(法人)に一つ割り当てられる番号です。設立登記をすると国税庁から指定され、原則として公表されます(インターネットで検索できます)。各種の税務申告や行政手続きで使います。
- マイナンバー(個人番号・12桁):個人に割り当てられる番号です。代表者が日本に住民登録(住所を定めて在留)すると本人に付与され、給与の源泉徴収など、個人に関する手続きで使われます。
- 在留カード番号:外国人が日本に中長期間滞在する際に交付される「在留カード」に記載された番号で、在留資格(ビザ)に関わるものです。税の番号ではありません。
「会社の番号」と「個人の番号」を取り違えないこと――これが、日本での税務手続きにおける最初のつまずき防止になります。
日本進出で注意したいポイント①――番号の違い
法人番号は会社のもの、マイナンバーは個人のもの、在留カード番号は在留資格のもの、と用途が完全に分かれています。海外では「会社にも個人にも一つの納税者番号」という国もあるため、混同しがちです。とくにマイナンバーは、代表者が住民登録(住所の届出)を済ませて初めて付与される点に注意してください。
設立直後にやる「期限付き」の届出
会社を設立したら、まず税務署(および都道府県・市町村)への届出から始まります。多くが「設立から○か月以内」という期限付きで、これを逃すと不利益が生じます。代表的な届出を一覧にします。
| 届出の名称 | 主な提出先 | 期限の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 税務署+都道府県・市町村 | 設立登記の日以後 2か月以内 | 定款等の写しを添付。国と地方の両方に提出が必要 |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立第1期から受けるには「設立の日以後3か月を経過した日」と「第1期末日」のいずれか早い日の前日まで | 【提出は任意】 出さなくても設立は可能(その場合は白色申告)。ただし赤字(欠損金)の繰越控除など節税メリットを受ける前提となるため、実務上はほぼ必ず提出する |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設の日から 1か月以内 | 役員・従業員に給与を払う=源泉徴収義務に関係 |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出 | 税務署 | 資本金1,000万円以上のとき | 法人設立届出書に記載すれば別途提出は不要 |
これらのうち、とくに見落とされやすいのが青色申告の承認申請です。なお、これは法律上の提出義務ではなく、出さなければ白色申告になる「任意」の申請です(ただし節税メリットの前提となるため、実務上はほぼすべての会社が提出します)。青色申告には、赤字を翌期以降に繰り越して将来の黒字と相殺できる「欠損金の繰越控除」など、税負担を抑える前提となる仕組みがあります。設立初年度は赤字になりやすいため、第1期から青色申告を受けられるよう、期限内の申請が大切です。期限を過ぎると、その期は青色申告が使えず、繰越控除などのメリットを受けられないことがあります。
なお、ここに挙げた届出のほか、給与の支払い方法によっては「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」など、追加で提出できる書類もあります。どの届出が必要かは、事業の内容や従業員の有無によって変わるため、税理士に確認しながら進めると安全です。
日本進出で注意したいポイント②――届出の「短い期限」
日本の設立後の届出は、「設立から2か月」「開設から1か月」など期限が短く、しかも国(税務署)と地方(都道府県・市町村)の両方に出すものがあります。海外本社との確認に時間がかかると、あっという間に期限が来てしまいます。会社設立のスケジュールに、設立後の届出までを最初から組み込んでおくことが重要です(→「同時並行・段取り」の記事)。
毎期かかる主な税金――法人税と地方税
会社が利益(所得)を出すと、毎期(事業年度ごとに)次のような税金がかかります。大きく分けて、国に納める法人税など(国税)と、都道府県・市町村に納める地方税です。まず主な税目を一覧で示します。
| 税目 | 区分 | 税率・負担の目安 | メモ |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 国税 | 原則 23.2%。資本金1億円以下の中小法人は年800万円以下の所得に 15%(時限措置)、800万円超は 23.2% | 15%は租税特別措置法の時限措置。令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで |
| 防衛特別法人税 | 国税(新設) | (基準法人税額 − 年500万円)× 4% | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から。多くの中小企業は税額0円だが、0円でも申告は必要 |
| 地方法人税 | 国税 | 法人税額(課税標準法人税額)の 10.3% | 名称に「地方」とあるが、国に納める税 |
| 法人住民税 | 地方税 | 法人税割+均等割。均等割は赤字でも発生。資本金1,000万円以下で年約7万円、3,000万円なら年約18万円 | 均等割は資本金・従業員数で増える(道府県民税+市町村民税) |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 地方税 | 所得などに応じて課税 | 資本金1億円超は外形標準課税で、赤字でも課税される |
法人税の本則は23.2%です。資本金1億円以下の中小法人には、年800万円以下の所得について15%の軽減税率が適用されますが、これは時限措置で、令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度までとされています。ここで外国法人向けの落とし穴があります。資本金が5億円以上の大法人に株式を100%保有されているような子会社は、この中小法人向けの15%軽減税率の対象外になる場合があります。大きな親会社をもつ日本子会社では、「中小だから15%」と早合点しないことが大切です。
2026年4月からは、防衛特別法人税が新設されました。これは法人税額に上乗せされる付加税で、計算は(一定の税額控除前の)基準法人税額から年500万円を差し引いた額に4%を乗じます。基準となる法人税額が年500万円以下(課税所得でおよそ2,400万円程度まで)であれば税額は0円となり、多くの中小企業に実質的な負担は生じません。ただし、税額が0円であっても申告は必要とされる点に注意してください。
このほか、利益に対しては、地方法人税(法人税額の10.3%。名称に反して国に納める税です)、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税がかかります。とくに覚えておきたいのが、法人住民税の「均等割」です。これは利益が出ていなくても(赤字でも)納める必要があります。金額は資本金等の額と従業員数の区分で変わり、資本金1,000万円以下なら年約7万円(道府県民税 約2万円+市町村民税 約5万円)ですが、経営・管理ビザで資本金3,000万円とする会社は1,000万円超の区分に当たり、年約18万円が目安です。「赤字なら税金はゼロ」という感覚は、日本では通用しません。
これらをすべて合わせた、利益にかかる税の総合的な負担を「実効税率」といいます。自治体や資本金によって変わるため一概には言えませんが、目安としては中小法人で約33〜35%、大企業で約30〜31%程度(2026年4月以後は防衛特別法人税の分、大企業でおおむね31%台へ)とされます。あくまで範囲・目安であり、正確な税額は会社ごとに異なります。
申告・納付の期限は、法人税・地方税・消費税のいずれも、原則として事業年度(課税期間)終了日の翌日から2か月以内です。たとえば3月決算なら5月末が期限です。届出により法人税などの申告期限を1か月延長できる特例もあり、消費税についても別途の届出で同様の延長が可能です(延長されるのは申告期限であり、納付の取扱いには注意点があるため、詳細は税理士にご確認ください)。期限を過ぎると、加算税や延滞税といったペナルティが生じ得ます。
日本進出で注意したいポイント③――「赤字でも払う税金」がある
海外では「利益がなければ法人税はゼロ」が一般的ですが、日本では赤字でも法人住民税の均等割(資本金3,000万円なら年約18万円)がかかり、消費税の課税事業者であれば消費税の納付義務も残ります。設立初年度は赤字になりやすいからこそ、こうした「赤字でも発生する固定的な税」を、最初の資金計画に織り込んでおく必要があります。
消費税の基礎――外国子会社が「初年度から課税」になりやすい理由
消費税は、商品やサービスの取引にかかる税で、標準税率は10%、飲食料品など一部には軽減税率8%が適用されます。会社は、売上で預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて、その差額を納めます(課税事業者の場合)。申告・納付は、法人税などと同じく課税期間終了日の翌日から2か月以内です。
ここで、外国法人がとくに知っておくべき重要な点があります。日本では、新しく設立した法人は原則として設立1〜2期目は基準期間(判定のもとになる過去の期間)がないため消費税が免除される(免税事業者)のが一般的です。しかし、次のいずれかに当てはまると、1期目から消費税の課税事業者になります。
- 設立時の資本金が1,000万円以上である場合(→ 1期目から課税事業者)
- 親会社など(支配する者)の課税売上高が5億円超、または売上・収入の合計額が50億円超(令和6年〔2024年〕10月以後、国外の分も含めて判定)である場合――「特定新規設立法人」として1期目から課税事業者
外国法人の日本子会社では、経営・管理の在留資格(経営管理ビザ)の取得に資本金3,000万円が必要になるケースが多く、その場合は1点目の「資本金1,000万円以上」に当然該当します。つまり、外国法人の日本子会社は、設立初年度から消費税の課税事業者になるのが通常で、国内のスタートアップにありがちな「最初の2年ほどは消費税が免税」というメリットは、基本的に期待できません。さらに大きな親会社をもつ場合は「特定新規設立法人」にも該当し得ます。この点は、初年度の納税・資金繰りの計画に直結します。
消費税に関連して、もう一つ押さえておきたいのがインボイス制度(適格請求書等保存方式)です。2023年(令和5年)10月1日に始まった仕組みで、仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、原則として「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。インボイスを発行するには「適格請求書発行事業者」の登録が必要で、登録すると課税事業者になります。免税事業者からの仕入れに関する経過措置や、小規模事業者向けの負担軽減(いわゆる「2割特例」)など、割合や期限の決まった時限的な措置もありますが、内容は時期によって変わるため、最新の取扱いは税理士に確認してください。本記事では入口の説明にとどめます。
なお、輸出を中心とする事業では、消費税の還付が資金繰り上とても重要になります。輸出取引は消費税が免税(0%)となる一方、国内で支払った仕入れの消費税は、申告により還付され得るためです。中古車の輸出など、輸出免税と還付が事業の核になるケースの詳しい解説は、今後の業種別の事例編(例:アメリカの自動車会社が日本で中古車輸出拠点を立ち上げるケース)に譲ります。
日本進出で注意したいポイント④――「最初の2年は消費税免税」は使えないことが多い
国内では新設法人が当初最大2年ほど消費税の免税事業者になれることがありますが、外国法人の日本子会社は事情が異なります。経営管理ビザのために資本金を3,000万円とすると「資本金1,000万円以上」に該当し、設立初年度から課税事業者になります。大きな親会社をもつ場合は「特定新規設立法人」にも該当し得ます。初年度から消費税の申告・納付がある前提で計画を立てましょう。
海外とつながる税務――専門的な検討が必要な3領域
外国法人の日本子会社では、国内だけで完結しない、国際的な税務の論点も出てきます。いずれも専門性が高く、深入りは禁物の領域です。ここでは「こういう論点がある」という存在を知っていただくにとどめ、具体的な検討は税理士に委ねることをおすすめします。
- 移転価格税制:海外の関連会社(親会社など)との取引価格は、第三者との取引と同じ条件(独立企業間価格)であることが求められます。価格設定が適切でないと、後から課税の問題になり得ます。
- 海外親会社への配当にかかる源泉徴収:日本子会社から海外の親会社へ配当を支払う場合、日本の国内法では原則20.42%の源泉徴収が必要です。ただし、租税条約により軽減・免除される場合があります(たとえば日米租税条約では、持株割合・保有期間などの要件により0%・5%・10%等になり得ます)。具体的な税率は相手国・条約・持株割合により、軽減を受けるには所定の届出(「租税条約に関する届出書」)が必要です。
- グローバルミニマム課税(第2の柱):連結売上高が7.5億ユーロを超えるような大規模な多国籍企業グループは、最低税率15%の対象となる仕組みが、2024年度から段階的に導入されています。大企業の親会社をもつ場合は留意が必要ですが、一般的な中小企業に直接の影響は通常ありません。
これらはいずれも、金額や要件の判断に高度な専門知識を要します。「自社にどこまで関係するのか」は、親会社の規模・取引の内容・配当の方針によって大きく変わるため、早めに税理士へ相談し、必要な検討を整理しておくと安心です。
日本進出で注意したいポイント⑤――配当の源泉徴収と租税条約
海外の親会社へ利益を配当する際、「自国では非課税だから」と源泉徴収を失念すると、日本で納付漏れを指摘されることがあります。国内法では原則20.42%ですが、租税条約の届出を支払日の前日までに出すことで軽減・免除を受けられる場合があります。配当のタイミングと条約の手続きは、事前に税理士と設計しておくのが安全です。
税務は提携税理士が担当――窓口一本化で、設立・在留資格と分断させない
ここまで見てきたとおり、日本の税務は、設立直後の届出から毎期の申告、消費税、国際税務まで論点が広く、しかも会社設立(登記)・在留資格(ビザ)・労務といった他の手続きと密接につながっています。たとえば「資本金をいくらにするか」は、経営・管理ビザの要件(資本金3,000万円)であると同時に、消費税の課税事業者の判定(資本金1,000万円以上)にも、会社設立の論点にも同時に効きます。税務だけを切り離して考えると、こうした横のつながりを見落としがちです。
行政書士法人タッチは、国際業務を専門とする行政書士法人として、日本進出に必要な実務を全体から整理し、提携する税理士・社会保険労務士・司法書士等と連携しながら、ひとつの窓口でサポートします。税務そのものは提携する税理士が担当し、登記は司法書士、労務は社会保険労務士、在留資格・許認可は行政書士が担います。タッチはその全体を横串で見て、会社設立・在留資格と税務・労務が分断しないよう、順番と役割を整理して進行を管理します。海外本社との多言語でのやり取りにも対応します。
まずは無料相談から(STEP 0:無料相談)
「日本でどんな税金が・いつかかるのか」「自社のケースで初年度に何を準備すべきか」を整理するところから始めませんか。行政書士法人タッチでは、初回のご相談を無料で承っています(STEP 0:無料相談)。現状とご進出の計画をうかがい、税務を含む必要な手続きの全体像と、提携する税理士・専門家との連携の進め方をご案内します。
ご相談の結果、具体的な支援が必要になった場合は、内容に応じた有料の支援プラン(PHASE 1:初期コンサルティング 330,000円〔税込〕〜 など)をあらためてご提案し、費用の見通しを丁寧にご説明します。税務の具体的なご相談・申告は、提携する税理士がお引き受けします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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