日本進出を「会社設立→許認可→在留資格(ビザ)→開業」と順番に、しかも登記・税務・ビザを専門家ごとにバラバラに頼む――一見合理的なこの進め方こそ、進出が滞りやすい典型です。許認可・在留資格・銀行口座という3つのボトルネックは「申請してから結果を待つ」しかなく、順番に片付けようとすると全体が大きく後ろ倒しになります。本記事では、なぜ「順番に・別々に」だと失敗するのか、どこを同時並行で動かし何を一貫して管理すべきかを、よくある失敗例・ルート別のタイムライン・具体的な資金経路とともに、国際業務を専門とする行政書士が解説します。
この記事でわかること
- 「設立→許認可→ビザ→開業」と順番に・別々に進めると失敗しやすい理由
- 外国人経営者本人が来日して経営する場合の「本人先行(4か月ビザ/スタートアップビザ)」と「協力者」という2つの入口と、設立・在留資格の前後関係の違い
- 資本金・事業所・事業計画・事業の実体が複数の手続きに同時に効くしくみ(よくある失敗例)
- 「順番が必要な工程」と「並行で進められる工程」の見分け方、ルート別の進行タイムライン
- 資本金3,000万円を日本へ入れる具体的な資金経路(ステップと注意点)
- 「全体を誰も見ていない」問題と、窓口一本化・進行管理による解決
なぜ「順番に・別々に」だと失敗するのか
失敗の核心は、たった一つの事実に集約できます。それは、資本金・事業所(住所)・事業計画・事業の実体という“同じ材料”が、設立・許認可・ビザ・口座・税務という複数の手続きに同時に効く、ということです。ある工程での決定が、別の工程の結果を左右します。だからこそ、ひとつずつ片付けようとすると、後工程で「前の判断が要件を満たしていなかった」と判明し、手戻りが起きます。
その前に――外国人経営者の進出には「2つの入口」がある
失敗例に入る前に、ひとつ整理しておきます。創業者・経営者本人が来日して経営するパターン(「進出の3パターン診断」でいうパターンB=経営・管理)には、進め方の入口が大きく2つあり、「会社設立」と「在留資格(COE・来日)」の前後関係がちょうど反対になります。ここを取り違えると、段取り全体を読み違えます。
- ルートA:本人先行型(準備のための在留資格で先に来日) 申請者本人が、まず起業準備のための在留資格で来日します。ここには大きく2つの選択肢があります。ひとつは4か月の「経営・管理」(会社設立前に入国できる準備期間)で、設立後は同じ「経営・管理」の期間を延ばすため、最後は在留資格の変更ではなく「在留期間の更新」になります。もうひとつはスタートアップビザ(特定活動)で、自治体の支援・確認を前提に起業準備のため滞在する制度です。この準備期間は経営・管理の経営経験にも算入できます。こちらは別の在留資格のため、設立後は「経営・管理」への在留資格変更になります。いずれの場合も、来日 → 住民登録 → 本人名義の個人口座の開設 → 資本金の払込 → 会社設立 → 事業所・常勤職員・事業計画など実体の整備、と進め、最後に更新(4か月ビザ)または変更(スタートアップビザ)で正式な「経営・管理」へ移行します。来日が先で、会社設立はその後です。ただし2025年10月の改正後は、準備のための在留資格であっても、新基準(資本金3,000万円・専門家が確認した事業計画書など)に沿った定款案・事業計画を申請の段階で示すことが求められ、取得のハードルは上がっています。とくに4か月ビザは、来日後その4か月の在留期間内に、設立から更新申請までを終える段取りが要る点に注意してください。
- ルートB:協力者型(本人は国外、日本国内の協力者が設立を担う) 日本にすでに住所と在留資格をもつ協力者が、発起人個人口座の用意・資本金の払込・設立を担当し、本人は国外にいます。会社が要件を満たす状態に整ったうえで、本人が国外から通常の「経営・管理」のCOEを申請し、査証を得て来日します。会社設立が先で、COE・来日はその後です。ただし後述のとおり、本人が一度も関与せず協力者に器づくりを丸投げする形は、経営の実体そのものを疑われ、不許可の核心リスクになり得ます。
整理すると、ルートAは〔準備の在留資格→来日→設立→実体整備→更新/変更〕、ルートBは〔設立・実体整備(協力者)→COE→査証→来日〕という順序で、「設立」と「来日」の前後がそっくり入れ替わります。このあとの失敗例や「順番/並行」の表、タイムラインも、自社がどちらのルートかを意識して読んでください。なお、どちらのルートが取れるか・要件をどう満たすか(とくに2025年10月の改正後)は個別事情で変わるため、早い段階で専門家にご確認ください。
代表的な失敗例を見てみましょう(いずれも個別の顧客ではなく、よくある典型例です)。
失敗例① コスト削減でバーチャルオフィス → ビザで行き詰まる(両ルート共通)
設立段階で「固定費を抑えよう」とバーチャルオフィスやレンタル会議室を契約。ところが経営・管理の在留資格は「独立した事業所」を必須とし、バーチャルオフィス等は原則として認められません。住所は会社の登記だけでなく、ビザ審査・銀行口座の開設にも効くため、最初の住所選びでつまずくと、ビザでも口座でも連鎖的に止まります。
失敗例② 本人が関与せず“器”だけ先に作ると、資金の段でつまずく(典型例・主にルートB)
本人が経営に十分関与しないまま、協力者に任せて会社の“器”だけを先に作ろうとすると、資金の段で次のいずれか(または複合)でつまずきます。
- 設立そのもの 本人が国外にいて、日本の口座も協力者もいない状態だと、設立時の払込を「誰の口座で」行うかでつまずきます(これを避けるために、本人先行のルートA=4か月ビザ等が用意されています)。
- 増資の段 旧基準(資本金500万円)で設立した会社を3,000万円へ増やす際、現金による増資の払込は登記実務上、原則として会社名義の口座(法人口座)が必要です。ところが外資・新設の会社は法人口座をまだ開けておらず、増資の払込先となる口座そのものがない、という行き詰まりが起きます。
- 資金の出所 法人口座があっても、本人の3,000万円を「本人自身の出資」として出所を示せる形で入れられないことがあります。協力者の個人口座でいったん受けて回そうとすると、出資の実体と資金の出所の説明が崩れ、在留資格・口座の審査でかえって不利になります(中国の外貨規制も重なります)。
さらに根本的な問題として、本人が一度も関与せず協力者が器だけを作る形は、経営の実体そのものを疑われます。入管は、業務委託などで経営者としての活動実態が十分に認められない場合、「経営・管理」に該当する活動とは認めない取扱いとされており、これは資金経路以前の不許可の核心リスクです。
避ける鍵は4つです。(1) 改正後にゼロから設立するなら資本金を最初から3,000万円で設計し、増資そのものを避ける。(2) 出資者(本人。本人が支配する中国法人のODIで出資する場合はその中国法人)を発起人とし、その名義で設立時の払込を行って「出資の出所」を記録上たどれるようにする。(3) 登記後すぐ法人口座の開設に動く。(4) そもそも本人が経営に実体的に関与する形をつくる。この4点を、在留資格の組み立てと一体で最初に決めておくことが欠かせません(具体的な資金の流れは後述「ルート別の資金経路」を参照)。
なお、旧基準の会社をやむを得ず増資する場合は、現金の払込に代えてDES(会社への貸付金などの金銭債権の現物出資)で資本金を増やし、法人口座を経由しない方法もあります(検査役の要否・利益相反・資金の出所の説明は、実行前に司法書士の確認が必要です)。
失敗例③ 計画と実体がバラバラ → 「一致しない」と指摘される(両ルート共通)
定款の事業目的、許認可の前提、専門家が確認する事業計画書、そして実際の事業実体が、それぞれ別々に作られて食い違うケースです。ビザ審査では「計画と実体が一致しない」と指摘され、追加資料の要求や審査の長期化につながります。事業計画は、設立・許認可・ビザのすべてを貫く“背骨”であり、後から一本化しようとすると大きな手戻りになります。
失敗例④ 先に採用 → 雇用要件と噛み合わない(両ルート共通)
労務の都合で先に人を採用したものの、その人員が経営・管理の雇用要件(常勤職員1名以上。原則として、日本人や、永住者・定住者・日本人の配偶者等といった身分にもとづく在留資格〔別表第二〕の人などが対象)と噛み合わず、要件を満たせないことがあります。「誰を・どの在留資格で雇うか」は、労務だけでなくビザ要件と一体で設計する必要があります。
失敗例⑤ 「会社さえできれば後は順番に」――器が先、実体が後手(両ルート共通)
登記は完了したのに、ビザに必要な事業実体――事務所・資本金・常勤職員・専門家が確認した事業計画――の準備が後手に回るパターンです。ここで大事なのは、在留資格の審査で事業実体が問われるタイミングがルートによって違う点です。ルートB(協力者型)では設立後のCOE申請の時点で、ルートA(本人先行型)では設立後の更新・変更申請の時点で、実体がそろっているかが見られます。いずれにせよ「会社さえできれば、あとは順番に整える」という発想では、実体の不足で審査が長期化し、最悪の場合は不許可となって、開業そのものが大幅に遅れます。事業実体は、登記の完了を待たず、設立と並行して早くから整えておく必要があります。
これらに共通するのは、ある領域(設立・労務・コスト管理)での“良かれと思った判断”が、別の領域(ビザ・口座)の要件と衝突している点です。手続きを縦割りで順番に進めるほど、この衝突は後工程まで見えません。
「順番が必要なもの」と「並行で進めるべきもの」を見分ける
「では全部を同時にやればいいのか」というと、そうではありません。工程には、順番が決まっていて飛ばせないものと、設立の完了を待たずに並行で進められるものがあります。両者を見分けることが、段取りの第一歩です。
順番が必要な代表例は、(1) 資本金の払込(発起人個人口座)→ 設立登記 → 法人口座の開設・資本金の移管、という資金まわりの内部の流れ(この順序はルートA・Bに共通)と、(2) 在留資格の流れです。(2)は前述のとおりルートによって位置が変わり、国外から申請するルートBでは「会社が要件を満たす → COE交付 → 在外公館で査証 → 来日」、本人先行のルートAでは「先に準備の在留資格で来日 → 設立 → 在留期間の更新(4か月ビザ)または在留資格変更(スタートアップビザ)」という順になります。いずれも前の工程が終わらないと次へは進めません。一方で、設立がすべて終わるのを待つ必要がないものも多くあります。許認可の要否確認と書類準備、独立した事業所の確保、専門家の確認を受ける事業計画書の作成、雇用要件を踏まえた採用の設計などは、設立と並行して、むしろ早めに着手すべき工程です。
| 順番が必要な工程(前が終わらないと次に進めない) | 設立完了を待たず並行で進められる工程 |
|---|---|
| 資本金の払込(発起人個人口座)→ 設立登記 → 法人口座の開設・資本金の移管(内部の順序はルートA・B共通) | 許認可の要否確認と必要書類の準備 |
| 在留資格の流れ(位置はルートで異なる):ルートB=設立後にCOE交付→査証→来日/ルートA=先に準備の在留資格で来日し、設立後に在留期間の更新(4か月ビザ)または在留資格変更(スタートアップビザ) | 独立した事業所(物件)の確保 |
| 許認可のうち、登記後でないと申請できないもの | 専門家の確認を受ける事業計画書の作成 |
| 在留期間の更新・在留資格変更(来日・事業開始の後) | 雇用要件を踏まえた採用の設計・準備 |
※「順番が必要な工程」も、その準備(書類集め・方針決定)は前倒しで進められます。並行できないのは“実行の順序”であって、“準備”ではありません。
※資金まわり(個人口座での払込・法人口座の開設)は、発起人本人または協力者が日本に住所をもち、在留カードと住民票を取得していることが前提です。ルートAでは本人が準備の在留資格で来日して自ら、ルートBでは日本の協力者がこれを担います(設立時の払込は協力者口座等で対応できますが、本人名義の口座を開設するには在留資格が必要です)。
ルート別・進行タイムライン(目安)
「何を・いつ・どの順で」を、2つのルートで並べると次のようになります。期間はあくまで目安で、事業内容や審査機関の状況によって大きく変動します。
| 時期の目安 | ルートA(本人先行・4か月ビザ/スタートアップビザ) | ルートB(協力者型・設立先行) |
|---|---|---|
| 第0〜1か月 | 進出方針(形態・資本金・事業所・在留資格)を確定。資金の出し方を確定し着手(海外にある資金の確保/本人が支配する中国法人によるODIの届出。数か月かかる) | 同左。資金確保は最も早く着手(クリティカルパスの起点) |
| 第1〜3か月 | 準備の在留資格を申請(4か月の「経営・管理」、またはスタートアップビザ=前段で自治体の確認証明書が必要)。並行して事業所・専門家確認の事業計画書・許認可の要否を準備 | 定款作成・認証 → 協力者(設立時取締役)の口座を払込先に資本金を払込 → 設立登記。並行して事業所確保・事業計画書・許認可準備 |
| 来日直後 | 査証発給・来日(=4か月の在留期間の起算点)→ 住民登録・在留カード → 本人名義の個人口座を開設 | 登記後すぐ法人口座の開設に着手(外資・新設のため難航前提。複数行へ)。常勤職員の確保 |
| 来日後〜4か月以内 | 資本金の払込(本人口座)→ 設立登記 → 法人口座開設 → 事務所契約 → 常勤職員雇用 → 税務届出 →(許認可)→ 正式な「経営・管理」へ移行を申請(4か月ビザ→在留期間の更新/スタートアップビザ→在留資格変更) | 会社が新基準を満たした段階でCOE交付申請(審査の目安3〜4か月・改正後は長期化傾向) |
| その後 | 更新・変更の許可 → 事業開始(更新審査の目安は約1〜2か月) | COE交付 → 在外公館で査証 → 来日・在留カード → 事業開始 |
※ルートAは来日後の4か月という窓口の狭さが、ルートBはCOE審査(3〜4か月)と法人口座の開設が、それぞれ律速(クリティカルパス)になりやすい点に注意してください。
ルート別の資金経路――誰が・どの口座で・どの順で
資本金3,000万円を「どう日本へ入れ、どう払い込むか」は、ルートによって担い手と順序が変わります。具体的なステップで示します。
その前に、資金の出どころによって「誰が株主か」が変わる点を押さえてください。(1) 本人がすでに海外にもつ自分の資金で出資する場合は、本人が発起人・株主となり、送金も本人名義です(パターンBの典型)。(2) 本人が支配する中国法人のODI(対外直接投資)で資金を出す場合は、出資者・株主はその中国法人で、日本の会社はその子会社となり、送金も中国法人名義・発起人も中国法人です(本人は代表取締役として「経営・管理」を取得します)。この形は実質的に「進出の3パターン診断」のパターンA(子会社)に近づくため、在留資格や株主構成を最初から設計し直す必要があります。以下のステップは(1)(本人が自己資金で出資し、本人が株主になる場合)を前提に示します。ODIは個人ではなく企業の制度で、個人名義の出資・送金には使えないため、(2)の場合は各ステップの「本人名義」「本人を発起人」を中国法人に読み替えてください。
ルートA(本人先行)の資金経路
- 〔来日前・中国側〕資金の出所を固める。「すでに海外にある本人資金」を使うか、本人が支配する中国法人による対外直接投資(ODI)の届出(発改委・商務部の届出+銀行での外貨登記、数か月)。給与・配当・事業収益・資産売却代金など、資金の出所を示す書類を整える。
- 〔来日〕準備のための在留資格(4か月の「経営・管理」またはスタートアップビザ)で来日し、住民登録・在留カードを取得する。
- 〔本人口座〕本人名義の個人口座を開設する。海外の本人資金を、送金名義を必ず本人としてこの口座へ着金させる。
- 〔払込〕この本人口座(=発起人口座)へ資本金3,000万円を払い込み、通帳の写し等で払込を証明する。
- 〔設立→法人口座〕設立登記 → 登記後に法人口座を開設 → 資本金を法人口座へ移管する。
- 〔更新・変更〕事業所・常勤職員・許認可・専門家確認の事業計画書を整え、4か月の在留期間内に正式な「経営・管理」へ移行を申請する(4か月ビザは在留期間の更新、スタートアップビザは在留資格変更)。
ルートB(協力者型)の資金経路
- 〔来日前・中国側〕同上。海外資金または中国法人のODIで、出資する資金を合法的に国外へ。資金の出所書類を整える。
- 〔払込〕本人を発起人としたうえで、設立時の払込は、日本に住所をもつ協力者(設立時取締役)名義の口座を払込取扱場所にできる。海外から本人名義で当該口座へ着金させ、「本人の出資」であることを記録上一貫して追えるようにする(協力者の個人資金と混ぜない)。
- 〔設立〕設立登記。資本金は最初から3,000万円で設計する(後からの増資を避けるのが要点)。
- 〔法人口座〕登記後すぐ法人口座の開設に着手(外資・新設のため難航前提・複数行へ)。
- 〔COE→来日〕会社が新基準(資本金・事業所・常勤職員・日本語・経営経験または学歴・事業計画書の専門家確認)を満たした段階で、本人が国外から「経営・管理」のCOEを申請し、査証を得て来日する。
※落とし穴:①最初から3,000万円で設計せず後から増資 →「現金増資の払込は法人口座が必要」で、口座が未開設だと詰む(失敗例②)。②本人の資金を協力者の個人資金と混ぜる → 出資の実体と資金の出所が崩れる。
加えて、着金額が3,000万円を下回らない余裕を見込むことも実務上のポイントです。海外送金では為替の変動・送金手数料・中継銀行手数料(リフティングチャージ等)で目減りするため、円換算で3,000万円ちょうどを送ると着金が割れることがあります。数十万円程度の余裕を上乗せして送る、複数回に分ける場合も合計が確実に3,000万円を超えるよう管理する、といった段取りが必要です。なお、本人が来日時に支払手段(現金等)を100万円相当を超えて持ち込む場合は税関への申告が必要で、そもそも3,000万円を現金で運ぶのは現実的でも安全でもありません。送金・現金持込の具体的な進め方と、やってはいけない資金の集め方は「銀行口座」の記事で詳しく解説します。
「全体を誰も見ていない」という問題
もう一つの落とし穴は、専門家の“縦割り”です。日本では、登記は司法書士、税務は税理士、許認可・在留資格は行政書士、労務は社会保険労務士、と担当が分かれています(経営・管理の事業計画書の確認は、中小企業診断士・公認会計士・税理士が行います)。それぞれの専門家は、自分の担当範囲を的確に進めてくれます。問題は、その“間”にあります。
資本金をいくらにするか、事業所をどこに置くか、事業計画をどう描くか、誰を常勤職員として雇うか――こうした論点は、複数の専門家の担当領域を横断します。ところが各専門家は、依頼された範囲を進めるのが仕事であり、領域をまたぐ“横串”の整合を一貫して見る役割は、放っておくと誰も担いません。その結果、担当者ごとに前提がずれ、「司法書士が登記した内容と、ビザ申請で示す事業計画が食い違う」「税理士が想定した資本金と、ビザ要件が合わない」といった齟齬が起き、手戻り・遅延・追加コストにつながります。
外国法人の場合、経営者が海外にいて時差や言語の壁があり、各専門家へ個別に連絡・調整する負担はさらに重くなります。「全体を誰も見ていない」状態は、進出のスピードを落とし、想定外の停滞や追加コストを招きやすくします。
正しい段取り=窓口一本化と進行管理
ここまでの失敗モードは、いずれも「全体を俯瞰し、横串の整合を取りながら、順番と並行を設計する人がいない」ことに起因します。逆に言えば、正しい段取りはシンプルです。一つの窓口が進出全体のスケジュールを俯瞰し、資本金・事業所・事業計画・採用といった“複数の手続きに同時に効く論点”の整合を取りながら、「何を順番に・何を並行で」進めるかを設計し、進行を管理する――これに尽きます。具体的には、次の流れになります。
- 方針の確定(第0〜1か月)。進出形態・資本金・事業所・在留資格の方針をそろえる。とりわけ、自社が本人先行のルートAか、協力者型のルートBか(あるいはどちらが現実的か)を最初に見極め、上記タイムラインのどちらで動くかを固める。
- 資金の出し方の確定(最優先で着手)。資本金そのものを日本へ「入れる」ことがボトルネックになる場合があります。例えば中国では、個人が使える年間5万米ドルの為替枠は留学・旅行などの経常取引向けで、海外への出資には使えず、個人による対外直接投資の為替ルートも開かれていません。現実的な選択肢は「すでに海外にある資金を使う」か「本人が支配する中国法人によるODI(対外直接投資の届出)」で、いずれも数か月の準備と資金の出所証明を要します。なお、規制を逃れる“近道”(他人の為替枠の利用、送金の小口分散、架空取引や地下送金など)は、近年の本人確認の強化でかえって把握されやすく、資金の出所を説明できなくして、在留資格・口座の双方を失う原因になります。資金の出し方は出身国の規制次第で大きく変わるため、設立と同時に早期に確認すべき論点です。
- 3つのクリティカルパスへ早期着手(並行)。許認可・在留資格・銀行口座は、いずれも「申請してから待つ」工程です。設立を待ってから始めるのではなく、上記タイムラインのとおり設立と並行で動かす。
- 各専門家の前提をそろえる。司法書士・税理士・社会保険労務士・中小企業診断士/公認会計士/税理士の作業の前提(資本金・事業所・事業計画・雇用)をそろえ、食い違いが出ないよう一貫して調整する。
- 進捗と要件充足の継続管理。スケジュールの進捗と要件の充足状況を継続的に管理し、ずれが出れば早めに修正する。
ひとつ、誠実にお伝えしておきたいことがあります。窓口一本化と進行管理は、成功を保証するものではありません。許認可や在留資格の可否は、最終的に行政機関の判断によります。しかし、本記事で見た失敗モード――住所の選択ミス、協力者まかせの設立と増資の行き詰まり、計画と実体の不一致、採用と要件の齟齬、事業実体の準備不足――の多くは、横串の整合と早期の並行着手によって、リスクを下げ、手戻りを防ぐことができます。
窓口一本化で、進出全体の段取りと進行管理を
行政書士法人タッチは、国際業務を専門とする行政書士法人として、まさにこの“窓口”の役割を担います。提携する司法書士・税理士・社会保険労務士・公認会計士・中小企業診断士と連携し、進出全体の論点整理、全体スケジュールの設計、そして各専門家の前提をそろえる進行管理までを、一つの窓口でご支援します。在留資格・許認可の申請取次と書類作成は行政書士が行い、登記・税務・労務・事業計画の確認はそれぞれの専門家が担当する――その全体を、タッチが横串で見ます。
ご支援の流れは、段階的です。まず無料の初回相談(STEP 0)で全体像と論点を整理し、必要に応じて初期コンサルティング(PHASE 1)でスケジュール設計と論点整理を行い、実行と進行管理(PHASE 2)へ進みます。費用も、できる範囲から無理なく始められます。
まずは無料相談から(STEP 0:無料相談)
「登記・税務・ビザ・許認可を別々に頼んでいて、全体を誰も見ていない」――そんな状態でしたら、まずは現状をお聞かせください。行政書士法人タッチでは、初回のご相談を無料で承っています(STEP 0:無料相談)。進出の目的とご計画をうかがい、何を順番に・何を並行で進めるべきか、全体の段取りの方向性をご案内します。
ご相談の結果、具体的な支援が必要になった場合は、内容に応じた有料プラン(初期コンサルティング等)をあらためてご提案し、費用の見通しを丁寧にご説明します。お気軽にお問い合わせください。
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